ジンクル

俺、ジングルはこの国アレク王国の王都で生まれた。


両親は俺が小さい頃、ピクニック中に盗賊に襲われ死んでしまった。


もうほとんど家族との記憶を覚えていない。


盗賊たちは金目のものが目当てだったらしく、まだ歩けなかった俺は殺されなかったんだと思う。


その1件が落ち着いて俺は国営の孤児院に入れられた。


この国は福祉制度がかなり整っており、不自由ない暮らしを送ることが出来た。


俺が6歳になって小学校に行く年齢になった頃、優しそうな夫婦が孤児院を訪れてきた。


部屋の隅で一人本を読んでいた俺に目がいったらしく、俺を養子に迎えてくれた。


この人たちが俺の今の両親だ。


新しい両親に連れられ、小学校に通うために王都から少し離れた町にやってきた。


そこで登校班の集まりがあった時、俺は人生が変わる出会いをした。


そこに居たのはメルト、ノエル、マリンの3人だった。


どうやらノエルとマリンは双子らしく、双子を初めて見た俺は興味津々になっていた。


俺はみんなに出会って毎日が楽しくなった。


毎日一緒に登校して、一緒に遊んで、時には怒られて。


これまでの孤児院での生活ではこんな経験出来なかった。


俺はみんなと一生一緒にいると決めた。




俺が4年生になった時、'異能力'が発現した。


それに気づいたのは夜道をメルトたち4人で歩いていた時。


後ろから狼が俺たちを狙って着いてきていた。


最初は気付かなかったが、俺は後ろに気配を感じると思って振り返った。


すると、そこには赤いオーラのようなものをまとった狼がこっちを睨んでいたのだ。


「みんな狼に狙われてる!!

逃げて!」


とっさにみんなに危険を伝えて、一目散に近くの民家に向かって走った。


やっとのことで逃げきれたが、違和感に気づいた。


(なんであの狼赤いオーラみたいなのまとってたんだ?)


その時俺は何故かなのか分からないまま家へ帰った。


後日動物園に家族で言った時、ライオンが檻の中から俺に向かって襲いかかってきた。


その時もライオンは赤いオーラをまとっていた。


その時、能力のことを理解した。


(これは俺に殺意を向けた動物や、おそらく人間も、その存在を視覚で教えてくれるんだ。)


俺はこの能力を隠すことにした。


周りに知られるといざ危険が迫った時に殺意を向けないように動かれたりなど、不都合が多いからだ。


もちろんそれはメルトたちにも言わない。




これが俺の過去だ。


そんな過去があり今、高校生になってもメルトたちとはずっと仲が良い。





「なにぼ〜としてるのよジンクル!」


マリンが俺の顔を覗き込んで言った。


「ごめんごめん、考え事してて。」


綺麗な夕日を眺めながら4人でゆっくりと下校した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る