メモリーダスト
「熱っつ!」
入った瞬間、意識が炙られるほどの熱風が吹き渡った。顕在意識内は高温多湿な蒸し風呂状態。潜在意識および精神世界から放出されているのであろう、感情の熱を纏った記憶の鱗粉が火の粉ように舞舞い散っている。
これは『メモリーダスト』と和多志的には呼んでいる現象で、忘れたい記憶や情報を粉砕、焼却して内容を薄める忘却作用によって発生するありふれた現象。大半は怒りや悲しみといった感情熱源と忘却したい内容が合わされることで強い熱を帯びる。三次元物理でいう燃焼反応、化学反応といえば伝わるだろうか?そんな感じだ。
本格的に調査する前に示しておくが、ひとえに他者の記憶を覗くという行為は言葉に下ろすと陳腐だが、その行いは思念体、魂に多くの影響と負荷を与える。
さきほど大半つまりそれ以外にもこの現象が起きる条件があって、世界の創造神、あるいは管理者とかいう概念の空間生命体がいて、そことの情報交信と更新を行う際、メモリーダストを起こして肉体の保存情報の最適化が行われる。この場合、散った断片の多くは管理者に持ってかれて、詳細を確認することが難しくなる。その代わり、このような灼熱地獄を味わずに済むし、大まかな情報は入手することができる。また、明晰力とかで表現している能力が高ければ、管理者の網をくぐって多くの断片や補完材料を手にすることができる。
では何故、わざわざこんな灼熱地獄に飛び込んでまで情報を欲しがるのか。よく言われるんだよ。特に情報の海を泳げるタイプの観測者に「感情が落ち着いたころにその情報を捜しに行けばいいじゃないか」と簡単にいって来る。毎回思わされるのだがそうなると、個体別に収まった記憶の引き出しの海から断片を読み取って、何度もその保存維持液の中を潜水し、統合せねば情報を復元できない。和多志のような、霧散した情報を集められるタイプには不都合極まりない。
しかし、その分野が得意なタイプの観測屋からしたら、和多志のその回収方法だって不都合に見えるのも無理はないと思う。そこは上位者として寛容すべきところ。
そう、和多志にとってこの状況は好都合なのだ。クソ熱いけど……。
それを識った上で共に記憶の内容を確認して欲しい。誰に話しかけているって、いずれ星の核になる可能性のある――君たちに――――だよ。
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