十一、家出すら出ない

 街道は犬にやれ。家出すら出ないのなら。



 この家で、白骨になって笑うしかない僕は、息に根も葉もなく花が咲く。ただ止まったままの心臓だけが時を刻み、結んだ実を結ぶ。その果ての死は、犬にやる街道だ。家出すら出ない。


 僕らはみんな、生きているから黙ってる。閉ざしたままでくっ喋る、口という死。


 家庭内戦国は、豚が片っ端から口から洪水くだらねえ。念仏、武蔵坊、弁天シャンデリア平家の、生きたまま五十世紀が、ある日溺死の耳ありげ芳一。




 さてここから、首輪胞子の耳ありげ芳一による、平家化け物語りである。


「糞まみれ壇ノ浦の暗殺滅亡ワークDEATH、まだ二十一世紀のつもりか。無駄なら死ねと意味ありげに無意味ありげ。無意味アリゲーターに食いつくされた私の、椅子にも座った驚いた」


 まさに犬にやる街道だ。家出すら出ない。




 この家で、偶然射殺の三日前だけは、先天的内緒話。ここだけのそこだが。


 首に根っこもなく、つかみは王家のピラピラミッドナイト。人殺し三角形と時代劇的ファラオの殺人的ちょんまげは、悲劇的フェラチオにて切断あたりまえ。

 だって今日も流れてきて言うぞ。

「僕ドザエモンです」


 あらかた無視だろうが、どうせ氷山の一発でしか致命傷さ。人間だけは、さっさと人ばかり、とっととすぐに犬にやる街道。骨。


「これは家庭内人間魚雷か?!」




 ここまで親が憎くて憎くて我慢無理ゲーでも、くたばり脱毛症の先の殺し屋はよせ。代金クライストのチョンボ差別教により、ただちに無限にバカにしあい、もうすぐ出てくよ、こんな世界。ありがた現世迷惑。


 なのに。




 家出すら出ずに僕たちは、ここには住んでいないことがいっぱいある。命すらまかなえず、台所の黄昏のように静かに淡く死んでいく。消えていく。そうだ、漏れたガスのにおいこそが、この世最後の秘密だ。


「カズミチ、お前なにやってるんだ?! くさいぞ! 窓あけろ!」

 親父は怒鳴るが、この俺は、わかっちゃいるが日本人。

「バカ、ライターでなにする気だ?! 母さん、大変だ! カズミチが狂った!」


 ゆりかごから地獄まで、ひとことも口をインパールなら、俺はせめて白骨になって笑ってやる。


 犬にやる街道は、家出すら出ないのだから。

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