そのままで
@yumetoiro
第1話 川を歩く
私の人生はいつも川と共にある。実家も小学校も中学校も高校も川の近く。そして今の住まい、アパートも川の近くにある。たまたま条件で選んだアパートが川の近くにあっただけと考えればそれまでだけれど、それにしても私は川とご縁があるようだ。
私はどんな時にも川を歩く。楽しい時、悲しい時、嬉しい時、悔しい時、様々な感情と共に土手へ上がる。歩きながら感情を自分の中で確認して現在の措かれている自分の状況を確認して、今後の指針を立てているのだ。最近になって歩くことは体に良いだけでなく、思考をクリアにするのに有効だと何かで知ったけれど、知ったときは深く納得出来たものだ。
今日はため息がふとした時に出てしまうので、久しぶりに昼から軽い気持ちで土手へ上がった。その割には気付けば帰り道は私を西日が照らしていて驚いた。「私ってこんなに歩けるんだ。そんなに歩いていたっけ?」そんなことを思いながら足早に家へ向かった。途中公園を見つけて土手から降りて腰掛けて犬を見つめてみたり、空を見上げてみたりして体感にしてニ十分程だろうか寄り道をしてしまったことが時間を遅らせていたとはいえ、公園のベンチに腰を下ろして悲劇のヒロインを演じて、味わい尽くして、その感情を捨てるには十分な時間だった。
そう、今日散歩と共にした感情は悲しみ。さらに深く突き詰めると世界から取り残されて独りぼっちになった悲しみ。川に立って「泣く」という感じが成り立つように立ち止まってもみたが、やはり泣けない。女も独り身で40代ともなると我慢強くなってしまって簡単には泣けない。良くも悪くも。
嘘のような真実が私を苦しめ続けてきて、奇跡的に生きられた今があることを知った私には話すことが出来ない。今は出来ない。だけどそれが出来る時、世界は一変する。そうであって欲しい。
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