第40話 激闘
まさか、ナナルまで殺されるなんて。
この野郎、見境なしかよ。
「スキル発動、ソニック!!」
マリオネット、状態異常、硬化、パワー、それにソニック。
おそらくエナジードレインまで使用できるのだろう。
一つ一つなら攻略も容易いけれど、複数を組み合わせられるのは厄介だ。
オーガの目でサンドを追う。
確実にこちらに近づきつつある。
手に持っているのは、おそらく針。そういえば、操りたいんだったな。
「キューネ!! バフをかけてくれ!!」
「え」
「はやく!!」
「あ、うん!! 強化魔法!!」
よし、凄く力が漲ってくる。
これならオーガを覚醒させなくても強くなっているはず。
動きを読み、足を狙って腕を伸ばす。
内臓がないから真経穴が効かない。
けれど経穴は、内蔵だけを刺激するわけじゃない。
筋肉組織を刺激するツボを押せばいいだけの話だ。
「くらえ!!」
「うぐっ!!」
サンドが転んだ。足は動かなくなったはずだ。
よかった、筋肉系の経穴は効くんだ。
「いい加減終わらせてやるよ」
「自惚れるな、スキル無しのガキが!!」
サンドが自分の足に針を刺した。
何事もなかったかのように、立ち上がる。
マリオネットで、自身の肉体を強制的に動かしたってのか。
「き、筋肉がズタズタになるぞ……」
「この私をよくもまあここまで苦しめたものだ。褒めてやりたいところだが、私に勝てると勘違いしているのは度し難いな」
「そんなに、立ちたいのかよ。頂点とやらに」
「立ちたいね。この世のすべてを支配する王者になりたい!! いや、なるべき逸材なのだよ私は!! 許さない、私をバカにする者も、見下す者も、軽んじる者も、無視する者も敵意を向ける者も全員!! ところん這い上がってやるのだ!!」
「欲望のケダモノが」
「幻覚!!」
一瞬にしてサンドが消えた。
くそ、状態異常に掛かってしまったのか。
だが落ち着け、やつは現在マリオネットを自身に使用している。
他のスキルはーー。
「うわっ」
背後から衝撃が走り、前へ倒れてしまった。
普通に蹴りやがったか。
「いまだ!! すいみーーぐっ!!」
サンドが吹っ飛んだ。
透明になったマーレがやったんだ。
本当に毎回ナイスだよお前は。
「キューネ、さらに強化を!! めいっぱい!!」
「う、うん!! 強化魔法スキル!!」
急いで立ち上がり、サンドへ走る。
できれば人は殺したくないが、やるしかない。
「終わりだ!!」
思いっきり、サンドの頭部を踏み潰した。
こ、これで確実に、死んだはず。
今度こそ、終わった。
「はぁ……はぁ……」
キューネとマーレが近づいてくる。
「だ、大丈夫ムウ!?」
「やりましたね、ムウさん!!」
こいつらがいてくれて、助かった。
一人じゃマジでキツかった。
「ナ、ナナルを叔父さんのところへ連れて行こう。ま、まだ間に合うかもしれない」
「喜ぶのはまだ早いんじゃないかな?」
「は?」
突如、キューネの背後にサンドが現れた。
「なっ……」
「すまないね、使っていたよ。幻覚を」
「待て!! サンド!!」
「鬱陶しい虫は先に潰さないとな!! パワー!!」
サンドの手刀が、キューネの胸を貫いた。
「あっ」
呆気にとられながら、キューネが吐血する。
「ム、ムウ……」
「ふははははは!!!! 確か強化魔法だったな、この女のスキル!! なかなか汎用性に優れた良いスキルじゃないか」
手刀が抜かれる。
キューネが倒れる。
キューネが……。
「もう一匹も殺すぞ、ムウ。キサマはとことん苦しめてから下僕にすると、決めた!!」
「…………」
「どうした? やる気をなくしたか? 一つ良いことを教えてやる。スキルは人間の魂と深く結びついている。つまり、私が奪ったスキルを失えば、魂は虫けら共に戻る。死んで間もないのなら、運が良ければ治療で蘇るかもしれないぞ」
「…………」
「ほら、頑張って私に挑んでくると良い。返り討ちにしてやる」
「……マーレ」
え、とマーレが反応する。
「急いで叔父さんを連れてきて」
「あ、え?」
「叔父さんは腕の立つ医者だから、どうにかできるかもしれない……。実際、叔父さんに命を救われてるし、自分も」
「でも、ムウさんは……」
「いいから」
「は、はい!!」
マーレが走り去っていく。
サンドは追いかけなかった。
あくまで、狙いはこちらか。
「叔父さんとやらが来るまでに、無事でいられるかな? ムウくん」
「……黙れ」
「スキルを持たない、私の野望も理解できない『つまらない人間』如きが、この『俺』に歯向かうことなど許されない!! 地獄を味あわせてやるぞ、ムウ!!」
ごめんなキューネ。
ナナルも。
大丈夫、きっと叔父さんが助けてくれるから。
けど、その前に……。
真経穴を押して、体に負担を与えてオーガの力を30秒だけ覚醒させる、というのは、叔父さんから教わった方法。
でも、他にあるんだ。
移植されたオーガの肉。そこに眠る力を目覚めさせる方法が。
絶対に使うなって言われているけど。
構うもんか。
全身に力を込める。
胸の内にある闘争本能を全身にみなぎらせる。
本当はずっと、ずっと理性的に抑えていた殺人欲求を、解放する!!
「な、なんだ……目と、髪が、赤く……」
「ふふ、ふふふ」
「こ、この圧は……」
「苦しむのはてめえだ、カス」
「な、なんだと?」
こいつは殺す。
絶対殺す。
確実に殺す。
どうなろうと殺す。
殺す。
「ぐちゃぐちゃにぶち殺してやるっつってんだよ、サンド!!」
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