第31話 ママルとサンド
※三人称です。
アントク国の首都、ヨコツ。
ギルド管理委員会の本拠地のみならず、マスターギルドの拠点も存在する世界有数の大都市である。
その中央には巨大な城があり、アントク国を治めてる国王がいた。
謁見の間にて玉座に腰をかける中年の男性。彼の視線の先では、管理委員会の職員にしてランドの兄、サンドが跪いていた。
メガネの位置を直し、用を済ませ、謁見の間から立ち去る。
廊下を歩いていると、前方から見知った女が近づいてきた。
金髪の、どこか浮世離れした空気を纏うマスターギルドの第2位。
ナナルの姉、ママルであった。
「あは〜、久しぶりだねえサンドくん」
「どうしてあなたがここに?」
「そりゃ王様に報告しなきゃだからだよ〜、巨人族を無事に討伐しましたあ、ってね。サンドくんは?」
「私も仕事です」
「そっかあ」
ニコニコとママルが笑う。
サンドは彼女のこの笑顔が苦手であった。
「ところでさあ、イカラビのギルドリーダーが負けたらしいねえ」
「らしいですね。おまけにサマチアは、リーダーの娘をメンバーに加えたそうで。まったく、期限内にメンバーを増やせと下知しましたが、これでは……」
「でも、規定違反じゃないでしょ〜?」
「まぁ」
ママルが距離を詰めてくる。
顔を接近させ、じっとサンドの瞳を見つめる。
敵意は感じない。けれどサンドの全身が強張った。
「なんでサマチアにちょっかい出してるの?」
「ちょっかい? ただの職務ですが」
「ふ〜ん。なに考えてるのかなー? マスターギルドにまで手を出してるでしょ。直属の部下を入団させてさー」
「考えすぎでは?」
「なーでもいいけど、私の楽しいギルドライフを覆すようなら、怒っちゃうぞ?」
「ギルドライフ? ではあなたのギルドではないチギトなら手を出していいのですかね?」
サンドの身体中に悪寒が走った。
血の気が引き、肉食獣に睨まれた小動物のように震えて動けなくなる。
ママルは、まだ笑みを浮かべていた。
「ふっふっふ〜、また舐めたこと抜かしたら消しちゃうぞ〜」
「善処します」
「それと……ムウちゃんを侮らない方がいいよ。あの子は、サンドくん程度の手に負える相手じゃないから。イカラビのギルドリーダーを倒したのも、ムウちゃんだし」
「ムウ? あのスキルのない子供か……たしかあなたの妹も奴に敗北したとか」
「そうなのだー!! サマチアは怖いよー? 人数は少ないけど、結構良いギルドになってきたし」
「ほう……」
「だから、変なことして迷惑かけちゃ……ダメだぞ!!」
「えぇ、わかりました」
「じゃあねえー」
そう、ママルは手を振って去っていった。
その後ろ姿を眺めながら、サンドは眉を潜ませる。
たかが一介のギルド戦士のくせに生意気な。
いずれはあの女も跪かせてやろう。
ギルドの頂点に立つのは、俺だ!!
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