Section 6: 宇宙(そら)を目指せ
「unlocking key.Offensive Disarmament!」
ミィナの呪文が完成し、次々に兵士たちの銃が暴発してゆく。
エリオット達はブラスターを手に、瓦礫に身を隠しつつ兵士たちに向かって射撃し足止めを続けていた。
「隊長――」
「わかっている」
ヴェロニアの兵士たちの内の隊長格の一人は、展開する兵士たちに向かって次の命令を下した。
「オーガヒューム隊員は抜刀し前進せよ――。エレメンタル隊員はそのまま後方支援」
「Yes sir!!」
命令に従って兵士の一部が腰のサーベルを抜刀する。それを見てミィナは慌てた表情を浮かべた。
「く――、電子機器的機能を持たないただのサーベル?! それじゃあ【攻性武装解除】の呪文は意味がなくなる……」
その言葉を聞いてエリオットが叫んだ。
「あの隊員って……、PSIデバイス持ちなんだろ? それを機能停止にできないのか?」
その言葉にミィナの代わりにジェレミアが答えた。
「無駄ですよ……、PSIデバイスも一種の電子機器なので、ある程度の電子魔法の効果を受けます……が、それでも機能に致命的損傷を受けないようになっている上に、操作する本人がPSI能力を発揮している間は、電子魔法に対する強力な抵抗力を発揮するんです」
「む……そうだったか? 俺はPSIデバイスを使ったことがほとんどないからな」
「エレメンタルである私も使ったことはありませんが、オーガヒューム相手に電子魔法を仕掛けたことはあります。そもそもPSIデバイスはオーガヒュームの種族特性に関わる機器なので、他の電子機器に比べて防御機能が強固に作られているのです」
ジェレミアの言葉にミィナが頷いていった。
「説明ありがと……。さっきまで使ってた【攻性武装解除】は、基本的に強固に作られていない安物の電子機器の電子の流れを暴走させて暴発させるものだから、発火物がない銃器以外だとそれほど威力を発揮しないっていう意味もあるし……ね」
そんな話をしている三人に対してアランが叫ぶ。
「そこ! 雑談してないで迎撃してください!! 来ますよ!」
その言葉に三人は顔を合わせて敵に向き直る。ミィナはエリオット達の後方へと後退した。
「ミィナさんは後方で我々の援護をお願いします。現状、オーガヒュームの白兵戦士に対抗出来るPSIデバイス持ちがいませんから――、我々エレメンタルが対応するしかありません」
「ジェレミア?!」
「大丈夫ですよエリオット。ミィナさんがいるならなんとかなるでしょう?」
そのジェレミアの言葉にミィナが頷いた。
「わかってる! 戻れソキウス・イティネリス!!」
「お願いしますミィナさん」
そのジェレミアの言葉にミィナは頷いて――-、そして呪文を唱え始める。
「In the name of my bloodline, I control sorcery!」
その時、空中のドローンが光を放ち駆動音を周囲に響かせ始め――、
「unlocking key.Physical Enchantment! additional settings.Motor function, Nerve function, Tissue function!」
その瞬間、ジェレミアのその身に一瞬電撃が走り――、
「ふ――、オーガヒュームしか白兵戦が出来ないわけではありませんとも!」
ジェレミアは腰から特殊警棒を取り出して伸ばすと、ブラスターを片手に敵兵士の群れへと突撃した。
「なるほど……、魔法使いがいるなら――、エレメンタルでもオーガヒュームに対抗できないわけではない……か」
顔を明るくしたドミニクがミィナに向けて手を挙げる。それにミィナは笑顔で答えた。
「俺にもさっきの――、身体機能強化をかけてくれ! 前線に出る!」
「わかった!」
ドミニクの言葉にミィナが答えた。
そのままミィナは呪文を唱えてドミニクを強化し……、ドミニクは最前線へと身を躍らせたのである。
それを見てエリオットは言う。
「俺達には?」
「エレメンタルとオーガヒュームでは、電子魔法の掛かり具合が段違いに違うから、後方で支援したほうがいいと思う」
「むう……、なんか立場が逆転してるような」
そのエリオットの言葉にミィナは笑っていった。
「気にしない! 適材適所よ!」
その言葉にエリオットは苦笑いして頷いた。
フオオオオオオオオオオオオオン……!
その時、不意に地下室の扉の奥から、何かの駆動音が響き始める。それを聞いてミイナ達その場の全員が顔を明るくした。
「航宙挺の駆動音!! やったぞ! あと少し!!」
エリオットはそう言って笑い。最前線でオーガヒュームの剣士とやり合っているジェレミアとドミニクは、ジリジリと後方に下りつつ剣士たちの隙を伺った。
ドン!!
次の瞬間、明確にその地面が揺れる。それは決して地震等ではなく――。
「なんだ?! 何かが地下から!!」
敵兵士の隊長格が驚きの表情で叫ぶ。
「隊長!! 航宙艦の駆動音――、地下から浮上してきます!!」
「くそ!! 前線の友軍を下がらせろ!!」
そう隊長格が叫ぶのと、その地面が崩壊するのは同時であった。
「おわ!!」
エリオット達は地面の崩壊に巻き込まれて落下する。しかし――、
「ソキウス・イティネリス――! オーガヒュームを優先!!」
ミィナのその言葉に反応して、二機ドローンがエリオットとアランに向かって飛翔する。
その小さなアームでその二人を捕まえて空を舞った。
「すまん!」
エリオットがそう言って、ミィナはそれに笑顔で答えた。
◇◆◇
上空ではその光景をジオが笑顔で見つめていた。そうしつつも意識は戦闘に向かっており、残り三機の翼竜型バインダーとの空中戦を行い、そしてまた一機その拳で空から叩き落としたのである。
「よし……あとは」
そう言って少し気を緩めた時――、ジオはその首筋にゾクリとするものを感じた。
「?!」
その瞬間、落下する翼竜を足場に空中へとその身を躍らせる。すると――、
ドン!!
凄まじい閃光と衝撃が起こって、翼竜が大爆発を起こした。
「な――!!」
その翼竜を爆発させた原因は――、
「重力波砲?!」
それはまさしく航宙艦に搭載されうるクラスの火砲によるものであった。
空を舞いながらジオが地上に目を向ける。――そこにそいつ等がいた。
「新手のバインダー?! 人型……、オーガヒュームのバインダー部隊……」
それはこの状況に来て最悪の敵であった。
【隊長……、地下より航宙挺が浮上してきます】
【そうか……、ならば重力波砲で撃ち落とせ。あのサイズの航宙挺程度なら二三発で沈む……】
【了解】
そう冷静に命令を下すその人型バインダーを見て、ジオは苦しげな表情を浮かべて――、その拳を握った。
(最悪だ……、オーガヒュームの搭乗するバインダー相手じゃ、40m級の航宙挺の防御機能は紙同然だ……)
ジオはそう考えて……そして、決意した。
「させねえ!! たとえてめえ等が相手でも……、俺はアイツラを守り抜く!!」
そして――、
「……俺は
そうしてPSIデバイスを持つだけの生身のジオと、PSIデバイス機能を持ち、さらに効果を増幅できる最強の機動兵器【人型バインダー】の集団の戦いが幕を上げる。
それはまさに絶体絶命の状況であったが――、ジオの瞳は力を失うことなく光っていたのである。
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