Automatic

腕(kai_な)

 

実現するオートマチック、あなたは極めて無意識にサイバーな電子音を意識の波でかき鳴らして、電化する。

皮膚はシリコンで、いつかの彼女と同様に赤みがさしている。

しかし彼女はいつかと同じように私に微笑んで見せる、などということはしなかった。


絶えずサイボーグを目指す博士はハバナをくゆらせて、「我は電子の子。内臓が発電機、血管が銅の配線である」と宣言する。

であるとすれば、そのハバナは排熱ファンなのだ。

博士は宣言の間にも右手を忙しく動かして、五本の枯れた指を巧みに宙に遊ばせて、二進数を打ち出している。

私はといえばその打ち出された二進数を人間らしく咀嚼して血肉とするしかない。


おお、電化というもののなんという豪胆さ!

私はその豪胆さに美を感じる。

脱人間、脱生物を掲げた彼ら・彼女ら。

だというのに私は未だ懐古=蚕から、その繭から抜け出すことができない。

咀嚼した二進数を飲み込めず、結局は吐瀉してしまう私は未だ懐古=蚕から、その繭から抜け出すことができない。

実現するオートマチック、進化した人間性。

進化したあなた・博士。

私は赤みがさしているシリコンを人差し指でなぞるのみ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Automatic 腕(kai_な) @kimenjou0420

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ