魔女と義手の画家

的矢幹弘

第1話 プロローグ

世界のすべてが一つだった。あらゆるものが正しく、何もかもが間違っていた。一切のものが美しく、例外なく醜かった。


やがて『識界の魔女』が世界を四つに分けると、無数の星々と大地と人間たちが生まれた。


識界の魔女は、自らの左手から『手の魔女』を作り、人間の肉体を与えた。さらに自らの右目から『目の魔女』を作り、人間の精神を与えた。


やがて人間たちは二つの群れに分かれ、片方が星を目指して大地を去った。識界の魔女は、彼らと共に行くことにした。地上に残る人間たちを、手の魔女と目の魔女に任せた。


そののち、傲岸にも手の魔女は、手の魔女こそが人間を支配し、識界の魔女となるべきだと言い、目の魔女の抹殺を試みた。それに気づいた目の魔女は、姿を隠した。それ以降、大地に残った人間たちは、再び二つの群れに分かれ、二人の魔女たちの代わりに争った。長き争いの果てに、ついに目の魔女は手の魔女を討ち取り、地上に再び平和が戻った。


その罪により、手の魔女は、『不埒な魔女』と呼ばれるようになった。

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