第16話 治安維持隊の今後

「治安維持隊は来る全面戦争に備え力を蓄える。」


「全面戦争だって。」


治安維持隊が戦争を止めないっていうのか


「隊長、憶人の奴があまり理解してねえから補足頼む。」


「おお、すまんな。バアサンにも言われとったのにな。」


「ったく、いい加減にしてくれよ。


止まるのは体の成長だけにしといてくれ。」


(30代のイケオジにしか見えない)白夜さんの容姿をいじる先輩。


さりげなくフォローもしてくれる先輩はホントすごい人だ。


っといけない、いけない。


「力を蓄えるといっても戦争に介入するためではない。


民草を戦争の火の粉から守るためじゃ。」


「なるほどなぁ、要はパトロールの強化だな。」


「そうだ、今回の件で分かったと思うが


あの政府がどんな手段を取ろうがおかしくない。」


確かに、あの人体実験がなんのためのものかははっきりしていないが、


それでもあんなことを平気でしてしまえる奴らが一般人を巻き込まない保証はない。


「それに、おぬし等はまだ弱い。」


「俺らが弱いってどういうことですか!?」


これでも強い方だと自負していたのだが。


朱兎先輩は頷いている。


「確かにオレも憶人もまだ二人には勝てない。


白夜さんも若々しいだけできっと寿命は伸びていないんだろうし、


魔夜さんはそもそも戦いを嫌う。


だからオレら二人は強くならないといけない。


二人の代わりになるにはまだ弱い。


そういうことですね。」


「うむ。」


いや、『うむ』じゃねえよ。言葉が足りなさすぎるよこの人は。


っていうか先輩もよく今ので分かったな。


「よって二人にはパトロールをしつつ、


訓練も平行しておこなってもらう。


朱兎はワシと能力を使用しての組手。


憶人は鏡子、魔夜に稽古をつけてもらえ。」


「「了解です。」」


こうして治安維持隊の今後の方針が決まった。


書斎を出て思った。


俺はこの隊の中でもきっと一番弱い。


白夜さんは知らないが、俺だけ空中機動能力はない。


それに能力も使いこなせていない。


「ダメだな俺は」


本音が口からこぼれる。


ガシっ、そんな音がして振り向く。


「憶人、確かにおめえは弱いよ。


オレと100回戦ったとして1回勝てるかどうかだ。


だがな、別に強くなくたっていいだろ。


俺らは治安維持隊だ。勝つ必要はない。


最後まで立って、立ちはだかって守り抜ければ十分だ。


そういう覚悟はお前は十分あるだろ。」


ったく。この先輩はほんとカッケエよ。


多少セリフが臭いけど。


「おっ、泣いてんのか。


そうかそうか、オレ様の言葉に感動しちまったか。」


「うっせ、さっきまで女装してたヤツのセリフに感動なんかするかよバーカ。」


「っちょ。お前、人が気にしてることをズバズバと。


待ーてー!!」


「待たねえよーだ。」


この先に不安を感じないって言ったらウソになるけど、


今はただ前を向こう。

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