第5話 大舞踏壊 急
先輩が俺の弾幕を一蹴して、状況は一変した。
単純な話、俺から先輩に対する打点が消えた。
それでも闘いは、先輩は待っちゃくれない。
「オラオラ、どうした、憶人。お前はその程度じゃないだろう。」
っち、鬱陶しい。
ピッタリ張り付いて
触れられたら重力操作で負けが決まる。
とりあえず考える時間が欲しい。
魔法陣を練るための時間が、
「ぶっ飛べ。」
ちゃんと視界に収めていたはずの先輩が消えた。
そう思った瞬間にはもう目の前にいて
「しくじっ、ぐぁ。」
まずいサマーソルトを。
しかも、能力のおまけつき。
体が空に落ちていく。
もの凄い速度で。
いったい今、俺の体には何Gかかっているのだろうか。
そう考えているうちに先輩の能力有効範囲を抜けた。
下にいるみんなが豆粒ぐらいに見える。
高度は約100mといったところか。
ただ、慣性が働いているからあと100mは飛んでいくことだろう。
だが謎だ。なんで先輩は重力操作を上のままにした?
能力有効範囲を越える前に再び下方向にベクトル変換をすればいいのになんでだ。
「そうか」
能力で与えた影響分リソースが消耗されるわけだから。
高速で上下に叩きつけるには(上昇→相殺→下降)上昇3回分のリソースを消耗するわけだ。
だから一度打ち上げて降下してきたところに能力を使用しようと考えているのだろう。
きっと、先輩は俺が魔法陣を形成する前に決着をつけたいはずだ。
なら、先輩は飛んで、俺を落としに来る。
「だったら、」
魔夜には悪いがもう使わざるを得ない。
右手を右眼にあててて自分の中の鎖を一つ一つ、早く正確に解いていくイメージで、奥へ奥へ、もっと深く
「
ふぅ、どうやら先輩に近づかれる前に解除できたようだ。
魔力がほとばしる。
今なら、やれる。
「吐け、■■■▲▲。」
直径2メートル超の魔法陣を13個同時に展開する。
「
それぞれから極太のレーザー、追尾弾、散弾が地上めがけて放たれる。
いや、俺が放った。
それは地上へと落ちていく。
そして俺の勝利が決まったと思ったその時だった。
「やめなーさい。」
こっちに近づいてきた真夜によって生み出された透明な何かが俺の弾幕すべてを受け止め、虚空で炸裂した。
その爆風は10mは離れているというのに降下中の俺の体を再び上へと押し戻す。
その余波の大きさから少なからずやり過ぎてしまったんだと思った。
やがて、ふたたび俺の体は落下を始める。
上空50m程で待っていた真夜にお姫様抱っこをされたことで何とか無事に地上に戻ってこれた。
その後、俺は魔夜に、先輩は白夜さんに説教されることとなり、勝敗はうやむやになってしまった。
こうして、俺の入隊試験は終わりを迎えた。
勝てはしなかったが合格ということで、明日から正式な隊員として町を守るための業務が始まる。
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