ヒトデナシクライ
久繰 廻
ヒトデナシクライ
第0話 少年は泣く。わけも無く。
何が個人を個人たらしめるのか?
脳に記録された記憶か、目に見えない魂だろうか?
まぁ、そんな哲学な言葉遊びは置いておこう。
要は認識の問題だ。
優しい友人がいたとして、「その人」の残虐な一面を目の当たりにしたとしよう。
目の前にいる人物を自分の知る「その人」と認識できるだろうか?
友人程度の関係性であれば『お前なんか知らない。』と一蹴できるだろう。
だが、もしも友人以上の、それこそ親だったり、親友だったり、恋人だったりに置き
換えても同じようなことを言えるだろうか?
これは、優しい魔人と仮人の少年の出会いから始まった物語。
俺は夢を見ている。
いや、おそらく多分メイビー夢だと思う。
そもそも、夢を夢だと気付けるのはおかしなことなのだ。
ただまぁ、この夢は何度も見てきたものだからデジャブを感じ夢であると断定できている。
今、僕は燃え盛る草原で寝そべっている。
辺りは鉄臭く、僕の体も所々どころではない重症を負っていた。
お腹の至る所に穴が開いている。
右腕欠損、胸骨骨折、あと息がし辛い。
きっと、肋骨も折れていて胸筋が肺を圧迫しているのだろう。
夢にしてはやけにリアルで今にも泣きだしたくなるような痛みだが、
慣れてしまった。
それよりも、銀髪の魔女のような格好をした少女が一人
「ねえ、ねえってば。治してよいつもみたいに。
あなたまで死んでしまったら私、一人になってしまうのよ。
お願い×××、お願いだから。私を独りにしないで。ねぇ、ねぇ。」
そう言って僕に跨って両肩を掴んで無理矢理に立ち上がらせようとする。
その悲痛な叫びが僕の胸を締め付ける。
「あぁ、ごめんよ××××。でも、これだけは約束する。
僕は生まれ変わって君に会いに行く。
何度死のうと君のもとへ必ず。
お休みまたいつか。」
薄れゆく意識の中で僕の口から勝手に出るこの言葉。
だけどなんでなんだろう。
これといって理由もないのに、目が覚めた今でも俺の涙は止まらない。
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