第28話


ふらりと入った居酒屋なのか、スナックなのか。そこはガキの俺にはいまいちだが、弟の天敵みたいな知り合い?


(俺の学校のいちおう後輩か?)


というか、地元ならではのミラクルか?


これが東京いた頃なら、運命感じるのか?って、相手は野郎だけど。


大都会ですれ違ったって、わからないよなあ。赤木は目立つけど、東京だとありふれた髪色だしなあ。


緑や赤や黄色。街中がずーっとハロウィンみたいだしな。ジャック、オ、ランタン。


冥界の彷徨い人かあ。かぼちゃって、そんなに、うまいかなあ?


ランタンなったり、馬車なったり、被り物なったり?タネはつまみだっけ?


じいちゃんはかぼちゃと、さつまいもを煮たやつ好きだったけど、あまり俺や春馬は食べなかったよなあ。


春馬は甘いもの好きなくせに、たまに微妙なはっきりしない食感と甘さは、苦手っぽいは、わかったけど。


(ドッグフードはともかく、金魚の餌食う気持ちがわからないし、乾燥ミミズは火を通せと言ってたじいちゃんも、意味不明なアドバイスだし?)


胃液や唾液で乾燥がふやけたら、ミミズに戻るならなんか嫌だって、思ったらしいが、そもそも食わないだろ?


ラッシーがうまそうに、食べてもラッシーの餌だし、


(うまいか?)


ときいて、頭をなでたら、子犬のラッシーは餌をとられると勘違いしたらしく、唸り声あげてたけど。


子犬の頃だけど。ラッシーは春馬の相棒で、実家に行けばまだいる。ヨタヨタだけど、健在だ。


ラッシーは、春馬の帰りに間に合うのかな?


とふと思うけど。いま神城のお腹には小さな命が宿ってるらしい。俺の耳にも、先輩の耳にも届いてるけど、あまり話題にしてない。


俺と春馬は距離があるから、はじめてできる姪っ子か甥っ子だかの存在をどう受け止めたらいいのか、わからない。


も、ある。


まだまわりは結婚してないから、親父って存在がピンとこない。


「そういえば、柴原はもうママだったな」


赤木をみてつぶやいてしまったら、いきなりテーブルに突っ伏した。


「真央がママだなんて!あんまりだ!産むなら俺の子だと思ってたのに」


「おまえ、柴原に絶対あうなよ?」


「真央ちゃんの幸せを、喜びなさいよ?」


いちおう血縁らしいママがいう。なんとなく赤木に似てるけど。


俺の母親よりずっと年上な気もする。


(酔っ払い相手に、なに話すんだ?)


とも思わないわけじゃないけど、客商売なら、やっぱり人が好きなのかなあ。


それとも寂しがり屋が多いんだろうか?俺は東京の会社でも、そこそこ人間関係築いてたし、いまも無料アプリ通してやりとりあるけど。


「柴原の相手は、無理じゃね?旦那さん、かなり年離れてたぞ?春馬の上司で、春馬が絶賛してたし?」


「きらいだ!村上春馬は!」


ってまたわめく。いちおう俺はそいつの兄貴だけどな。


(へんなやつに会ったなあ)


「おまえ、こんど地元の合コンにでるんだろ?新しい出逢いに期待してろよ?」


「都会からこんな田舎に来てくれるほど、惚れてもらえねーよ?俺は」


「うそつけ、モテるだろ?」


「遊び相手には、なるけど、本気は無理だ」


「そういうキャラ作ったのよ?バカだから」


「うるさい、ババア!」


「おばあさまとお呼び!」


また平手ではたかれていたが、ばあちゃん?


「冗談よ?子供いない私が、ばあちゃんのわけないでしょ?」


あははって笑うが、たしかじいちゃん知ってるって言ってたような?


何歳だ?とは思うけど、黙ってグラスをのむ。


「こういうのが、モテるわよ?」


「嫌いだ村上兄弟」


「嫌いな相手にからむなよ?」


「真央をとりやがったんだ!」


また柴原の名前をだしてる。


「もう人妻だぞ?ちいさな町だから、ほんとうにやめてやれ?」


なにを噂されるかわかったもんじゃないが、そこはSNSか?田舎にとどまらないから、ある意味、いいのか?


「だいじょうぶ。ここでしか真央、真央わめかないから。この子なりにプライドはあるし、まあ、弟くんには、いろんな意味でごめんなさい、だけどね」


ってママさんが苦笑いしてる。


「初恋はひきづるでしょ?」


「そうですかね?」


流しながら、チラッとあの日みた神城の微笑みが脳裏に浮かぶけど。


まったく先輩とは違う笑顔だし?とは思うし、けど。


「…初恋でもないけど、苦戦はしますよ」


先輩に振られても、気まずいよな?いろんな意味で。せっかく就職したのに、住みづらくなりそう。


「好きなやついるだけいいじゃん!努力できて!」


ってまたうるさいけど。


「好きなやつって、努力して、好きになるのか?」


「俺は努力したけど、真央にふられた。というか最初から、アイツは俺に興味なかったし。だから、村上春馬は、きらいだ!」


「…だから、の意味がわかんねーよ?」


まあ、春馬がなんか気に食わないってヤツらは多かったよな。


中学の俺もそうだったと,わかるけど。側からみたら、ちょっとの努力で、スイスイ器用にこなして、なによりも、ものすごいマイペースさに、イライラする。


こっちは努力してあわせてやってるのに。アイツらの視界に入れないは、わかる。


柴原を俺はよく知らないが、春馬ならわかる。


「けどいい加減に卒業しろよ?結婚式でチラって、みただけだけど。あの人におまえが敵うのー、は、ルックスか?」


いや、あれ強烈な個性だしな?


あの個性に敵うのか?


「むりか?美女と野獣だ。いや、美女とゴリラ?」


あれはあれで?とも思わないわけでもないし、柴原は穏やかに笑ってたしな。


まあ、人生の門出らしい笑顔にみちた結婚式だった。けど、先輩は和式だっけ?


先輩、父親に悪ふざけしてたよな?あの親父は難敵すぎる。


が、わりとチョロそうでもあるし。俺は数少ない地元だ。


(そこしかいまんと強みないな?)


先輩がSNSで出逢い探してたら、全世界がライバルか?


「ー合コンがんばれ?」


なんか、赤木の肩に俺は手を置いた。

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