卒業4
そして五か月後、学園を卒業する日が来た。
遅れた分の勉強を取り戻すのは大変だったが、何とか卒業証書を手にする事が出来た。相変わらず学園での評判は悪かったが、男子生徒に色目を使わずひたすら勉強していたおかげか、以前よりは周囲からの風当たりが強くない気がする。
夕方、ガブリエラが自宅で卒業証書を眺めながらニヤニヤしていると、玄関のドアが叩かれる音がした。
ガブリエラがいそいそとドアを開けると、正装をしたマティアスが立っていた。黒い燕尾服が似合っている。
「……行こうか」
マティアスが手を差し出した。ガブリエラは、その手に自分の手を重ねて、微笑んだ。
「はい」
王城に向かう馬車の中で、マティアスが口を開いた。
「……ガブリエラ。そのドレス、似合ってる」
「……ありがとうございます」
ガブリエラは今、髪の毛をアップにして、紫色のイブニングドレスに白い手袋をつけている。以前、プリシッラから襲撃のお詫びとして貰ったドレスだ。偶然にも、前世で好きだった色。マティアスに褒めて貰えて、嬉しかった。
「……そのペンダント、着けてくれたんだな」
「はい。大切な日に着けようと、決めていました」
ガブリエラの胸元では、マティアスからもらったタイガーアイのペンダントが揺れていた。
「そういえば、今更だが、お前が薬師になる事を親は認めているのか?」
「はい。私には兄弟がいませんが、私が結婚して相手に婿入りしてもらわなくても、大丈夫です。私の従兄を家の養子にして後を継いでもらう話になっているので」
「そうか」
馬車が王城に着き、ガブリエラはマティアスにエスコートされながら広間に入った。中には既に大勢の生徒達がおり、ガブリエラ達二人は注目の的になった。
「やっぱり注目されますね。マティアス様は美形だから」
「忘れてるかもしれないが、お前も美人だからな。……全く、他の男の目に触れさせたくないな」
「え?」
「何でもない」
ダンスの時間になり、曲が流れ始めた。マティアスは、手を差し出して、穏やかな笑顔でガブリエラに言った。
「踊って頂けますか?お嬢さん」
「はい、マティアス様」
ガブリエラも、微笑んでマティアスの手を取った。
本来のガブリエラの記憶が残っているので、うまく踊れている。マティアスの顔を見ながら、ガブリエラは幸せを噛み締めていた。明日には、この国を出る。その前に、良い思い出が出来て良かった。
ダンスが終わり、しばらく食事を堪能した後、マティアスが言った。
「……少し、庭に出ないか?」
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