黒髪の薬師3
気が付くと、ロマーナは自宅のベッドに寝ていた。側には、バルト一家がいた。
「ロマーナ、気が付いたんだね」
クリストフが、ホッとした顔で言った。ロマーナは、自身やイデアの身に起きた事を思い出し、勢いよく上半身を起こした。
「お母さんは……!?」
クリストフは、苦しそうな顔をして目を伏せた。
「そんな……お母さん……あ……うああああ……!!」
ロマーナは、その日泣き続けた。
回復した後、ロマーナは親戚に引き取られた。後から聞いた話によると、猟銃を撃った男は逮捕されたとの事。男には精神疾患があったらしい。病気があったかなんて、母親を失ったロマーナにとってはどうでも良い事だったが。そして、引き取られた後も、バルト一家はロマーナの事を気に掛けてくれていた。
そんなある日、ロマーナがイデアの墓参りに行くと、バルト一家が先に来ていた。バルト一家は、ロマーナがいる事に気付かずに話をしていた。
「……血を吸った事は、ロマーナには秘密にしておこう」
「そうね。私もその方が良いと思う。……マティアス、あなたも、あの日の事はロマーナに言っては駄目よ」
「わかった」
三人の会話を聞いて、ロマーナは察した。まだ二歳だったヨハンはともかく、あの三人は、救助もせず、瀕死の重傷を負ったイデアの血を吸ったのだ。イデアの事を、栄養源としか見ていなかったのだ。
ロマーナはショックを受けると共に、沸々と怒りが湧いてきた。かといって、子供だったロマーナに復讐など出来るはずもなく、それとなくバルト一家と距離を取る事しか出来なかった。
成長し、ロマーナは薬師となる為に他国に修行に行き、二十二歳の時にこの国に戻ってきた。復習したいと思っていたクリストフとエミーリアは、既に亡くなっていた。
薬師として独立し、店を持つようになると、マティアスが店にやって来るようになった。再会した時、マティアスは「久しぶり」とだけ言った。マティアスは、頻繁に店で商品を購入するばかりか、顧客を紹介してくれた。店を持って二年くらい経った時には、商人のプリシッラを紹介してくれた。プリシッラは当時独立していなかったが、商才があった為、プリシッラに卸したロマーナの薬はよく売れた。
ロマーナは、マティアスに復讐しようと思ったが、昔一緒に遊んだ記憶が蘇り、なかなか実行できなかった。
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