商人とドレスと銃声と1
ガブリエラがマティアスの屋敷に来てから一週間が経った。朝食を取っていると、マティアスが口を開いた。
「今夜、ここに商人が来る。お前が聖女様に殺されかけた日、お前を着替えさせた女だ。お前も、服とか色々必要な物があるだろう。今日は俺が代金を立て替えるから、買えばいい。お前の事情も手紙で伝えてあって、ここにいる事を口外しないように頼んである」
「え、いいんですか。ありがとうございます」
赤と白のドレス二種類だけのローテーションはどうにかならないかと思っていたので、嬉しい。
「食料の買い出し等は私が代わりに行けますが、服となると本人が実物を手に取った方が良いですからね。異性の私がガブリエラ嬢の服のサイズを聞くのも憚られますし」
給仕をしながらリディオが言った。
ガブリエラは、夜を楽しみにしながら朝食を口に運んだ。
「おい、嬉しそうにしている場合じゃないぞ。お前が聖女様を暗殺しようとした話、もう新聞で報道されてる。……それと、ダリオ・アッカルドとかいう、聖女様に殺されたと思われる男、遺体で発見されたぞ。お前が撃たれたという橋の近くだな」
マティアスが、新聞を読んで眉根を寄せながら言った。
「アッカルド様は二十五歳で、子爵なのですね。……もしかしたら、アッカルド子爵を殺害した罪も、ガブリエラ嬢に着せようとするかもしれませんね」
新聞を覗き込んだリディオも口を挟む。
この国――ロッソ王国では、聖女を害する事は大罪だ。ガブリエラが外出できるようになるのはまだ先になりそうだ。
その夜、マティアスが言った通り商人がやってきた。
「こんばんはー。あ、この前気を失っていたお嬢さんもいますねー。お元気そうで良かったですー」
玄関でそう言ったのは、プリシッラ・ビアンコ。金色の髪をツインテールにしている。まだ十代前半に見えるが、現在十八歳だそうだ。
ちなみに、プリシッラもゲームに出てくるキャラで、ヒロインのおかげで改心した元悪徳商人という設定だった。ゲームでアンジェリカ達がヴァンパイアを倒す際、プリシッラが武器の提供をしていたのをガブリエラは覚えている。
「馬車にも荷物を積んでありますが、まずはこちらの見本を運ばせて頂きますねー」
そう言って、プリシッラは大きなトランクを応接室に運んだ。
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