1193 冗談ならまだしも

 密かに眞子を拉致しようと企んでいた桜井さん一行。

その話自体は、崇秀も最初は質の悪い冗談だと思っていたので、一発づつ殴るだけで済ましていたのだが。


それが事実だったと知ってしまったら……


***


「崇秀さん!!落ち着いて!!私なら大丈夫だから!!」

「眞子。……これは、もぉそう言う問題じゃねぇよな?冗談半分で言ってた『拉致』って話ならまだしも、それが現実の話ともなれば別だ。俺はなぁ。テメェの知り合いを的に掛けられて、黙ってられる程、お人好しな人間じゃねぇんだわ。それは、オマエが一番良く知ってるだろうに」


それって……あの時の話だ。


あれはまで中学校に入学したて頃。

私と、崇秀さんの小学校からの知り合いの女の子が、隣の『ヤクザ養成中学』と呼ばれる不良校の3年の男子数人に襲われると言う事件が有ったのよ。


この事件自体は、女生徒が、なんとかその不良達から上手く逃げ出せたから、取り敢えずは強姦未遂で終わったんだけど。


その事件を聞いた崇秀さんは、私と共に、そのヤクザ養成中学校に乗り込み。

見せしめの為に、未遂犯及び、その中学校の不良を全員叩きのめしたって事件が有ったのよ。


……けど、この情報には、実は、ちょっとした裏話が有って。

見せしめの為に半殺しにした不良達の大半は、実は崇秀さん1人でやったもの。


私が10人程を叩きのめした時点で、崇秀さんは3倍の30人を、ほぼ無傷で半殺しにしていた。


崇秀さんの言ってる話は、多分、その話の事だと思われる。



だから……これはもぉ、マズイなんて生易しいレベルの話じゃないのよ!!



「待ってよ、崇秀さん!!ダメだよ!!もぉそんな馬鹿な事をして良い立場じゃないでしょ!!責任が有るんだからヤメナよ!!」

「誰がヤメるかよぉ。俺の人生はオマエのもんだ。その大切なオマエを傷付け様とする奴が居るんなら、それは誰であっても許さねぇ。1000%あの世に送ってやらぁ」


ダメダメ!!絶対にダメ!!


マジで崇秀さんが人を殴ったら、簡単に人なんて死んじゃぬんだから!!



「お願い!!お願いだからヤメテよ!!崇秀さんが少年院や、刑務所に入って、逢えなくなるなんて嫌だよ!!私のお願いなんだからヤメテよ!!」

「チッ……あぁ、そうかよ。眞子が、そこまで言うならヤメてやってもいい」

「ほんと?」

「あぁ但し、首謀者は誰だ?そいつを思いっ切り一発ぶん殴らなきゃ、腹の虫が治まらねぇ。……誰だよ?立候補のみ有効だ。立候補しなきゃ、全員殺す。……マジで1人残らず、この世から存在を消すからな」


そんな無茶な。


目を見ただけで殺されそうな相手なのに。

そんな眼をした人間を相手に『自分が首謀者です』なんて言える人間が、この世に存在する筈がない。


特にこの人達は、保身に塗れた利己的で自分勝手な人間だから、人を庇う為に自分が犠牲になるなんて精神がある筈もない。


これは、あまりにも無理難題だ。



「「「「「「・・・・・・」」」」」」

「んだ?誰も居ねぇのか?嘘でも良いから、テメェが首謀者だって言ってみろよ。そいつを一発殴るだけで勘弁してやっからよぉ。早くしろや。誰もしねぇなら、全員地球上から死滅させんぞ」

「「「「「「・・・・・・」」」」」」

「あぁっそ。そこまで自分の身が可愛いってんなら、この際だ。全員で仲良く死亡確定って事で……決定だな。みんなで仲良く、十万億度でも踏んで来いや」


だめぇ~~~!!

マジでこのままじゃ崇秀さんが、人殺しをしかねない!!


私は、どうにかして必死に止めようとした瞬間……



「ヒデ坊。俺が原因だ。殴るなら、俺を殴れ」


そんな声が、何処からともなく聞こえてきた。


……って、この声は。


国見さん?


あぁそうかぁ。

さっき鮫島さんが国見さんに事情を話してくれたから、急いで、この現場に駆けつけてくれたんだ。


けど、幾ら甥っ子の責任を取るって言っても、崇秀さんに代理で殴られるなんて無茶だよ!!



「あぁ?あぁ、そう言う事か。その分じゃ、アンタの甥っ子が首謀者って訳だな?なら、親代わりのアンタからケジメを取るってのも、それは筋が通ってる話だな」

「あぁ、そうだな。多少無理は有るだろうが、一応の筋は通してるつもりだ」

「そっかよ。ただなぁ、国見さんよぉ。今回に限っては運がなかったな。あの糞ガキは、敵に廻す人間を間違えた。だから俺も一切容赦は出来ねぇぞ。その覚悟出来てるんだろうな?」

「勿論だ。あの馬鹿の責任は、親代わりである俺が責任をとる。だから遠慮せず、思いっ切りやんな。……オイ、一樹!!これが、テメェのやった不始末の付け方だ!!良く見てやがれ」

「……叔父貴」

「この糞ジジィが、後先考えずに、こんな不出来なボンクラを世の中に放ちやがって……一回死んで来いやぁジジィ」


嘘!!


思い切り振りかぶってるけど、本気で国見さんを殴る気なの?


冗談でしょ!!



「崇秀さん、ダメェ~~~~!!」


そう思った瞬間、私は、崇秀さんの振り上げた腕に縋り付いていた。


本当に殺しちゃうよ!!



「離せ眞子。これはケジメの話だ」

「そうだ。離しなさい」

「嫌です」


そんな後味の悪いのは嫌だ。


お互いが知り合いなのに、そんな事が有っちゃいけないんだよ!!



「待ってくれよぉ。……悪いのは俺なんだぁ。調子に乗って、仲間を集めたのも俺なんだよ。だから、もうこれ以上、叔父貴も仲間も殴らないでくれよぉ。……頼むよ。頼むからさぁ。ヤメテくれよ」

「……一樹」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


最後の最後に成ってしまいましたが。

あの自分勝手な事ばかり言っていたあの桜井さんが、国見さんを殴らせない為に『自らが首謀者だ』と名乗りをあげましたね。


これは非常に良い傾向だと思います♪


ですが、何故、こんな風に急に彼は心変わりをしたのでしょうか?


次回はその辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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