第21話 おねえさん……? ですの?
「おねえさん……?」
「はい! アリンお姉さん!」
なにがどうなったらそう呼ばれることになるんですの?
「えーっと……それは、どうしてですの?」
「ぼく、一人っ子で兄弟がいなくて……兄や姉の存在に憧れてたんです。それで、アリンさんってすっごいかっこいいお姉さんみたいで! ぼくの理想なんです!」
なんだか熱く語っている。目が、目がキラキラして直視できない。さっきまではランスくんが逸らしていたのに、今度は私がランスくんの目を見れない。
「いいですか……?」
「タイム!」
「たいむ?」
「いったん作戦タイムにさせてほしいですわ!」
「は、はい」
私は急いで机の上の懐中時計を掴む。そして、小声で必死にカイチューに語りかける。
「カイチューカイチューカイチュー! やばいですわ!」
『なんだようるせえな……俺は今お前が言った情報を処理してんだよ。えっとなんだっけ……あーもう忘れちゃったじゃん!! ……主人公が白い髪で、固有魔術を持ってて……』
「そんなことよりもですわ! もっとやばい事態になったんですわ!」
『なにやばい事態って。うんこでも踏んだ?』
「あの子がランスくんだったんですの!!」
『はあ? ランスくんって、お前が言ってたランスロット・レイ?』
「そうですわ!」
『……』
『はぁ、お前ってホント運良いよな』
「ぜんぜんよくありませんわー!! わああああああ!!!!」
私はあらんばかりの大声で懐中時計に向かって叫ぶ。
さすがにキーノさんが心配なさって私へ駆け寄る。
「アリンちゃんどうしたの? 急にその時計に話しかけたりして」
「はぁ、はぁ……これは落ち着くためのルーティンですわ」
「?」
「もうちょっと待ってくださいまし」
キーノさんに背を向け、もう一度小声でカイチューと話す。仕切り直しですわ。
「それで、あの子がランスくんだったんですの」
『あーそう。でもお前が気づかなかったってことは、お前の未来の知識にはなかった場面ってことだよな?』
「そうですの! だからまずいんですの! これでランスくんの運命が変わっちゃったらどうしましょう!!」
『なるほどね……ちなみに、ランスロット・レイのこれからの大まかな流れってなんだ?』
「えっと、騎士訓練生から13歳で正式に騎士団に加入。そして16歳の時に魔術学園入学って感じかな」
『ふーん、ならもうほっとけばいいんじゃねえの?』
「ほっとくって……」
『お前が変えたくない運命ってのは9年後の学園でのことだよな? ならそこまでの流れを大きく崩さなければ大丈夫だろ』
「た、たしかに……」
『ま、これ以上関わると何が起こるかわからんし、深い付き合いになることだけ注意すればいいと思うぞ』
思わず頭を抱えてしまいました。深い付き合い……先ほどランスくんに言われたことが耳から離れませんわ。
『は? どうかした?』
「いえ、その……」
「あの、もういいですか? アリンお姉さん」
「ひゃい!!?」『ん?』
しびれを切らしたランスくんが話しかけてくる。
『……今アリンのことお姉さんって言わなかったか?』
「へへ」『へへじゃねーだろ。めちゃくちゃ深い付き合いになってんじゃねーか』
「アリンお姉さん……やっぱり嫌ですよね、こんなぼくなんかにお姉さんって言われるの……」
「あ、いえ! そういうわけではないんですわ!!」
「え!? じゃあ呼んでいいってこと!」
「あー、はは……」
とりあえず言葉を濁す。ぶっちゃけ何と呼ばれようと構わないのですが、問題はこれ以上ランスくんと関わるのがあまりよろしくないってことなんですの。でも、それを伝えたらなんだか泣いてしまいそうで……。
『なるほど、向こうが言い出したことね』
「そうなんですの! だから遠回しにやんわり断る方法ありませんの?!」
『あー……そうだ、たしかランスロット・レイって年上だったよな』
「それですわ!」
私はランスくんに向き直る。
「えーっと、ランスくん?」
「はい!!」
うわぁ、いい笑顔。
「その、ランスくんっていまいくつなんですの?」
「ぼくは今年で8歳になります!!」
「そうだったんですのね~! 私、今7歳ですのよね!!!」
「そうなんですか!」
「あ~ランスくんにお姉さんって呼ばれるのは構わないんですが、ランスくんが年上となると、やっぱり変ですわよね~」
これだ! あなたが年上だから年下の子をお姉さんって呼ぶのは変だよね作戦!!
さすがにランスくんも分かってくれるはず!!
「ぼくは気にしません!! 大丈夫です!!」
お願い気にして~~~~!!!!
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