第二十三話 ネクスト
陣間組とのゲームから一週間が経った。陣間組は川名組に取り込まれ、川名組は埼玉と群馬で一番の組となった。しかし、問題は山積みである。
「どうしましょか。」
川名組の組長室に設置してある机をまたいで2人の男が座っていた。
「埼崎元組長には断られてしまったしなぁ。」
そう頭を抱えているのは他でもない川名組組長の川名春吉である。そして、対面に座っているのは川名組若頭である岩田叡山である。
この2人が悩んでいること、それは取り込んだ陣間組をどうするかである。
川名組だけでも手一杯であった川名春吉は、陣間智久がいなくなってしまった陣間組をまとめるため、埼崎元組長にその役をになってもらおうとしたが、断られてしまったのだ。
これにより、2人は陣間組をまとめあげるものの選定を行うために組長室に集まっている。
「組長。やはり、陣間組を取り込んだのは失敗だったのではないでしょうか。」
川名組だけでも精一杯なのに、陣間組も取り込んで統率できるわけがないのだ。こんなこと取り込む前から既にわかっていたことだ。
「いや、それはできないよ。阿黒さんとの約束があるから。」
そう、川名春吉が陣間組を取り込んだのは他でもない川名組のギャンブラーである阿黒賢一との約束があったからにほかならない。
「なんなんです。その約束といのは。」
「それは、いえない。」
叡山は川名春吉の表情から何かを読み取ったのか、これ以上それに触れることは無かった。
その後数分もの沈黙が訪れた後、岩田叡山が口を開く。
「やはり、陣間組を任せられるのは若頭である。倉垣泰三に任せるのが今はいいかと。」
「それが、いいかなぁ。」
そうこう話して、川名組と陣間組の今後のことが決まったその時、川名春吉のスマホから一通の連絡がくる。
「なんだ?」
スマホの連絡を見た途端に川名春吉の動きが止まる。
「どうかなさいましたか?」
何かあったのかと、心配そうな目で川名春吉のことを見つめる。
だが、そんな叡山の言葉すらも川名春吉の耳には入ってこなかった。
「どうしたんですか?」
今度は先程よりも大きな声を出して問う。
「あっ。」
ようやく叡山の言葉が耳に入ったのか、手に持っているスマホを目の前で見せてきた。
「それが、」
「ッ。」
それを見た叡山は絶句した。
無理もない。その連絡とは『ヴレ・ノワール』からのものであり、一週間後に再びゲームが行われることかいてあったからに他ならない。
しかもそからにある組なんかではなく茨城と栃木を牛耳っている
◆
「という訳でですね。次の対戦相手が決まりました。」
またもや川名組の組長室に2人の男が座っていた。1人は先程と同じ川名春吉だが、もう1人は川名組のギャンブラーである阿黒賢一であった。
「わかった。それで、誰が相手なの?」
顔に笑みを浮かべながら川名春吉に質問を投げかける。
「桐口組という茨城県と栃木県を牛耳っている組です。」
「へぇ〜。」
それを聞いた阿黒賢一は顎に手を当てる。
「楽しめそうだね。」
その笑みは先程までとは違い邪悪な嫌な感じを川名春吉に感じさせた。
◆
「次の相手が決まったぞ。」
真っ白に装飾された部屋にスーツ姿の男性と上下白の服を着ている男性の2人が座っていた。
「ようやく次の犠牲者が決まったのですか。」
横に座っていた白い男は顔を
「あぁ、決まったぞ。次の相手は川名組だ。」
「陣間組を破った組ですか。」
白い顎に白い手をあてる。
「なんだ?不安なのか?」
「ふふっ。まさか、犠牲者の身をあんじていたのですよ。」
「だろうな。お前が不安なんかするわけねぇだろうからな。」
桐口奏斗はスマホの画面を見ながら話し続ける。
「前回もお前の思い通りのゲーム展開で終わっちまったからな、」
前回の栃木の丸込組まるこめぐみとのゲームを思い出す。
(おそらく川名組をとった頃には千葉にある
桐口奏斗はスマホから一瞬目を離し、横に座っている桐口組のギャンブラーである
(本当。こんな化け物を見つけられたのは大きかったな。弱小だった組をここまで大きくしてくれたんだから。)
「ようやく桐口さんも白一辺倒の服を着てくれたのですね。」
桐口奏斗が着ている白のスーツを横目で見る。
「あぁ、お前が着ろ着ろうるさいからな。」
君塚渉はことある事に桐口奏斗が着ている黒のスーツを「白にしろ。」「白にしろ。」と会う度に言ってきていた。
「素晴らしい心がけですね。」
「ありがとな。」
君塚渉は白い手を顔の前まで持っていき、合掌するかのように手のひらを合わせる。
「それはそうと、本当に悲しいですね。犠牲者のことを思うと。」
悲しいと言った君塚渉だったが、その表情は悲しみとは正反対の惹き込まれるような笑みを浮かべていた。
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