第二十一話 脱出

「思いのほか、簡単な謎だったけど、それなりには楽しめたかな。」


機械に9の数字を打ち込み、決定を押す。


『ビィー、ハズレです。コレから10分間パスワードをロックします。』


機械から発せられる音声に真名慎太郎は少しうろたえた。


「なっ、」


(違うのかパスワードが、どこで僕は推理を間違えた。)


そんなことを考えていると、またもや機械から音声が鳴る。それは、真名慎太郎にとって最悪の報告となった。


『阿黒賢一様がアルバスローカスを脱出致しました。これにて、アルバスローカスの勝者は阿黒賢一様です。』


機械が音声をながしおえると、ガチャンという音と共に扉が開く。


扉の先には外がひろがっていた。真名慎太郎は勝ってアルバスローカスを出るはすが、負けてアルバスローカスを出る羽目となった。


阿黒賢一はゲームがはじまる前にたっていた場所にたっていた。真名慎太郎はアルバスローカスを出るなり、すぐさま阿黒賢一の方に向けて歩みを進める。


「阿黒くん。どうやってアルバスローカスの謎を解いた?」


真名慎太郎の率直な疑問に阿黒賢一はとある所を指さした。


「あれだよ。」


阿黒賢一の指の先には今まさに出てきたアルバスローカスがあった。


「あれとは……、まさか、」


それだけで真名慎太郎は全てを理解した。なぜ自分の推理が間違ったのかも全て。





「そういうことか、把握した。」


『アルバスローカス』を一通り見た阿黒賢一は真名慎太郎と同じく下に敷いてある白いタイルを外した。


外した先には『1』の数字がしるされていた。


「なるほど。」


阿黒賢一は次々と各部屋のタイルを外していく。


[1][2][3]

[8][ ][4]

[7][6][5]


そして、真名慎太郎と時を同じくして『アルバスローカス』の全てのタイルのようなものを外すことに成功した。


全てのタイルのようなものを外した阿黒賢一は再び『アルバスローカス』を縦横無尽に歩きだす。


とある違和感に気付く。そう、部屋の大きさだ。


「ここだけ小さい。」


4の部屋にいる阿黒賢一は部屋が小さいことに気がつくと、なぜこの部屋だけが小さいのか考え、答えを導き出しす。


ガンガンガンガンガンガン。


鉄のペンで4と空白の部屋を繋ぐ扉の端を思いっきり叩く。


ガンガンガンガンガンガン。


そうすると、真名慎太郎が手にいれたものと同じような紙切れが三枚でてきた。


『人の手で自ずと』


『×』


『ルーメンからテネブライへ』


その三枚の紙切れとゲームマスターが言っていた言葉、黒スーツの男からもらったヒント、その3つが阿黒賢一の頭の中で繋がる。


『人の手で自ずと』が人工と自然を表してること、そしてそれは左右を示していることを見抜き、0の数字を当て、『×』とB-9を合わせることで3の数字が見えてくることを見抜いた。


ここまでは真名慎太郎と同じだったが、最後に残った紙切れ、『ルーメンからテネブライへ』この謎の解き方だけが違った。


阿黒賢一はアルバスローカスがラテン語であることを見抜いて、『ルーメンからテネブライへ』を『光から闇へ』に翻訳し、これが上下を表してるいることをよむ。


ここまでは同じだった。だが阿黒賢一と真名慎太郎ではこの上下の解釈が違っていた。


真名慎太郎はこの上下を



[1][2][3]

[8][□][4]

[7][6][5]



このように解釈をした。たが、阿黒賢一は違う。


この謎を解いた阿黒賢一は脳内に外側から見たアルバスローカスをうつす。


「やっぱり」


阿黒賢一はアルバスローカスの1の部屋を除く他全ての部屋の床から外した70×70cmの白のタイルのようなものを空白の部屋に移動させ、空白の部屋には計8枚の白のタイルがのようなもの集まった。


そして、空白の部屋でタイルのようなものを外してできた窪みにタイルを横向きに二つ設置し、その間に斜めになるようにもう1つタイルのようなものを設置すふ。そして、その上に白のタイルのようなものを置き、足場をつくった。


阿黒賢一はこの上にもう一度同じようにタイルのようなもので足場をつくり、計8個のタイルのようなものを使用した約1.4mの足場が完成させた。


そして、その足場を崩さないように慎重に乗ると、天井に設置してある床と同じ白いタイルのようなものを手で触る。


ガコン。


音ともに中央の天井にある白いタイルのようなものが外れる。そして、外した先には0という数字が刻まれていた。


阿黒賢一はアルバスローカスの外見と部屋の高さの乖離に気が付き、天井に何かが隠されていることを見抜いたのだ。


地上に降りた阿黒賢一は先程つくった足場を解体し、今度はタイルのようなものを外したことでできた空白の窪みの縁を3つの紙切れを見つけた時と同様に鉄のペンで思いっきり叩く。


ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン。


数分もの間叩いていると、今度はその空白の窪みの床が外れ、その下からも数字がでてきた。その数は-6であった。


そう、上下というヒントはアルバスローカスを図に描いた時、つまり二次元的にできる上下ではなく、現実の三次元的にできる上下をあらわしていたのだ。


つまり『ルーメンからテネブライへ』の表す数字は6ではなく、-3であったのだ。


『ルーメンからテネブライへ』、『人の手で自ずと』、『×』がそれぞれあらわす数字は-3、0、3であり、これを見抜いた阿黒賢一はそれにつづくもの、つまり6の数字を入力してアルバスローカスを脱出したのだ。

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