第十九話 紙切れ

[始][□][今]

[□][□][□]

[□][□][□]


「こうなるはず。」


真名慎太郎は自身の推理に従ってどんどん扉を開き、歩みを進める。





「やはり、当たっていたか。」


全ての部屋に入り、最初の部屋に戻ってきた真名慎太郎は自身の推理が当たっていたことにたいする喜びにひたっている。


「だけど、それらしいものはなかったなぁ。」


真名慎太郎はただ部屋を無策で移動していた訳ではなく、不自然な場所などを探しながら歩みを進めていたのだが、それらしいものは何一つ発見できなかった。


真名慎太郎は白い3×3のタイルのようなものの部屋を縦横無尽に歩きながら思考していると、


「これは、」


ある違和感に気がついた。


真名慎太郎は目を瞑りながら下に敷き詰められている3×3の白いタイルのようなものを順々に踏みつけていく。


「やはり、ここだけ音が違う。」


3×3に敷き詰められたタイルのようなもののうちの一つだけが音が違ったのだ。だが、それは常人には気づけないほど小さな音の違い、それを真名慎太郎は見破ってみせた。


3×3に配置された白いタイルのようなものの左上、音の違うタイルのようなものを手で思いっきり持ち上げた。


(重さからして石ものや土ものでできたものではないな。)


すると、音をたてて、タイルのようなものが外れる。


「なるほど、そういうことですか。」


真名慎太郎の視線の先には1の数字が出口の扉と並行になるように記されていた。


「左上、ということは。」


何かをひらめいた真名慎太郎はその部屋をあとした。


上段の真ん中、右上、中段の左、左下、下段の真ん中、右下、中段の右、真ん中の順で一部の白いタイルを外していく。


「やっぱり。外れるタイルのようなものは全て部屋の位置に関係している。」


そう、この外れるタイルは何もランダムで決まっている訳ではなく、アルバスローカスの部屋の位置とリンクしていたのだ。それをたった一つの部屋のタイルの位置を知っただけで真名慎太郎は見抜いたのだ。


「なるほど、これがパスワードになるというわか。」


真名慎太郎の見つめる先には数字のかかれていない真っ白なゆかがあった。というのも、真名慎太郎が最後に開けた中央の部屋のタイルをどけると、そこには数字はなく、真っ白いただの床だけがひろがっていた。


[1][2][3]

[8][□][4]

[7][6][5]


「ここに入る数字を入力すればロックエリアを抜け出せると、」


真名慎太郎は顎に手を当てて思考する。


(これだけだと数字を断定はできないが、順調に行くのであれば、9がパスワードの答えになりそうだが、そんな簡単なことでは無いはず。一回9を入力して確かめたいが、賢一くんにヒントを与えることになってしまうからそれはできるだけ避けたい。であれば、他に何か見落としているものがあると考えたうえで改めて全ての部屋を探索するのが賢明かな。)


考えが固まったのか、真名慎太郎は中央の部屋をあとにした。


そこから真名慎太郎は一つ一つの部屋を丁寧に塵1つ見逃さないくらいのいきおいで見て回る。


それから数分がたったのち、真名慎太郎はとある部屋の異変に気がついた。


「ん?」


真名慎太郎が感じた異変。それは、部屋の大きさにほかならない。


アルバスローカスに存在している9つの部屋全てが同じ長さの正方形ではなかった。


真名慎太郎が自身の足のサイズや両手を広げた幅のサイズなどで全部屋調べたところ、4の部屋だけが僅かに横幅が狭い。それは目視では到底分からないほどの違いであった。


常人では気づくことが出来ないそれにまたもや気付いた真名慎太郎は4の部屋と白紙の部屋の間には何かがあるのでは無いのかと思い、探したが何もめぼしいものはなかった。


「おかしいな。4と白紙の部屋の間には何かがあるはずなんだが。」


真名慎太郎は4と白紙の部屋を繋ぐ扉を開けて、その側面をじっくりと見つめる。


ふと、手に持っている鉄製のペンの方に目を寄せると、真名慎太郎の脳内にとある推理が展開される。


(そもそも何故鉄のペンなんだ。普通ならプラスチックのペンでも良いはずなのに、しかも、ルールで破壊を禁止されているのは扉と機械の破壊だけ、なんで、破壊禁止というルールにしない。)


真名慎太郎は扉を開けた際にできる壁の側面を改めてじっくと見つめ、手で触る。


(やっぱり、そういうことか。色は同じですが、ここだけ素材が違う。)


4と白紙の部屋を繋ぐ扉を開けた際にできる壁の側面の下部の一部には元々、長方形の穴があいており、そこをその後、レンガのようなもので塞ぎ色を塗ってカモフラージュしたものであった。


(そして、ここは、扉でも機械でもないから壊してもルールに抵触しない。)


真名慎太郎は下部に存在しているレンガのようなものを鉄のペンでおもいッきりぶっ叩く。


ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン。


数十秒もの間鉄のペンでぶっ叩いていると、とうとう、レンガのようなものが音をたてて崩れ落ちた。


ボロ。


「思いのほか疲れるな、これ。」


壊れた先には、3枚の紙切れが存在していた。


『おのずと、人の手でつくられる。』


『×』


『ルーメンからテネブライへ』


「なるほど、そういう事か、理解した。」


真名慎太郎は3つの意味不明な紙切れを見るなり、即座に理解したと言い放った。

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