今度は結衣と
「すみません、遅れました」
いつかの時と同じようなことを言って、俺は教室に入った。
相変わらず視線が集まるけど、先生からの許しの言葉を貰った俺は、直ぐに自分の席に座った。
結構遅れてるし、前世だったら絶対に許されなかっただろうな、と思いながら。
「ゆ、優斗くん、もしかして、寝坊、した? ……私の、せい?」
そして、授業中だし、あまり音を立てないように授業の準備をしていると、隣の席の結衣が小声で申し訳なさそうに、そう聞いてきた。
「違うよ。朝は普通に起きれたけど、学校に来てから、ちょっとね?」
……あ、これ、昨日の夜俺が結衣と電話をしてたから、あまり眠れなくて寝坊したと勘違いされてるんだ、という考えに思い至った俺は、直ぐにそう否定した。
不良少女に襲われそうになってました、とは言えないから、少しぼかしながらだけど。
「そ、そうなの?」
「うん。だから、結衣が何か気に病む必要なんて全然ないよ」
「よ、良かった……あ、でも、それじゃあ、なんで遅れたの?」
結衣をフォローするようにそう言うと、結衣は純粋な瞳を俺に向けてきながら、そう聞いてきた。
……さっき思ったばかりだけど、不良少女に襲われそうになっていました、なんて言えるわけが無い。
かといって、下手なごまかしで結衣を不審に思わせるのも嫌だ。
「ちょっと、新しく出来た友達? と喋ってたら、遅れちゃったんだよ」
うん。嘘は言ってないはずだ。
性格にはまだだけど、連絡先ももう交換できているようなものだし、友達に決まってる。
……ん? あれ? そういえば、俺、由菜にだけ自己紹介させて、俺は自己紹介をしていなかったような……よし、連絡先が登録されしだい、メッセージでもいいから、ちゃんと名前を伝えておこう。
先生が俺の名前を言ってたし、わかってるとは思うけど、一応な。
「え……そう、なんだ。……女の子?」
「うん。女の子だよ」
「……そう、なんだ。……あ、あのさ!」
俺がそう言った瞬間、結衣は一瞬、落ち込んだような表情を見せたと同時に、直ぐに表情を戻して、何かを言ってこようとしてきた。
ただ、その声はかなり大きなものだったせいで、授業中、ということもあり、結衣は普通に先生に注意されてしまった。
「えっと、大丈夫? 何か言おうとしてたけど、なんだった?」
本当なら休み時間に聞いた方がいいんだろうけど、今日も休み時間には真奈が来るだろうから、出来れば今聞いておきたい。
「う、うん。今日の放課後、遊び、ませんか?」
俺をデートに誘う緊張感からか、さっき先生に怒られてしまった恥ずかしさからか、顔を赤くしながら、結衣はそう言ってきた。
「うん。もちろんいいよ」
別に約束してるわけじゃないけど、家が隣同士なんだし、真奈は今日も俺と一緒に帰ろうとしてるわけだろうから、そんな真奈になんて言い訳をしようかは迷うけど、結衣がせっかく勇気を振り絞って俺をデートに誘ってくれたんだ。
そんな誘いを断れるはずがない。と思い、俺は頷いていた。
「や、やった」
すると、流石にさっきのことで学んだのか、結衣は小さく、呟くようにそう言って喜びを噛み締めていた。
うん。可愛い。
……真奈には、今のうちに今日は一緒に帰れないって連絡をしておこうかな。
早い方がいいもんな。
【真奈、悪いんだけど、今日は一緒に帰れない。ちょっと急用が出来ちゃったんだ】
そう思い、俺はそんなメッセージを送った。
【なんで? 用って何? 私も手伝うよ?】
すると、授業中とは思えないくらいの速さで返信が着た。
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