17歳の冬

月賀 千陽

第1話 出会い

雪が舞い散る冬の季節に俺「灰川 悠」は、赤ん坊を育てることになった。

それは、まだ雪が降り始める前の出来事だった。

某十二月のある夕刻の時間帯に学校からの帰り道を歩いて帰宅する途中で

近くの交差点で交通事故が起きた。

その現場に駆け付けると、一人の女性が倒れていた。

女性はトラックに引かれ、身体中から血が流れていた。

周りの者が見ていると「おい、赤ん坊を抱えているぞ」と誰かが声を上げた。

実際に赤ん坊が母親と見られる女性にかばわれていた。

数分後には、警察が来て交通事故現場の整備と調査を開始していた。

俺は赤ん坊が可哀そうに思えた。

実は俺自身も子供のころに両親を亡くしたからである。

赤ん坊に同情しながら帰宅した数日のことだった。

遠い親戚に呼ばれて都会の方まで来てみれば、何やら葬式のようなことを

執り行っていた感じであった。

そこで親戚一同が誰の葬式を執り行っていたかというと、先日交通事故に

遭った女性の葬式であった。

俺は頭の中が真っ白になった。

なぜだか、少しだけ罪悪感を抱いてしまったからだ。

俺の両親の時の葬式にすれ違っていたかもしれない女性に交通事故が起こる前に、

会話する中だったら、交通事故に合わせずに済んだかもしれないと思ったからである。

そんなことを一人ふけりながら考えていると、離れた所から何やら騒がしい声が

聞こえてきた。

近くに行ってみると、何やら亡くなった女性の赤ん坊の引き取り先の話をしている

最中であった。

「わしらは、もう年だからこの子をやしなっていけないぞ。」

「俺も自分の子供が要るからこれ以上は支えられねえ、」

「私もやっと子育てがひと段落したのにもうこりごりだわ。」

などと誰もが赤ん坊を引き取りたがらないことで言い争っている。

そんなこんなでその光景を見ていると大人たちが俺を見かけると、

「おう、来てたのか悠。」

「ああ、呼ばれたからな、」

「で、さっきから聞いていれば、赤ん坊のことどうすんの?」

「それでよ、お前にも頼みたいだが、」

「はあああああああああああ、」

「頼むお前、今一人暮らしだろ、みんなそれぞれの家で

手一杯だから援助はするから引き受けてくれ。」

「嫌だよ、今の生活でもギリギリ一人でやっていけてるのに、

第一に俺が受けたとして、俺には学校があるんだが、」

「お前なら大丈夫だろ、成績が以上に優秀過ぎてで休んでくれって、

電話が来るんだ、灰川くんがいたらほかの子たちの勉強が追い付かないからって、」

「うぐ、」

「だからお前なら大丈夫」

「だけど、、、」

「でも、俺たちもお前ほど優秀な奴を大学に行かせてもやりたいから、

とりあえずでいいから、十年ほど預かってほしい、それを終えたら

好きな大学に行ってくれ、金はいくらでもだすから。」

「もし、それを俺が了承して養育費はどうする?」

「それは、親戚一同からだす。」

「………」

「その沈黙は了承したととる。」

「ちょ、おい…」

「みんな、悠が俺の条件をのんだゾ、」

それお聞き親戚一同は、

「おう、ありがとう悠。」

「頼むぜ悠、」

などと言われ半ば押し付けられたこの赤ん坊を。

これが俺とこの子との出会いをきっかけに、それぞれの人生を

大きく左右することをまだ誰も知らない。

                                   続く


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