喫茶店にて
@Minto-chan
1話完結
「久しぶり。」
冷たい風が吹く梅田駅を歩く僕の後ろから懐かしい声がして振り返ると、
そこには変わらない笑顔で笑うゆきが立っていた。
何年振りだろう。
高校生の頃、ゆきと僕は付き合っていた。
大学に進学してからすれ違いが増え、そのまま別れてしまった。
他の女の子と付き合ったこともあったが高校時代を共にしたゆきをどこか忘れられないでいた。
街灯の光で照らされる姿は相変わらず真っ白で可愛らしいと思った。
「これから時間空いてる?」
耳を赤くしながら言うゆきにドキドキしながら頷き、僕たちは近くの喫茶店に入った。
「すみません、温かいミルクティー1つ。」
ゆきの声に慌てて
「あ、アイスコーヒーで。」
と苦手なコーヒーを注文してしまった。
コーヒーと少したばこの香りが漂う店内で心地よい秒針の音をBGMに2時間近く思い出話に花を咲かせた。
別れてからの空白の時間を埋められたような気がした。
「変わらないね、本当。そういうとこが好き。」ゆきは笑って言った。
僕も心からそう思った。
高校生の時の居心地の良さを思い出して、あの頃に戻りたいと思った。
「そろそろ行こっか。」
と席を立ったゆきの手を僕は反射的に掴んでしまった。
「あの頃に戻れないかな。」
抑えられなかった。
時間が止まり、この世界に2人だけ残されたのではないかと思った。
「…今日、子供の誕生日だから。」
と言った。
「そっか、そうだよな、ごめん。」
あの頃から前に進めていないのは僕だけだった。
喫茶店にて @Minto-chan
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