見届けるモノ〜天の子らの示寂〜

長清

第1話 genuine heart 1

君は過去のことを覚えているかい?

昨日の晩御飯?恋人と別れた瞬間?乳離れをした時? 残念だけれど、僕が言っているのはもっと前のことさ。

 僕は君のことを新たに地球上に誕生する時から知っている。君の隣にいる人のことも駅ですれ違った人々のこともね。

 一体何を言っているのか、分からないような顔をしているね。これから順番に語っていこう。

 これは僕が見届けてきた生活の記憶だ。

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 ___コツンコツン

 ガラスの高くとがった音が耳に刺さる。

ルゥだ。使い鳥のルゥは新規の仕事を記した手紙を運んでくれる鶸である。

『ありがとう、ルゥ。イシス様によろしく伝えておくれ。』

ルゥは華麗に羽ばたきながら消えていった。

 さぁ、今回の仕事相手はどんな奴だろうか。さっそく取り掛かるとしよう。

終わるまで時間がかかるんだ。付き合ってくれよ。



 周りには草原、草の清らかで苦味のある匂いが鼻腔をくすぐる。明るく照らしている日は俺の角膜もを刺激している。ここはどこなのだろうか。

何も分からない。だが、この俺の目の前にある扉を開き進まなければならないことを知っている。いや、知っているとは違うな。本能のように脳みその奥底に刻み込まれているかのようだ。 俺は視界を固く閉じ何も考えないようにしながらドアノブを握りしめ、手前に引きながら足を踏みいれた。


 湿っぽく異様な雰囲気が身体にまとわりつく。徐々に視界を拡げていった。

シンプルな建造物や街頭が立ち並ぶ。道には女に子供がいた。その子らは痩せ、下腹部を膨らませるまで様々だ。女に関してはいわゆる「たちんぼ」ってやつだろう。

残酷な光景だった、あの子たちがとても可哀想に見えたのだ。

そんなこんな考えながら歩くと、

「お兄さん、良かったらウチの店来ません?いい子いますよ~!一晩5000!いや、3500円!別途料金ですが、フードもあります!どうです~」

小洒落た服で身を包んだ男が声をかけてきた。近くの店の人だろう。こういったものに行ってはいけない、頭では理解している。だが、好奇心をくすぐられ男に付いて行ってしまった。


 店に入り、店員のいうがままに女の子を選んだ。部屋に入ると、黒髪の長髪の子がベッドに座っていた。10代半ばといったところか?華奢な身体だ。

「こんばんは。今回お相手をします。サナです。よろしくお願いします。」

消えてしまいそうなほどのか細い声で少女が挨拶をする。緊張で勃つ気もしなく、少女の細い腕を見てフードメニューを開き注文する。二人で食べるうちに緊張感もなくなっていた。

食べ終わるとおもむろにキスをされた。少女の目には特別俺は写し出されていなかった。 彼女にとっては仕事。当然の行為なのだろう。悲しく虚しい。そんな思いとは裏腹に俺は彼女を押し倒し、服を脱がせた。

細い身体もまるで美しい一つの線のように感じる。彼女につながる入口はならなくとも俺を受け入れた。


食べた後の温かい体温、肉付きの悪い身体は少し上に突いただけで俺の形が浮き上がる。


不覚にもそのどれもに興奮する自分がいた。




_________________________________________genuine heart part1 end

ご覧いただきありがとうございます。


次回からこの男はどのような心情で朽ち果てた街で生きていくのか。

行動1つ1つが結果にどう影響を及ぼしていくのか。


1つの物語、約part3構成で作りあげていく予定です。

「見届けるモノ」内で様々な物語を書いていきますので、楽しんでいただけると幸いです。


こちらの作品が初となりますので応援してくださると励みになります。

今後ともよろしくお願いいたします!





 

 

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