ショートケーキ

 ケーキを、かいました。いちごのケーキ。

 うちに帰って、てっぺんのイチゴを食べていると、それが甘くて、酸っぱくて、それからなんだか喉が泣きます。肺が嗚咽して、クリームが甘くて、冷たくて、フォークを机に置きました。背中を丸め、机のかげに、うずくまって、ふと靴擦れの痛みを思い出して、腱のところが濡れていることに気づいて、またフォークを持って、スポンジを食べ、噛むたびそれが塩っぱくて、息ができなくて、グラスを覗くと、化粧の溶けた女の顔が、静かにてらりと映っている。

 床に反響した声が、いつも、鋭利だった。どこまでも鼓膜を貫いた。不快だった。

 冷たい床に横たわっていれば、いつかは、震える膝も固まるだろうと思っていた。

 どうして、この肺は、いつも、湿り気を帯びることでしか、満足できないの。胸は膨らんだり縮んだりして、思い知らせて。頬がひりひり破れて。瞼が腫れることの、なにがそんなに、そんなに。

 ……暗くした部屋の、カーテンの隙間から漏れる光を、わたしはひとりで、そっと、閉じこめる。

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