人間みたいね
風の吹く丘にひとり取り残されている
追い風が吹いている
毛先を連れていこうとするのに
身体が重くていつも動けない
草いきれが身体を押す
濡れた肌に滑らされて
いつまで経ってもここにいる
西日が肌を焼いてくれる
けれども内側から溢れる水が
わたしをどこへも行かせてくれない
生温かく足が沈む
ここは沼だった
仕方のないことばかり思い出しては
仕方のないことに最善を求めて
やっぱりどうにもならないことを知る
風は身軽にそれを教えてくれるのだった
追い風が背中を押してくれたことにして
いっそ気まぐれにホームに飛び込んだら
それは風のせいになるかしら
とずるいことを考える
だからいつまで経っても怪物なのだ
楽になりたい
どうして悲しみは生きているの
怪物にも悲しみは内在しているの
それってなんだか人間みたいね
何も知らない馬鹿なまま死にたかった
生きるしかなかったから生きていた
妥協がわたしを生かしていた
悲しみって一体どんなこと
曖昧になってよくわからないの
それなのにそんな言葉を知っているのね
それってなんだか人間みたいね
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