第二通目 A.2 過去の男からの手紙
【お題】 『過去の男からの手紙』
こちらは返信のあるバージョンです!
手紙の内容は前ページと同じです。
↓
https://kakuyomu.jp/works/16818093075168509858/episodes/16818093076420841804
💐【解答】受取人、多田明美。偽名にて返信。
はじめまして。私は
突然のお手紙失礼いたします。
先日、貴方様から届きました
恐らく私が入居する前にお住まいだった方なのではと推察しまして不動産会社にも問い合わせましたが、確証を得ることは出来ませんでした。お役に立てず申し訳ございません。
こちらの手紙はそのままご返却いたしますので、ご査収くださいませ。
木奥美子
💐★コラムニストSの考察
『記憶』とは過去の出来事だ。
だが、人の記憶というものは一筋縄ではいかない。
覚えていたいと願っても忘れてしまったり、思い出したくもないと辟易しているのに、いつまでも忘れられなかったり。
固定的では無く変容するし、自分に都合のよい記憶を捏造することすらある。
人は『記憶』に頼って生きているにも関わらず、こんなにも曖昧で不確かなものなのだ。
そんな中で、鮮烈に残りやすい記憶というものがある。
それは、他人からやられた嫌な事だ。思いだす度腸が煮えくり返り、あるいは心臓を抉られるような感情に落とされる『記憶』。
やられた方は詳細に覚えているが、やった方も同じとは限らない。寧ろ軽く考え忘れていることが多い。
ここに齟齬が生じるのだ。
この手紙のやり取りにも如実に表れている。
差し出し人は己の過去を軽く考え、相手も簡単に水に流してくれると思っている。やった側のエゴ全開だ。
対する受取人は許す気は毛頭ない。本来なら反撃の狼煙を上げたいところだが、彼女は寧ろ関わりを拒否する方向に出たようだ。まるで、相手に感情を動かすことすら悍ましいとでも言うように。
嫌な記憶を忘れるためには新たな記憶で塗り替えるか、徹底的に距離を取り時間の助けを得て和らげていくか。
いくら科学が進歩し技術が開発されても、『負の記憶』の呪縛から逃れる術は未だ発見されていない。自在に御する日が来るかどうかは、未来に委ねるしかないようだ。
S
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