the episode

あんぶろうず

the episode / No.001

『いっ……痛い…』


とある会社の給茶室で

1人の20代の女性社員が、

上司からいじめを受けている。

どうやら、爪の中に針を刺されているようだ。


『この程度で痛いとか言っているようじゃ

話にならないよー。次はもっと太い針を

刺すんだからさ。アハハッ!』


痛がり、目には涙を浮かべている女性を笑いながら

針をグリグリと動かしている

上司の30代女性は楽しそうだ。


『じゃあいくよー。ほらっ!』


針の先端の太さが先ほどの1.5倍程度ある針を

上司は部下の女性の爪の中へと刺した。


『いっ!痛い!やめてください!!』


部下は大きな声でそう言った。

しかし、上司は構わず続け様に

別の爪の中に針を刺した。


『あぁ!!やめて!やめてください!!痛い!』


さすがにうるさかったのか上司は

部下の口を自身の手で塞いだ。

そしてすぐに手を離すと今度は首を絞めた。


苦しそうな顔をする部下を見て

上司は笑った。


このようないじめが、かれこれ 2ヶ月は続いている。

周りは見て見ぬふりをしている。

無理もない。

この上司の女性は副社長の娘なのだ。

下手に首を突っ込めば自分の身が危険になる。

そして、この会社は縦社会。

自分より上の立場の人間に

少しでも意見しようものなら、

即座に首が飛ぶ。


いじめはいけない。当たり前だ。

そんな事はわかってる。

でも結局 皆んな、自分の身が大事なんだ。

仕事がなければ生活ができない。

現状、この会社に人生が かかっているのだ。

自分がノーダメージなら

それで良しとするしかないんだよ。

正義なんてとうの昔に無くした。いや捨てた。

自分の為に

犠牲を出す事と蹴落とす事が人生なんだ。



上司も満足したのか、自分の部署へと

戻っていった。

部下は涙を拭いて手を洗い、

重い足取りで部署へと向かった。



今日の仕事が終了し、退社の時間になった。

もう22時を過ぎている。

さっさと家に帰って風呂に入り飯を食べ、寝よう。


社員証を機械にかざす。

ピッ という音が鳴ると同時に自動ドアがひらく。

そして建物の外へと出ると、

10mほど先に、

いじめを受けていた女性の姿が見えた。


その時、男の心と頭は よからぬ事を企んだ。


彼女の家はおろか、帰り道も知らない。

気づかれないよう後をつける。

しかし、角を曲がると彼女がこちらに振り向いた。

隠れようとしたが完全に姿を見られた。

どうしたものか。


せめてもの誤魔化しで携帯を取り出し、

画面を見ていると、彼女が小走りで近寄ってきた。


『あっ。やっぱり〇〇さん!お疲れ様です。』


彼女は声をかけてきた。


『……おぉ!〇〇か!お疲れ様。

奇遇だなぁ、帰りに会うなんて。』


焦りを隠すように挨拶と一言を返す。


『はじめてですよね?帰りに会うなんて。

〇〇さんの家もこっちの方向なんですか?』


『いや違うんだよ。明日休みだから

友達の家に行くんだ。』


男は嘘をついた。


『でもさ、その友達がさっき急に

泊めれなくなった!とか連絡がきてなぁ。

どうしようかって思っていたのよ。

今から歩いて帰るのも面倒だし、

この辺じゃホテルもないし、

そして何より、今 現金なくてさ笑』


男はまた嘘をついた。

彼女の家に入る為にだ。

もともと背後から襲う予定だったが

それが上手くいかない場合もある。

そのリスクを回避できる。


『そうなんですね!それは辛い笑

……もし〇〇さんが良ければですけど、

私の家に泊まりますか?

実は私、〇〇さんに相談したい事があって。』


彼女がそう言ったとき、

男は心の中で卑しい悪い笑みを浮かべた。

マジかよ、この女。というセリフと共に。


『いいの?!ありがとう!助かるよ。

相談はいくらでものるよ。』


男は社交辞令の笑顔を見せながら言った。


そこから5分 歩くと彼女の家に着いた。

8階建てのアパートの8階に住んでいるようだ。


とりあえず……といった具合で

彼女がシャワーをしにいった。

彼女が出た後、男もシャワーをした。

その時すでに男の心と体は興奮を始めていた。


男は体を拭き、服を着た。

ときたま、会社に泊まることがあるこの男は

常に着替えを持っている。

脱衣所の扉を開け、リビングへと向かう。


『サッパリしましたか?

好きなところに座ってくれて大丈夫ですからね。

あっ、明日はお休みだし、

せっかくなのでお酒でも飲みましょう!』


女性は男に対して優しく声を掛ける。

そんな優しさをよそに この男は

襲いかかるタイミングを見計らっている。


『ありがとう、お酒もらおうかな。

ところで相談って?』


酒。これはまたラッキーだ。

アルコールが入れば扱いが楽になる。

寝てくれれば1番良いが…

男はそんな事を考えた。

そして2人はビールを一口飲むと

女性は喋り始めた。


『○○さんは私がいじめを受けているのを

見た事ありますよね?

正直にどう思いますか?助けたいとか

思った事ありますか?』


女性はいじめに関して相談があるようだ。

まぁ、そうだろう。


『うん、それはもちろん。

でも俺、根性なしでさ。

どう助けたらいいかわからないし、

それに副社長の娘さんに楯突いたら

自分の身がさ……ね?

……本当にごめん。』


男は正直に答えた。


『やっぱり、○○さんもそうなんだ。』


女性は小声でそう言った。

早くも彼女のグラスは空になっていた。


『じゃあ、

○○さんは私を助けてくれないんですね。』


女性の声が少し震えている。

男は少し不穏な空気を感じた。


『本当にごめん。

でもさ!根本的な解決はできないかもだけど、

こうやって話を聞いたり、一緒に飲んだりとかは

できるよ。そしたら、心は多少なりとも

楽になるんじゃないかな?』


男は今かけるべき言葉がわからなかったが

なんとか自分なりに考え、吐き出した。

というか男はもう面倒になっていた。

早いところ事を済ませて、ずらかりたかった。


『いや。それって結局 助けてくれない、

そう言う事ですよね。

私、傷ついているのに。悲しいのに。辛いのに。

苦しいのに。寂しいのに。』


そう言うと女性はゆっくりと立ち上がった。

なにやらただならぬ雰囲気を感じた男は

自分も立ち上がった。


(コイツ。こう言うタイプかよ。

とっとと押し倒してしまうか。)


すると男は少し勢いをつけ女性の肩を掴み、

床へと押さえつけた。

しかし女性は反応しなかった。

早くも観念したのか?

まぁ、いい。男は女性の服を脱がした。

すると女性は口を開いた。


『○○さん。私に乱暴するのですか?

………覚悟、できています?』


(は?この状況で何言ってるんだ。)


こんな状態で、

力で敵わない相手を前に強気な女性に

男は苛立った。


『あぁ。ハナからできてるよ。

そうじゃなきゃしないよ、こんな事。』


男は答えた。


『ねぇ、○○さん。

どうせならベッドでしませんか?

本当に覚悟ができているかも確認したいですし。』


女性は意味深にそう言った。

男は不思議に思ったが、

女の雰囲気から 抵抗する可能性は低いと考え

押さえつけていた手を離し、

すぐに女性の右手首を掴んだ。


隣の寝室の扉を女性が開ける。

2人同時に部屋へと入り、女性が電気をつけた。


七畳ほどの部屋に

セミダブルのベッドだけが部屋の真ん中にあった。

男はベッドの位置を変に感じた。

そして、呻いているような声が聞こえる。

というか、掛け布団の下に人が確実にいる。

男は女を少し見た後、恐る恐る布団をめくった。

するとそこには口をテープで塞がれた

上司である副社長の娘がいた。

男は驚きの表情で女性の方を振り返った。


その瞬間、男は顎に強い衝撃と痛みを感じた。

それと同時に体に力が入らなくなった。

その場に倒れると、

視界が霞み、意識が朦朧としてきた。

そして女性が無表情で男の腕と足をロープで縛った。

女性の傍にはメリケンサックが転がっていた。


それからどれくらいしたか、

男はハッキリと意識を保つ事ができるようになると、

服と下着を全て脱がされた状態で

先ほど上司がいたベッドに

手と足を縛りつけられていた。


『おい。何する気だよ!早く外せ!!

殺すぞ!お前!!』


男は凄い剣幕で女性に言った。


女『やかましいですね。○○さん、今日は

私をレイプする為に後をつけて来たんですよね?』


男『だったらなんだよ。警察にでも言えば良いだろ。

でも俺はまだお前を犯していない。

だから俺を殴ったお前が犯罪者だ。』


女『あっ、私をつけていたことが

バレていた事に関しては

何とも思わないんですね?』


確かにそうだ。バレていないと思っていたが

気づかれていたのか。

だが、そんな事はどうでもいい。


男『んな事はもう良いだろ!!

結局何がしたいんだよ、お前!

それを先に言え!クソが!!』


女『こっわーーいw

○○さん、本気でキレてきたので、

じゃあ、副社長の娘のおバカさんに

やってもらいましょうか。』


女は手と足を縛られ、倒れ込んでいる上司を

縄を解いて立たせた。

表情をみるに、かなり恐怖しているようだ。


女『はい、じゃあまずは〜

服を全部脱ぎましょうか?』


上司はそう言われると

手を震わせながら服を脱いでいく。

少し躊躇ってから、下着を脱いだ。

男はこんな状況にも関わらず、

裸を見て若干の興奮をしていた。


女『いやらしい体ですねw

これで男性経験ゼロとか笑えますね。

……あれ?○○さん ちょっと勃ってません?w』


女が男へと近づく。


男『勃ってねぇよ!

こっち来んな!見んじゃねぇよ!!』


女『えー、これは勃ってるよw

しかし小さいですねw

…わかった!まだフルじゃないだけですよね?

じゃあ特別にフルにしてあげますよ、ほら!』


そう言うと女は男の性器を扱き始めた。


男『やめろ!触るなっ。……っ』


女『どーですか?気持ちいいですかー?

うわっ、さっきより硬くなってるのに

サイズ変わんないじゃんw』


男『やめろ!!』


女『はいはい。じゃあ粗チンも元気になった事だし。

おいアホ、これ咥えろよ。』


女は上司にそう言うと

上司を男の方へと促した。


上司は男の近くまでくると性器を見て

首を横にふった。


女『何してんだよ、早くやれよ。』


すると上司は小さな声で 無理です と言った。


女『あ、やらないんだぁ。そうか、そうか〜』


女はキッチンへとむかった。


男はふと、上司の体をよくよく見てみた。

所々赤く腫れていたり

数多くの小さな傷から

血が滲んでいるのが確認できた。


部屋に帰ってきた女の右手には

包丁が握られていた。

そして上司の腹に膝を強く打ちつける。

苦しさでうずくまる上司。

その上司の左手を女は掴んだ。

そして、床に上司の手のひらを強く押さえつけた。

上司は抵抗していたが女の力が凄まじいのか、

全く手を動かせていなかった。


女『いくよー』


女は一言 そう言うと、

包丁を振り上げた。


そして勢いよく上司の指めがけて振り下ろした。

何かを砕いたような、

硬い野菜を切ったような。そんな音が聞こえた。

そして女は男に

切断された4つの指を見せた。


女『私の言ったことには逆らわないでくださいね。

この様になりますから。』


上司は痛みから、のたうちまわり叫んでいる。

男は恐怖した。そしてこの時 自身の運命を察した。


女『うるさい、静かにしてくださいよ。』


女は冷たい視線を上司に向けながらそう言ったが、

指を4本も切られたのだ、

痛みを誤魔化すように喚かずにはいられないだろう。


女『……はぁ。もういいや。

このアホには人生を終わってもらいましょう。

○○さんもよく見ておいてくださいね。

……あなたも遅かれ早かれ殺しますから♡』


男にはもう、絶望しかなかった。

女の目は本気だった。

今さら、自分の愚かな行動を悔いた。


上司は壁にもたれながら

相変わらず痛みに喚いている。

そんな上司に女が歩み寄る。

男には女が死神に見えていた。


女『最後に何か言いたい事ありますか?

あっ、これから殺されるって分かった時って

どんな感覚なんですか?

やっぱり怖いですか?悲しいですか?

今まで自分がしてきた行為を悔いたりしてます?

誰かを傷つけたなら、それを謝罪したいとか

思います?ねぇ?それとも

怒りが込み上げたりしています?

なんで私がこんな目に!とか思ってます?

どうせ最後になるのですから

答えてくださいよ。』


女は上司に多少の怒りを見せながら問いかけた。


上司『すいませんでした!あなたを

傷つけた事、謝ります!何だってします!!

お金が欲しいのならいくらでも渡します!

地位だって!

誰にも今日の事は言わないから!

……だから…だから見逃してください…

これ以上はやめてください。お願いします。

……殺さないで……』


上司は泣きながらそう言った。

女は変わらず、怒りのこもった冷たい視線を

向けている。


女『……お金とか地位とかいらないよ。

見逃してほしいから、死にたくないから、

今あなたは謝罪しただけですよね。

あなたに初めてイジメをうけたとき、

私は言ったはずです。

覚悟できていますか?責任とれますか?って。

できていたなら今のこの状況を

受け入れられるはずです。

最初からあなたはそうでした。

人の気持ちを考える事はもちろん、

話もろくに聞いていませんでした。

正確には聴いていない。

わかりますよね?字が違うんですよ。

字が違えば聞こえは同じでも

意味はかなり違う。あなたには心がない。

そりゃ、恨まれますよ、憎まれますよ、

殺されるのも当たり前ですよ。自業自得です。』


話しながら女は上司の首に包丁の刃をあてがう。


上司『お願い!!やめて!!死にたくない!

殺さないで!!!』


口では抵抗できても体は動かない上司。

いつからこの女に捕らわれているかわからないが

もう体は恐怖に支配されているのだろう。

女はうるさかったのか

近くにあったタオルを

上司の口に無理やりねじ込んだ。


女『さようなら。』


女を持っている包丁を首元から離した。

そして上司の左胸にゆっくりと奥に刺していく。

上司はこもった叫び声をあげている。

だんだんと血が流れていく。

まだ、包丁は三分の一程度しか刺さっていない。

女はあえて男によく見えるようにしていた。

聞くにたえない何とも言えない音を静かにたてながら

包丁は刺されていっている。

女は表情一つ変えず、

ただまっすぐ上司の顔を見ている。


ようやく半分ほど包丁が刺さったところで

女は一度、包丁を引き抜いた。

そして、間髪入れず左胸に勢いよく刺した。


上司は最後の叫び声 を『ゔっ』と、一瞬あげた。

しばらく女は死んだ上司の顔を見つめていた。

男は震えながら目を瞑った。

こんな状況にも関わらず、

いやこんな状況だからこそなのか、

現実逃避を始めたのだ。



これは夢だ。


悪夢だ。


大丈夫。


次に目を開ければ自宅にいる。


そしてまたいつもの日常が始まる。


大丈夫だ、大丈夫……



しかし、女が何かをしている音が聞こえてくる。

薄目で女の方を見る。


クローゼットから何かを取り出した。


また、絶望と恐怖が込み上げる。


男は上司の方を見た。


人間はこんなにも血が流れるのか。


次は俺だ。


もうどうにもならない。


逃げられない。


助からない。


殺される殺される殺される殺される殺される


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ


死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない


女が男に近づいてくる。


先ほどクローゼットから出したのは

植木バサミだった。


女が男のすぐ横に立つ。


女『○○さん、あなたは良い人ですね。

いつも周りを気遣って、優しさを振り撒いて。

目立たないポジションの仕事でしたけど、

真剣に仕事に取り組んでいましたね。

縦社会な会社なのにも関わらず

上下 関係なく、あなたは好かれていました、

慕われていました。

あなたを好きと

言っていた女性社員もいましたよ。

良かったですね。』


女は淡々と話す。

男は何も言えなかった。

口の中は乾ききっている。

唇も震え歯がカタカタと静かに音を立てていた。

ただただ女の顔を見ることしかできなかった。


女『でもですね。

私はあなたみたいな人が1番嫌いです。

優しくて気遣いができる人、嫌いです。

誰にでも偽りの顔で接している

あなたを見ると辟易とします。

優しさなんて、気遣いなんて

根の腐った人間と、何も考えていないアホしか

持ってないですよ。

わかります?優しさなんていらないのですよ。

ましてやあなたはその優しさを

振り撒いていた。

本当に良い人というのは

優しさはありません。想いやりがあるのです。

そして、

その想いやりをしっかりと、自らの手で、

相手の手へと心へと直接分け与えるのです。

実際に目には見えませんが、

必ず相手の心に言葉や暖かさが残ります。

気遣いもいらないですね。

必要なのは心遣いです。

誰かの為に自分が損をしてでも、

傷を負ってでも、どんなに嫌いな人でも

その人の為に してあげる事が

生きていく上で大事なのですよ。

想いやり、心遣い。

あなたはそれが解っていないにも関わらず、

周りがアホなのを良いことに続けた。

でも気をつけてくださいね、バカはいるので。

アホは [考える] 事をしない、 [思う] だけ。

だから簡単なのです、騙すのが。

でもバカは中々騙されないです。

バカはバカなりに考えるからですよ。

この違いはわかりますよね?

あなたもそこそこのバカなのだから。

でもでも残念でした、

私はあなたより少しばかり賢いバカでした。

まぁ、こんな事言いながらも私は今

人を殺しました。ろくでもない人間ですよ。

どんな理由があれ人は殺してはいけない。

わかっています。でも殺したくなったり、

死にたくなったりする時だってあるのですよ。

一時の考えで行動をしてはいけない、

それもわかっています。

でもでも我慢できません。壊れてしまうから。

エゴかもしれません。

しかし無理です。これ以上は。

あの世で報いを受けようとも。

こんな汚い、醜い人間は生きるべきでは無い。』


女は話し終えると植木バサミを

男の性器に軽く挟む。

男は喉と全身に力を入れ叫ぼうとしたが

声は出なかった。

次の瞬間、男はとんでもない痛みに襲われた。

他のどんな痛みも比にならないほどの激痛。

脳が痛みを処理しきれず痺れている、揺れている。


女『これが無ければあなたは殺されはしなかった

……かもしれないですね。

下半身直結の脳みそを持った人間。

そんな人間もまた、

この世に生きるべきでは無い。

さようなら。』


女は次に男の首を植木バサミで挟んだ。

いよいよこの男もこの世を去ることとなる。

ハサミが首に少し食い込んだあたりで

男はようやく言葉を発することができた。


男『ぁあぁああ……やめてくれ…』


それが精一杯だった。

言葉を発してから2秒後、自分の首が切られる音を

わずかに聞いてすぐに男は首から大量の血を勢いよく

吐き出しながら死んだ。



返り血を浴びる女。

男から血が噴き出なくなると、

女はクローゼットへと向かい、

そこからロープと

父母と妹と自分が笑顔で写った1枚の写真を

取り出す。


それから女はベランダに出ると

柵にロープを固く結びつけた。

そして自分の首にロープをくくる。


柵の上に座る。

写真を見る。


『3人とも……ごめんね。

3人は天国にいるだろうから、

今より距離が遠くなっちゃうね。

また同じ家族に産まれたなら

その時はまた一緒に色々なことをしようね。

今までありがとうね。大好きだよ。』




翌朝、アパートの住人からの通報により事件が発覚。


捜査の結果、

女が事件の3日前

今回 殺害と自決に使う為の道具を

オンラインショップで購入していた事がわかった。

また、押入れから死後1週間程度経過している

圧縮袋に入れられた 女性の遺体を発見。

この女性は4日前から行方不明で捜索中であった。

遺体を調べた結果、女が殺害したと判明した。

女のパソコンのアクセス履歴から

殺害された女性は女と

自殺サイトで知り合った事がわかった。

おそらく人間を殺すにあたっての

練習をしたのではないかと考えられる。


また、女は遺書を残しており、

そこには会社で受けたイジメや暴力について、

また会社の脱税や違法取引についての事実も

書かれていた。

証拠音声の収録されたボイスレコーダーも

遺書の傍に置かれていた。


会社は真偽を問われたが、

金の力でマスコミやメディア、警察を沈黙させた。

そしてこの事件はテレビと新聞では三日間ほど、

週間誌では事件の起きた次の週でしか

取り扱わなかった。

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