第18話 ミュージックビデオの視聴 1
咲が俺たちの家に来て彩音と仲良くなった日から1ヶ月が経過し、『スノーフェアリー』のミュージックビデオがSNSにアップされる日となった。
「わくわくっ!」
「朝から浮かれてるなぁ」
「当たり前だよ!撮影した映像がどんなミュージックビデオになるか知らないんだから!」
社長からミュージックビデオが完成したことは聞いており、事前に試聴することもできたが、俺たちはファンのみんなとSNSにアップされるまで待つことにした。
「はやく12時にならないかなー!」
「あと2時間の辛抱だ。それよりミュージックビデオの告知はしたのか?」
「うんっ!『スノーフェアリー』のSNSと私のSNSで告知したよ!お兄ちゃんがメインで登場することもね!」
「へー、どんな感じで告知したんだ?」
「えーっと……こんな感じっ!」
俺は彩音のスマホを覗き込んで、告知内容を確認する。
そこには…
『明日の昼12時に新曲のミュージックビデオをアップします!今回の新曲は今度開催されるバスケットボール世界大会の応援ソングとなっており、ミュージックビデオもバスケットボールを取り入れてます!』
と書かれており、新曲のミュージックビデオを説明する内容が書かれていた。
「おぉ、今回は普通の文章だな。前回みたいに変なことを書いてなくて安心したよ」
前回とは俺が事務所に所属することとなった時のことで、俺が事務所に所属することになったことを彩音が自身のSNSで紹介していた。
その時、『実は私のお兄ちゃんって超イケメンで歌もダンスもできるハイスペックお兄ちゃんなんです!』とか言って俺の期待値をバカみたいに上げていた。
そのため、今回も同様のことをしていると思ったが、杞憂に終わったようだ。
そんなことを思い安心しながら彩音が投稿した文章をスクロールしていると『P.S.』と書かれた文字が見えた。
そこには…
『お兄ちゃんの鍛え上げられた肉体美が披露され、お兄ちゃんのカッコいい姿にメロメロ不可避っ!お兄ちゃんファンは必見だよ!』
と書かれていた。
「おい妹よ」
「なーにー?」
「どれだけハードル上げれば気が済むんだ?メロメロ不可避ってなんだよ?」
「メロメロになっちゃうってことだね。これでお兄ちゃんのファンが増えるよ!」
「いや、絶対回避可能だからメロメロ不可避って文を訂正してほしいんだが……」
「めっちゃ拡散されてるけど?」
「………さすがフォロワー数が300万人を超える彩音様だ。取り返しのつかないことをやってくれる」
「えへへ〜」
「褒めてねぇよ」
「あいたっ!」
何故か照れ始めた彩音の額にデコピンを喰らわせる。
「仕方ない。宣伝文章のことは諦めよう。それで宣伝した反応はどうなんだ?」
「バッチリだね。12時に絶対見ますってコメントしてる人多いよ」
その言葉通り、『12時に見ます』とのコメントがたくさん投稿されていた。
「あと、私たちの新曲よりお兄ちゃんを見たいって人も多いみたいだね」
「……どうやらそのようだな」
彩音の投稿により俺目当てで見たいと思った人は多いようで…
〈メロメロ不可避だって!妹の彩音ちゃんが言うくらいだから絶対メロメロにされちゃうよ!〉
〈直哉様の鍛え上げられた肉体美っ!絶対目に焼き付けるっ!〉
〈直哉様のパフォーマンス、すごく楽しみです!〉
〈もうすでに直哉様にメロメロな私はミュージックビデオを見たら昇天してしまいそうっ!〉
等々、メロメロ不可避を聞いて、すごく楽しみにしているようだ。
「私たちってアイドルだから視聴する人のほとんどが男性なんだ!でもお兄ちゃんのおかげで女性の方も視聴してくれるみたい!これは視聴回数がすごいことになりそうだよ!」
“わくわくっ!”といった様子でウキウキの彩音。
(想像以上にメロメロ不可避を楽しみにしてる人がいるんだけど。これ、大丈夫かなぁ)
そんなことを思いながら12時まで彩音とのんびり過ごす。
そしてミュージックビデオがアップされる12時となった。
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