第17話 上原咲の想い
〜鶴崎彩音視点〜
お兄ちゃんが美女を連れてきた。
それも菜々美ちゃんや紗奈ちゃんに負けないくらいの美女を。
(陰キャ姿のお兄ちゃんに構ってる時点で何らかの理由がある。例えば恋とか)
お兄ちゃんの話を聞いた時点で咲さんがお兄ちゃんに恋している可能性を考えた。
そのため、会ってお兄ちゃんに相応しい女の子か確認したいと思い、今回の機会を設けた。
「これで邪魔者はいなくなったね」
「直哉。アンタ妹から邪魔者呼ばわりされたわよ……」
そんなことを咲さんが呟いていたが、私はスルーして気になっていることを聞く。
「お兄ちゃんって高校ではどんな人だったんですか?」
「そうね。基本的に1人で大人しくしてたわ。休み時間は何かの本を読んだり寝たりしてね。それと授業は真面目に聞いてるフリをしてたわ。先生に名指しで当てられた時は大体答えられなかったから。あと……」
そう言って咲さんがお兄ちゃんのことを話し始める。
「他にもアイツは登校時間ギリギリに来るのが上手くてね。理由を聞いたら……」
「………」
(長いなぁ。お兄ちゃんのことをずっと話し続けてるよ)
妹の私でも知らなかったことをペラペラと話し始める咲さん。
お兄ちゃんのストーカーなのではないかとツッコミたいくらいだ。
「えーっと……じゃあ咲さんはお兄ちゃんのことをどう思ってますか?」
「えっ!ど、どうって……そ、そうね。すごく優しいと思うわ」
そう言って語り始める。
「アタシが悪い男たちから襲われた時は躊躇なく助けてくれて、アタシの身を1番に案じてくれたの。他にも……」
等々、お兄ちゃんの優しいところを存分に語ってくれる。
(めっちゃお兄ちゃんのことが好きだね、咲さん)
お兄ちゃんのことが好きなのかを調べようとしたが、聞かなくても分かってしまう。
(すごく楽しそうに話してるよ。しかも聞いてる限り、お兄ちゃんのルックスより内面に惹かれたみたいだ)
『お兄ちゃんのことをどう思ってますか?』という質問をしたら、大抵の人は『カッコイイ』と答えるはず。
だが咲さんは『優しい』と言った。
これだけで咲さんがメンクイではなく、お兄ちゃんの内面に惹かれて好きになったことを理解できる。
「というわけで、アタシは直哉のことを親友だと思ってるわ。連絡先を交換したのは今日だけど……」
最後の発言に『本当に親友なの?』と問い詰めたくなるが、その言葉は飲み込んで単刀直入に聞く。
「つまり咲さんはお兄ちゃんのことが大好きなんですね」
「っ!」
私の指摘に咲さんは顔を真っ赤にする。
「そっ、そうね。アタシは直哉のことが好きよ」
そして恥ずかしそうに照れながら言う。
「〜〜〜っ!咲さん可愛いっ!」
「きゃっ!」
そんな可愛すぎる咲さんを見て、思わず胸に飛び込んでしまう。
(あ、柔らかい)
すると私にはない立派なモノを感じ、つい豊満な巨乳に顔を埋めてしまう。
「あ、彩音さん!?そろそろ離れてくれないと……んんっ!」
なんか色っぽい声が聞こえたので、私はすぐに咲さんから離れる。
「ご、ごめんなさい!」
「い、いえ。ちょっとびっくりしただけよ」
初対面なのに巨乳に顔を埋めるのはやり過ぎたと思い反省する。
「こほんっ!と、とにかくアタシは直哉のことが好きよ。私が素直になれないせいで進展すらしなかったけどね。その証拠に連絡先の交換なんて今日したわ」
「それに関してはお兄ちゃんが悪いよ!なんで咲さんみたいな可愛い人の連絡先を聞かないの!しかも高校、大学で唯一の友達でしょ!?お兄ちゃんのヘタレ!」
「それに関しては何度も思ったわ。なんでずっと話しかけてるのに連絡先を聞いてこないのかって」
「うんうん!あとで私が怒っておくよ!」
「あ、いや、そこまでしなくても……」
そんな会話をしていると「終わったかー?」との声がリビングの外から聞こえてくる。
「入ってきていいよー!」
私が許可すると“ガチャっ”とドアを開けてお兄ちゃんが入ってくる。
額からは汗が滲み出てるので、スクワット500回をやってきたんだろう。
「ふぅ、久々にスクワット500回なんてやったわ。明日は筋肉痛だな」
と言いつつも、何故かスッキリしたような顔をしているお兄ちゃん。
そんなお兄ちゃんに私はビシッ!と言う。
「お兄ちゃん!正座!」
「……え?」
「はやく!」
「えぇ……俺また悪いことしたのかよ……」
とブツブツ言いながらも正座をするお兄ちゃん。
「こんな可愛い咲さんの連絡先を今まで聞かなかったってどーいうこと!?」
「えっ!だって女子に連絡先を聞くとか通報案件だろ?俺、捕まりたくなかったからな」
「……なんでお兄ちゃんってバカなんだろうなぁ」
「それ、本人の目の前で言わないでくれるか?結構傷つくから」
そんなことを言っているが、私はお兄ちゃんへの説教を続ける。
(ごめんね。紗奈ちゃん、菜々美ちゃん。私、咲さんのことも応援することにしたから)
そんなことを思いながら。
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