第15話 上原咲との大学生活 2
咲と連絡先を交換し、2人で大学内を歩く。
咲は彩音や紗奈、菜々美など、芸能界で活躍している美少女たちに負けないくらい可愛いので…
「なんで咲さんと陰キャが並んで歩いてんだよ」
「それよ。俺たちのマドンナである咲さんの弱みでも握ってんじゃねぇの?」
そんな会話が周囲から聞こえてくる。
「咲と歩くと毎回注目されるよなぁ。さすが1年生ながらミスコン1位を獲った咲だよ」
「そっ、そんなに褒めなくてもいいじゃない。あれは偶々よ。来年は分からないわ」
「そんなことないと思うけどなぁ……」
咲ほどの美少女は早々いないので、来年も1位を取る気がする。
「そんなことより直哉に聞きたいことがあるんだけど」
「ん?なんだ?」
「講義が終わった後時間ある?もしよかったらアタシ、彩音さんに会いたいんだけど」
「へ?それは良いけど……咲って彩音のファンなのか?」
「えぇ。言ってなかったけどアタシは『スノーフェアリー』のファンよ。妹とライブに行くくらい彩音さんと紗奈さんを応援してるわ」
「それは知らなかった」
咲とは高校の頃から色々な話をするが『スノーフェアリー』のファンというのは初めて聞いた。
「なら彩音に聞いてみるよ」
「ほんと!?」
「あぁ。咲には色々と助けてもらってるからな」
「ありがと!」
咲が“パーっと”嬉しそうな笑顔をみせる。
「ちょっと待ってろ」
俺は咲にそう言ってスマホを取り出す。
そして彩音に電話をかける。
『もしもしー』
『彩音?ちょっと相談があるんだが……』
そう前置きして用件を話す。
『ふむふむなるほど。咲さんって女の子が私のファンで、会いたいって言ってるんだ』
『あぁ。会えそうか?』
『私は問題ないよー。お兄ちゃんの友達なら私も会ってみたいし。それに気になることもあるからね』
『気になること?』
『うん。お兄ちゃんが女の子と友達になるって珍しいからどんな人かなーって』
『そういえば菜々美と紗奈を除いたら……というか、今の俺には菜々美と紗奈、咲の3人しか友達いないわ』
陰キャを極めてる外見なので高校では咲しか友達がおらず、大学でも咲しか友達がいない。
『俺、交友関係狭いなぁ。全く困ってないけど』
『つまり高校、大学生活は咲さんがいるだけで十分だったってことだよね?』
『そうなるな。実際、咲には色々と助けてもらってるから』
『ふーん。なるほどねぇ。陰キャ姿のお兄ちゃんを助けてくれる女の子かぁ』
そう言って沈黙が訪れる。
『彩音?』
『ううん。なんでもないよ。17時には帰り着くと思うからその時間に来て』
『ありがとう』
そう言って電話を切る。
「彩音が会ってくれるって。だから講義が終わったら俺の家に行こうか」
「な、直哉の家に行っていいの?」
「あぁ。17時には家に帰りついてるって。だから一緒に帰ろうか」
「それはいいけど講義が終わるの12時よ。17時まで何するのよ」
「そうだな……あっ!それなら!」
咲に問われ考えた俺は、とあることを思い付く。
「彩音が帰って来るまで俺の家で過ごさないか?俺の両親は仕事でいないから彩音が帰って来るまで2人きりになってしまうが……」
さすがに両親や妹のいない家に誘うのはマズイので、咲に確認をとる。
「えっ、誰もいないの?」
「あぁ。だから俺と2人きりが嫌ならファミレスとかで時間を潰すが……」
「行くわ!」
咲が食い気味で返事をする。
「彩音さんが帰って来るまで直哉の家で時間を潰すことにするわ!」
「お、おぅ。なら講義が終わったら正門前に集合な」
「えぇ。楽しみにしてるわ」
とのことで講義後は咲と一緒に帰ることとなった。
講義が終わり、俺の家に到着する。
「ここが直哉の家ね」
「あぁ。リビングにトロフィーや賞状がたくさんあるだけのごく普通の家だ」
「そんな家をごく普通の家と言わないわよ」
ボソッと咲がツッコミを入れる。
その通りだと指摘されて思ったため、「コホンっ!」と咳払いをして咲を家に招く。
そしてリビングへ咲を通すと…
「すごいわね。想像の何倍も賞状やトロフィーが飾られてるわ」
紗奈をリビングに招いた時と同様、咲もリビングに入った瞬間、数多くのトロフィーたちに目を奪われた。
そんな咲を微笑ましく思いながらお茶を準備し咲に渡す。
「ありがとう。それで……ふ、2人きりで何するのよ」
先程まで数多くのトロフィーたちにキラキラさせていた咲が、突然緊張した面持ちで聞いてくる。
心なしか頬が赤くなっているような気もする。
「ア、アタシは直哉なら何をされてもいいわよ」
そして恥ずかしそうに上目遣いで言う。
「……?」
(「何をしてもいい」じゃなくて「何をされてもいい」って言われたんだが……)
咲の言葉に少し引っかかりを覚えたが気にすることなく俺は咲を家に招いた理由を告げる。
「彩音が帰ってくるまでの時間なんだが……じゃんっ!『スノーフェアリー』のライブDVDを一緒に見ようぜ!」
俺は綺麗に並べられた『スノーフェアリー』のライブDVDを取り出しながら咲に告げる。
その瞬間、「はぁ……」と何故か咲がため息をこぼした。
「……分かってたわ。2人きりになってもラブコメ漫画みたいなイベントは起きないってことくらい。大学で今日着ている下着をチェックしたアタシがバカみたいね」
何やらブツブツ言いながら肩を落とす咲だった。
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