第101話 移住第一号と神への祈り
晴れてヌルッと男爵になってしまった俺だが、マスタールームに行くとベッキーさんもヒッキーちゃんも俺の出世を祝ってくれたのだが、やはりというか、何というか…しっかりメールも届いていた。
開封すると、
『陞爵お祝いポイント5000ポイントと、
叙勲お祝いポイント2500ポイントが付与されました。
追伸、レベルアップも頑張ってくださいね。』
と…
俺はメインモニターの前に座りながら、
『どこで見てるのか…というか、勲章は半分の価値なんだね…確かに、出世や婚約よりはパンチの弱い人生イベントだな…』
などと変な所で納得してしまった。
有難いお祝いポイントが手に入り、その日の夜ホークスさんや親方さん達と相談をして、集合住宅の既に完成している部屋へとジャルダン村からレンタル中の村役場から引っ越しをして、村役場を元の場所に返したのちに手に入れたポイントを使い新たに壁生成で町役場と学校と託児施設の建物のガワを建てて後はジーグ準男爵にお任せして村に戻る事に決めた。
学校も託児所もジャルダン村のマイホームの様に簡単な外枠のみで中の間仕切りなどは大工の親方達が木材で作ってくれるらしいのでポイントがかなり節約出来そうだ。
そして親方達は難民の中にかなりの数の大工や木工職人がまだ居るらしいとの情報を掴んでおり、手本となる建物が出来たら難民の大工さんにこの現場を任せてジャルダン村へと全員で引っ越したいとの希望を話してくれた。
俺的には村での仕事はまだあるし無条件で勲章分のボーナスは村の新しい建物に全ベットしても構わないので親方達に支払う工賃も有るから、
「勿論大歓迎です。
ジーグ様達が寝泊まり出来る様になったら後は任せて村に来て下さい」
と俺が親方達にいうとホークスさんが、
「いつまでもジャルダン村を放っておけませんし、ロッソさんと来年のパーティーの料理を決めて頂かないといけませんのでキース様は先にお戻り下さい…私が夏ごろまでここに留まります」
と、言ってくれた。
ちなみにサンチョさんのお勉強は暫くホークスさんが見てくれて、俺が村に戻ればベッキーさんの投影クリスタル等でリモート授業や回収アンド配達機能で赤ペン先生をすれば大丈夫だろう。
何と言っても俺はサンチョさんには期待しているのだ。
勿論のこと町の学校の学長としてもだがナナムルの町でのお使い係としても元商人の知識で良い商品や珍しい商品を購入して敷地内回収で町から村に届けてくれる任務も担ってくれるのだ。
そして翌日から急ピッチで集合住宅の建設が始まり町には井戸も確保出来てトイレも追加で作り、あとは生ゴミ等を入れた小樽のトラップにスライム君が入居するのを待っている状態である。
風呂も今は小屋が無い状態だが大型の物が二ヶ所完成していて男湯と女湯が使用可能な状態である。
小屋がないので、もっぱら仕事終わりの鍛冶師のオッサンや大工さん達がひとっ風呂浴びて最期の馬車で帰るぐらいであり、工事現場の女性陣から早く小屋を作れと言われているのと、毎日働きにくる日雇いさんが、
「もう、屋根は有るからこっちに住まわせてくれませんか?」
と、少し温かくなって来たので野宿でも構わないので町に住みたがっている。
移住も進めてそろそろ本格的に料理人を雇い建設現場の職員食堂も…と、いくらやっても次から次へやりたい事が出てくるが、いよいよ明日、集合住宅も10室程度の部屋が寝泊まり出来る状態になっているので、村役場で寝泊まりしているチームや仮の町役場の機能を一旦そちらの部屋にお引っ越ししてもらい、村役場の建物をジャルダン村へ戻した後に、新たにポイントを使い町役場などの施設を壁生成を使い外側だけ作ってから俺は村へと帰る予定である。
『残った集合住宅の部屋は難民の職人さんに順番に入ってもらえば毎日のナナムルの街からの移動の手間もなくなり工事がはかどるだろう…』
などと考えながら、俺はその夜はマスタールームで村役場等の設計をしているのだが、正直言って村のマイホームよりはかなり簡単な作りにすれば約4000ポイントで村役場も託児所と学校も建てる事が出来る。
まぁ、若干豆腐建築なのは許して欲しい…
そして全て建てた後に3000程残るポイントで、上級ガーディアンゴーレムのリーダーと部下の下級ガーディアンゴーレムを二体と、偵察と畑の虫魔物退治要員の小型ガーディアンチームも追加で配備して町の安全をガーディアンズとベッキーさんに任せる事にする。
ヒッキーちゃんと罠は共有すれば良いし新しいガーディアン達は最初はイチロー達に持ち場を交代してもらい、ジャルダン村でガルさんとニルさんにまだ残っているヘルタイガーの骨を使い装備を作って貰ってから正式に赴任すれば良い。
本当ならばグリフォンの件で滅茶苦茶にしてしまった狩場の代わりにマイホームの範囲拡大に使いたかったが…こっちの町でまたベッキーさんが狙われてもいけないからこればっかりは仕方ない。
しかし、俺としても早く帰って村の皆の為に『狩り場が壊滅している問題』を解決する方法を考えねばならない…などと夜遅くまでマスタールームで作業をしていた。
そして翌朝、工事を始める前にこの集合住宅に初めての入居者の引っ越しが始まり、ジーグ様が畑作業や養殖場の整備をしている日雇いの方々を集めて、
「皆さん、今からジャルダン男爵と精霊のベッキー様が力を合わせて奇跡の御技を起こしますから集まって下さい」
と、言い出した。
俺が、
「ジーグ様、そんなに見られた恥ずかしいですよ…ワザワザ注目を集めなくても…」
というとジーグ様は、
「ワザワザ見てもらうんですよ。
ただ貴族が開いた町というよりは、難民を助ける為に精霊が力を貸してくれた町のほうがパンチが有るでしょ…
噂が広まれば他の町でスラムの住人になる難民が、まっすぐこの町を目指してくれるはずです。
キース男爵の見せ場ですので目一杯お願いしますよ。」
と言ってくる。
もう、諦め半分で昨晩既に完成していた図面を使い、俺はそれはそれは神々しい演出で、投影クリスタルには純白のドレスを着たベッキーさんが映り俺とベッキーさんの二人で祈りを捧げると木造の村役場が元の場所へと消えて、マスタールームで作業しているヒッキーちゃんのスイッチオンで30分とかからずに石で出来た四角い町役場が地面から湧き出る様に生成されて、いつしか町作りに来た日雇いの皆さんも祈りを捧げている。
そして、全員が祈りを捧げているという儀式の様な異様な空気に包まれたまま予定された建物を作り終え、それこそ新たな宗教が始まりそうな勢いだったので俺は思わず、
「神に感謝を!」
と付け足しておいた。
ベッキーさんを御神体とした精霊信仰などが始まったら、たぶん俺を監視している神様からお叱りを受けるかもしれないのだ。
それだけは避けなければならない…
『お祝いポイントに助けられてますので、どうか見捨てないで下さい、神様…』
と、心の底からの祈りを捧げる俺だった。
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