第二十八話

 日本から南極にある無人時に家のプライベートジェットで向かった。何故船じゃないのか最初は疑問だったが、現地に着いてその理由が分かった。俺の目の前にはかつての青々とした森ではなく、人が溢れたリゾート地だった。


 更にニコニコした沙耶香が立っており、激しい日差しが差す中、俺は頭を抱えていた。爺さんは何のために俺を呼んだんだ?現地で説明すると言っていたがメッチャ不安だ。


 「久しぶりね!!隆貴。」

 「・・・沙耶香。お前はどうしてここにいる?」

 「えぇ〜。決まってるでしょ〜。隆貴との新婚旅行‼︎」


 艶のある声でそう言う沙耶香に面倒という気持ちが膨れ上がった。まさか本当に息抜きのために呼ばれたのか。思わず大きな溜め息を吐いた。


 「その反応酷くない‼︎一応、私は隆貴のお嫁さんですよ‼︎」

 「その件は有耶無耶になって無かった事にされた筈だが?」

 「良いじゃない、私と結婚したって‼︎お爺さんもお婆さんも認めてるんだからさ!!」


 ここまで沙耶香がここまで駄々をこねるのは珍しいな。まぁ。少しくらいは付き合ってやるか。


 「結婚諸々は却下だが、数日くらいは付き合ってやるよ。さっさと行くぞ。」

 「本当⁉︎ありがとう隆貴‼︎愛してる‼︎」

 「はいはい。」


 沙耶香をあしらって俺は建物の中に入った。中は広々としており、たくさんの使用人が待機していた。別荘としてこの建物は使われているようだ。中を案内され荷物を整理した後、沙耶香と観光客のいるビーチに行った。プライベートビーチもあるのだが、沙耶香が寂しいからという理由で通常のビーチに行った。


 「お〜い。隆貴も一緒に泳ごうよ‼︎」


 沙耶香は黒いビキニ姿で海を泳いだり、使用人達を呼んで一緒に遊んでいた。流石はモデルと言うべきか、周りから男女関係なく凄く見られている。俺はパラソルの下でサングラスをかけて軽く寝ていた。やっぱゲームのやり過ぎは良くないな。


 「分かった。軽く体を動かさないとな。一つ言っとくが、遊んだりはしないからな。」

 「大丈夫‼︎隆貴と一緒にいるだけで私は楽しいから。本気で泳いでもいいよー。」

 「なら、遠慮なく泳ぐとするか。」


 ちなみに沙耶香は明るく、面倒見の良い性格のおかげか使用人達と仲が良い。俺はサングラスを外し、海に走って飛び込んだ。そして、すぐに体勢を直して本気で泳いだ。


 『きゃーー‼︎(うわぁーー‼︎)』


 飛び込んだ際の波と本気で泳いだ勢いで、近くにいた奴らが波に巻き込まれた。家の使用人はその波から沙耶香を波から守り、沙耶香はぽかーんと口を開けて唖然としていた。


 俺は気づけば奥側で待機していた警備船に辿り着いていた。幸い、家の関係者が乗っていたので変に騒がれたりはしなかった。そのまま船で少し休み、泳いで元の場所に戻った。


 「もー‼︎いくらなんでもやり過ぎ‼︎少しくらい周りに気を使いなよ‼︎」

 「悪い悪い。泳ぐのは久しぶりではしゃいでたんだよ。・・・ん?」


 怒っている沙耶香に適当に謝ると、何か変な気配を感じた。気持ち悪い気配で思わず眉を顰めた。すると、沙耶香は俺の顔を覗き込んできた。


 「どうしたの?」

 「いや、気持ち悪い気配がしただけだ。」

 「え!!大丈夫なの?それ。」

 「ん〜。どうだろうな。」


 その後も、沙耶香の遊びや買い物に付き合わされたりした。良い息抜きはなったと思う。それを二日くらい続けた。そして、夜にそこら辺を沙耶香とぶらぶらしていると、周りが少し騒がしくなっていた。


 「隆貴。なんか騒がしくない?特に奥の方。」

 「ああ。あれは・・・ガキか?」


 気配や音を探ると小さい女のガキが複数の男に追いかけられているようだった。堂々と何をしているのやら。道の邪魔にもなっているので、俺はそいつらに一言入れることにした。


 俺達のいる方に桃色の髪のガキが来たので、そのガキに足を引っ掛けて転ばせ、男供には軽い殺気を向けた。沙耶香は転んだガキに慌てて寄り添った。


 「大の大人がガキ一人追いかけ回して、恥ずかしくねぇのかよ。邪魔だから失せろ。」

 「ぐっ、お、俺達が誰か分かってんのか‼︎」

 「はぁ?テメェらみたいなガキ一人捕まえられない間抜けを知る訳ねぇだろ。いいから失せろ。殺すぞ。」


 最後の言葉を少し強めの殺気を込めて言うと男供は青ざめて情けない声を上げて逃げ去っていった。ガキの方を見るとガキは痛そうに頭を押さえていた。


 「隆貴、さっきのは流石に酷くない‼︎この子が可哀想だよ。」

 「う〜。痛い。」


 沙耶香は俺を責めながらガキを宥めた。少ししてガキが落ち着いたので事情を聞こうとガキと顔を合わせると、ガキは驚いて俺に抱きついた。


 「助けてお父さん‼︎」

 「・・・は?」


 その言葉に俺は唖然とし言葉を失い、沙耶香は見たことないほどに動揺していた。


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 作者です。おやおや?主人公の隠し子でしょうか?やっと、多少は書き溜めすることが出来ました。それでも、足りない気がしますけど。

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