第二十七話
俺は今、宿に戻りシアと竜人の女と部屋に防音結界を貼って夜月を問い詰めていた。
「おい、夜月。お前、コイツに何したんだ?さっさと答えろ。」
『しゅっ、主人よ。落ち着くのだ〜‼︎』
黒葬姫を振り回しているとシアが呆れたように俺を見ていた。
「ご主人様はあれをご存知でないのですか?」
「・・・あれ?」
シアは驚いていたが、軽く咳払いをして竜人の女に起きた事について話した。
「あれは種族進化の際に起きる現象です。多分ですが、この方が夜月様の眷族になった影響かと。」
シアも説明を興味深く聞いていると、さっきまで黙っていた女は急に口を開いた。
「あ、あの‼︎あの方の名前は夜月様というのですか⁈」
「え、えぇ。そうですよ。」
女はシアの答えを感激に満ち溢れた顔で聞いていた。
「女。お前は夜月から何されたんだ?」
「恐れ多くも、夜月様の眷族にさせてもらいました‼︎ロスト様のことは聞いております‼︎夜月様の伴侶だとか‼︎」
「・・・伴侶は違うぞ。」
夜月の奴、コイツに変なことを吹き込みやがったな。その後も女に事情を聞いた。女は世界最大の火山地帯、バルギア火山にある竜人の里出身なのだそうだ。生まれた時から髪は黒く、竜人の里では黒髪は不吉の象徴で、殺されはしなかったが里での扱いはかなり酷かったらしい。それで、18歳の成人を迎えた時に厄介払いで奴隷商に売られて、ここに辿り着いたそうだ。名も生まれた時からなかったんだとか。
「夜月様のおかげで私は龍人に進化することが出来ました。ですので、どのような事でも命じて構いません。生涯の忠誠を誓います。」
女は頭を地面につけ、俺に土下座しながら忠誠を誓った。なんとも大袈裟な奴だ。
「ならば、俺と奴隷契約を結んでもらう。それと今からお前の名前は
「名前まで⁉︎ありがとうございます、主様‼︎」
俺は感激している火澄に大袈裟だと呆れながら奴隷契約の準備を始めた。奴隷契約は、ランクDの調教師と商人のジョブレベルをMAXにしたら転職できるようになった奴隷商人のジョブで獲得したスキルだ。
シア曰く、このスキルを発動するには魔術で特殊な付与がされた紙に契約者同士の血を混ぜたインクで契約内容を書き、それに互いが明確な同意をすれば契約が完了するそうだ。
紙はシアに用意してもらい、火澄と奴隷契約をした。内容は俺に絶対服従というものだけだ。奴隷契約のスキルはランクが上がるごとに契約内容を具体的にできるようなのだが、俺はランクがDなので簡単な内容しか書けなかった。
奴隷契約は無事に終わり、契約の証として火澄の首に龍を模した模様が浮かんだ。この模様は奴隷であるという証らしい。模様は人によって変わるそうだ。そうして、旅の仲間に火澄が加わった。
首輪をどうするか聞いたが、このままにしておいた方が良いそうだ。なんでも、火澄の着けている首輪には精神系のスキル耐性の効果があり、又誰かの奴隷と示すことで面倒が多少は減るということだ。服装はシアがメイド服を推したので、メイド服になった。尚、メイド服はサイズが火澄に合わなかったのでシアが調整した。その時、シアは火澄のことを羨ましそうに見ていた。
翌日は、火澄を冒険者登録させ武器を買いに行った。火澄は武器を使ったことがないらしいので、使えそうな武器を一通り買って迷宮で試してみることになった。
「はー!!」
火澄は思いの外武器の扱いが上手かった。大体の武器をちょっとしたアドバイスだけで使いこなし、動きはかなり様になっている。かなり戦闘センスが高い。器用なのか槍や剣、斧などの武器では細かい動きが出来ていたし、単純な力もかなりあった。
そのおかげで火澄はたかが数日で五十階層に俺達の助けなく辿り着いた。これには俺とシアはかなり驚き、夜月は自慢気にしていた。夜月が言うには龍人のステータスの他に夜月の眷族になった影響で成長率が三倍近くなっているらしい。
そして、俺は前からやっていた特訓を本格的にすることにした。理由は、教え甲斐のある火澄と魔術や魔法の有用性に改めて気づいたからだ。シアの魔術理論は凄まじく、ハッキリ言って何言ってんのかよく分からん。俺は特別頭が良い訳ではないから当然なのだが。
俺のレベルは二ヶ月かけて、やっと80を超えた。シアと火澄のレベルも上がっているのでそろそろ聖王国に向かおうと考えていた。だが、大型アップデートで2週間、ゲームにログイン出来なくなくなった。幸いアップデート中はゲーム内時間はかなり遅くなるらしい。そして、俺はアップデート初日に爺さんに呼ばれていた。
「おー。来たか、隆貴。」
「何の用だよ爺さん。俺は鈍った体を鍛え直すのに忙しいんだが。」
「まあそう言うな。今回はお前に行ってもらいたい場所があっての。」
んー?なんか怪しいな。一応話しだけでも聞くか。
「で、どこに行けばいいんだよ。」
「昔お前が修行とか言って一ヶ月サバイバルした無人島があったじゃろ。そこにある施設を建てたからワシの代わりに行って欲しいんじゃよ。」
「は?あれは俺の島だぞ。いくら爺さん名義で買ったとはいえ勝手に何か建てるなよ‼︎ん?・・・そういえば、そこに置きっぱなしの物があるな。ついでに回収するべきか。・・・分かった行って来るわ。」
「む?置きっぱなしじゃと?」
俺の言葉に反応した爺さんに問い詰められる前に、俺は爺さんから離れてすぐに出発した。
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作者です。少しの間投稿が止まるかもしれません。長くても一週間で再開すると思います。
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