第六話

 「んぁ、・・・・・ァ?」


 目が覚めると、俺が寝泊まりしていた家のベットで寝ていた。その隣にアスカが疲れたように寝ていた。少し朦朧とした意識の中、


 「婆さん‼︎いるか‼︎」


 出来るだけ大声で婆さん呼んだ。すると


 「そんな大声で呼ばなくたって聞こえてるよ。お疲れ。かれこれ、丸三日寝とったんだよ。あんた。」


 婆さんが俺を労いながら部屋に入ってきた。


 「丸三日もか‼︎・・・少し舐めてたな、あのゴブリンのこと。」


 ゴブリンの話題を出すと、婆さんは真剣な雰囲気で、


 「あんたが倒したあのゴブリン、ただのゴブリンじゃなかったよ。死体を鑑定したが、聞いたことのないゴブリンだったよ。」

 「キングと比べてどうだ。キングより強いのか?あのゴブリン。」


 婆さんは憂鬱そうに、


 「たぶんだが、キングより20くらいレベルは上だと思うよ。死体の癖に凄いオーラを纏っていたからね。名称は、ゴブリン英雄ヒーロー、恐らくユニーク個体だろうね。良く倒してくれたよ。報酬は期待してくれていいよ。」


 俺はそれを聞いて一人納得した。


 「だからあんなに成長速度が馬鹿げてたのか。まぁ、生まれたばかりの奴だから自慢出来ないが。」


 婆さんはおかしそうに言った。


 「そんなことが言えるのはあんただけだよ。村には、いつまで残るつもりだい?」

 「後二、三週間くらいは、いるつもりだ。まだやりたい事が残ってるからな。・・・少し外の空気を吸ってくる。」


 そう言って、俺は家を出た。村の奴等からは、よくやったと揉みくちゃにされた。悪い気はしなかった。本当にゲームなのか疑いたくなる。そして、俺は三週間くらい村に滞在した。たまにログアウトしたが、一日の殆どはゲームの中で過ごした。そんな中俺は、


 「わ、私も旅に同行させてください!」


旅に出るということで、村を出て行く日にアスカに旅に連れてって欲しいと懇願されていた。


 「アスカ、俺はただ旅をしている訳じゃ「迷惑なのは分かってます‼︎でも、ここで言わないと、もうチャンスがないと思ったから‼︎」・・・・・。」


 俺はアスカの言葉に暫し黙った。アスカを連れて行くことはこれがゲームじゃなくたって、俺は絶対しない。アスカは足手纏いだ。だから旅の途中で必ず死ぬだろう。それでも、その思いを踏みにじりたくないと思う自分がいる。


  (クソ、何だよ‼︎いつもなら直ぐに突き放してるだろ‼︎‼︎)


 昔にあった事を思い出しながら内心喚き散らしながら俺は言った。


 「正直に言う。アスカ、お前は足手纏いだ。旅の途中で必ずお前は死ぬ。いくら俺でも、死ぬと分かっていて旅に連れて行くことは出来ない。」


 はっきり事実を言うとアスカは酷く泣きそうな顔をした。


 「でも、また会うことがあった時、お前が強くなっていたら考えてやらなくもない。」

 「えっ・・・・・。」


 俺の言葉にアスカは、驚いたように眼を見開いた。


 「じゃあな。」


 そして、俺は逃げるようにその場を後にした。その後、婆さんからゴブリン討伐の報酬を受け取り、俺は村を去った。報酬は、婆さんが昔使っていたアイテムなどの婆さんの財産だった。道中、誰もいない事を確認した後、道の端っこに寄った。


 「さて、これで先行プレイ期間も終わりか。」


 普通ならログアウトするには、最低限安全が確保されていないといけない。それに操作キャラはその場に残るのだが、先行プレイ期間最終日は例外でログアウトはどこでもでき、操作キャラも消える。正式リリースした際に引き継ぎも出来るらしい。


 「短い期間だったが、意外と楽しかったな。それじゃ、ログアウト」


———————————————————


 ゲームからログアウトした俺は家の修練場で、木刀を振っていた。そこに突然、一人の女が戸を蹴り壊して入ってきた。


 「隆貴‼︎私が会いに来てあげたわよ‼︎」

 「・・・沙耶香か。」


 入ってきたのは、俺の中学の時からの友達の秋原沙耶香あきばらさやかだった。彼女は俺の数少ない友達だからなのか、昔から爺さんに気に入られていた。なので、家の備品を多少壊しても咎められる事はない。


 「隆貴さぁ、日本に帰って来てたなら連絡しなさいよぉ!!お爺さんが教えてくれるまで私、あんたが帰って来てるの知らなかったんだから‼︎」


 沙耶香は昔と変わらず暑苦しい奴だ。


 「お前は暑苦しいから嫌だったんだよ。さっさと帰れよ。」


 そう言うと不満そうに


 「酷い‼︎私帰らない‼︎というか隆貴の部屋で泊まる。お爺さんからは許可は貰ってるからね。」

 「はぁ‼︎俺は許可してねえぞ‼︎ふざけんな‼︎」


 納得いかないと怒っていると沙耶香は、俺を挑発するように言った。


 「いいの〜。こんなに良い女と一緒に寝れるチャンスなのにさぁ。なんなら私の体、好きにしていいよ。」


 確かに沙耶香は金髪でスタイルは良いし、出るところは出ている。客観的に見たら美人の部類に入るだろうが、俺の好みから少し外れている。俺は、面倒だと思いながら沙耶香をあしらった。


 「興味ない。俺の部屋に入って来んなよ。叩き出すからな。」


 そして、俺はさっさと部屋に戻って寝た。尚、沙耶香が入って来れないように寝る前に簡単なバリケードを作っておいた。


——————————————————

 作者です。リアル側でのヒロイン沙耶香ちゃんが登場です。アスカちゃんはこの後どうなったんでしょうね?再登場は遅くなると思いますが、忘れないでください。

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