第1章 エーベの街の少女

第4話 「遭遇」

リリアナとエリオットはさっそくエーベの街の道具屋に向かった。


ここは流通の要となっているから様々な商品が置いてある。

例えば薬の種類の豊富さ、傷薬でも付属の効果が違う。あるものは麻痺を回復させたり、あるものは眠りの魔法を解く効果を持っていたり。



エリオットにとって豊富な商品の棚を見たりするのも初めてだから何がどんなものなのかわからずにいる。



「この道具屋は何十年もいろんな冒険者のことをサポートしてきた老舗のお店なんだ!

初級の魔法書とかも置いてあるよ!」


「そうなんだ!僕も一つや二つ魔法を覚えたいから何か買ってみようかな!リリアナはどんな魔法が向いてると思う?」



「んー...

うん!エリオットは回復や補助の魔法がいいかも!そしたらこの本とかオススメかも!」



リリアナが差し出して来たのは『回復補助の魔法大辞典、これで君も優秀なサポーターに!』という本だった。

これには敵の能力低下や妨害、他にも味方の能力向上や状態異常の回復など様々な魔法が書かれている。




「私は攻撃中心の魔法しか使えないからエリオットが覚えてくれると嬉しいな!」


「うん、わかった!時間を作って一つずつ覚えてみるよ!」



こうしてエリオットは紹介してくれた本を購入した。もちろん薬やたいまつや食器などの必需品も合わせて。



次に2人は今日泊まる宿をとることにした。

そこそこお金は持ってるとはいえ長旅になるからほどほどの宿で大丈夫だろう。

チェックインをして部屋を確認すると中はシンプルだった。一般的な宿屋の部屋だけどそれはまた風情がある。




「宿屋はこんな感じなんだね!」


「そそ!意外と広いよね!

私は隣の部屋にいるからもし何かあったら来て!夜にはご飯食べに行こ!」


「わかった!じゃまた夜に!」



たまにはお互いに1人になる時間は必要になるからちょうどよかったとエリオットは思っていた。

そしてエリオットはキャンパスを取り出して窓から見える街の風景を描いていく。


穏やかな日差しにつつまれているエーベの街を、時間が忘れるくらいに集中して描いていく。




一方リリアナは荷物を置いて宿の外に出ていた。新しい肌着や下着を購入したいと思い服屋に立ち寄っていた。リリアナも思春期の女の子として多少なりとも身だしなみにも気をつけていく。


「どれを買おうかな」


そんなことをつぶやきながら商品を見ていくとふと目についたものがあった。

紫色の下着がある。さすがに派手すぎると思ったのと同時にもし着たらどうなんだろうと期待はある。


しばらくリリアナはどうするかを悩んでいた。



      ーーーーーー


夜になり、エリオットと合流したリリアナは2人でご飯を食べにいくことに。

ご飯はこの街ではパブで食べれる。冒険者が酒を飲みご機嫌で騒ぎまくっている。そんな中子供2人は非常にアウェーな空間ではある。



「エリオットは何にするのー?」


「僕はこれにしよっかな、ペペロンチーノって料理!リリアナはお肉だよね?」



「そう!この骨付き肉が食欲を増していくんだよね!」



各々食べたいものを選んで注文していく。

すると2人の横から大声で声をかけて来た人物がいた。



「お、2人もここでメシを食いに来たのか?」

ガリス平原で助けたマイクだった。



「あ、マイクさん!」


「今日はここでご飯を食べようかって決めてたんです!」


「そかそか!それじゃ相席失礼するぜ!」



こうして3人で夜ご飯を食べることになった。

注文していた品も届き、マイクが乾杯の音頭をとった。


「昨日は2人に助けられたからな。

今日はおれの奢りだ!どんどん飲み食いしてくれ!じゃ乾杯!」


「「かんぱーい!」」


マイクは酒をガーっと飲み、気持ちよくなっている。2人は未成年だからジュースに留まっている。



「そういえばマイクさんは今日は何してたんですか?」


「え、あぁ。

ちょっとした商談を持ちかけてたんだ。おかげでちょっと懐が温まったからな。2人には助けてもらったから何かお礼をと思ってな。」



「マイクさんは商人としても活動してたんですね!」


「まぁ冒険者は多いしな、その冒険者相手に商売していくのも悪くないなとは思ってね。


そういや2人はエーベの街には何日滞在するつもりなんだ?」



「1週間は街の周りとか探索したり情報を聞いたりしていって、それからまた東に行こうかなって考えてます!」



2人はここでクエストを受けてちょっとした小遣い稼ぎをしたり、街の人と触れ合いながら面白い話や情報を聞こうと考えていた。

するとマイクは2人に面白い提案をする。



「もしよかったらしばらくの間同行させて欲しいんだ。なに、タダとは言わない。

飯も作るし商談の分け前も渡すつもりだ。だから『サイミン城下町』に着くまでは一緒に旅するのはどうだ」


『サイミン城下町』はエーベの町を東に向かい、『リアナ街』という港町から出ている船で行ける。

大陸の1/3の経済を担うサイミン王国の城下町はこの世界最大の街と言っても過言ではない。



「マイクさんが来てくれるのは嬉しいんですけど、どうして僕たちと一緒に行きたいんですか?」


エリオットは少し不安な顔をして聞いてみた。確かに昨日今日会ったばかりでまだ何も知らない人と一緒に冒険をするのは13歳の男の子には不安になるのは無理もない。

すかさずマイクも答えていく。



「まぁこれも何かしらの縁ってやつかな。

あの時2人に助けてもらわなかったらきっとおれは死んでた。だから2人の旅で何かしら恩返しができればと思ってね。


それにもう一つは実はそのサイミン王国についてなんだ。

どうやら今の国王がまもなく逝去すると噂で聞いたんだ。実はおれはそのサイミン王国で料理人をしていた、そして王女とは幼馴染でね。心配なんだ。」



少し酔っ払っているから呂律が悪くなっているが酔っ払っているからこそ本音をぶちまけられるというもの。

2人にはマイクが嘘をついているようには見えなかった。



「うーん...どうしようかリリアナ?」


「いいじゃん一緒に旅する仲間が増えるのは大歓迎だよ!これからよろしくお願いしますマイクさん!」


「まぁ堅苦しいのは無しだ。仲間に敬語はいらないだろ、改めて2人ともしばらくの間よろしくな!」



どういう意図で仲間になろうとしたかはわからないがマイクが新しく旅に加わった。

これから先の3人にどのような冒険が待っているのか。




       〜続く〜

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る