第2話 

「りく、起きて。」

出来るだけ優しい声で息子を起こそうとするも起きる気配などない。体をゆすろうが布団を剥ごうが羨ましいくらい全く起きない。


「私なんか薬飲んでも眠れないのに…。」


ポツリと言葉を発した時、ようやく息子が起きてくれた。

時間は7時。

7時40分までには通学班の集合場所までに行かなければいけない。有り難いことに集合場所は目と鼻の先なのだが…。

発達障がいグレーな息子のりくは、とてつもないのんびり屋。放っておいたらご飯に1時間半もかかったこともあった。着替えだって時間がかかる。

ため息をつきながら息子をせかす。


「トイレ行って、そしたらご飯食べて…。」


その間に洗濯物を干そうかなと思っていると、トイレから出てきた息子が

「お母さん…。ごめんなさい。」

と、言ってきた。

トイレの中を見ると息子が出したであろう大量の尿が色んなところにこぼれていた。


「パジャマ濡れてないならご飯食べなさい。後はお母さんが掃除しとくから…。」



どうせトイレの掃除しなきゃだったし。


分かってる。


わざとじゃない。


でも、



苛々する。


小さい子じゃあるまいし。


何歳になったら、ちゃんとオシッコ出来るのよ!

本当にむかつく!


ひろこは、トイレ掃除をしながらそんなことを思っていた。


そして、


「子どもなんて欲しくなかったのに…。」


思わず、声に出していた。


いや、出さずにはいられなかったのだ。

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毒親ですが何か? @rikutomuri1117

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