学年選抜編Ⅴ
「今年の代表って卯月琴だったよな?」
「そうですが・・・・何か?」
彼女は不満げに頬を膨らませている。
「他の女と会ってたんだ、しかも私が知らない」
「一応先生の生徒ですよ、女なんて呼び方はあまり」
「・・・・」
やはり不満の視線が彼を見つめている。
そこに透はさらに近づき耳元でささやいた。
「この間の件ですが」
その言葉を聞いてささやかれている教師は体を一瞬びくつかせた。
「この選抜戦が終わった後にでもいかがですか」
だんだんと顔が赤く染まっていく。
「そうか、覚えていてくれたのか」
「はい」
「そ、それよりここは流石に他の教員の目もあるからあまり怪しまれる行動はしない方がいいぞ」
「そうですね、では明日にうかがいますね」
「わ、わかったからその耳元で呟くのは辞めてくれ。体がムズムズしてしょうがない」
「・・・・」
「さすがに何か反応してもらえないと・・・・」
彼から逸らしていた目を戻すとそこに透はいなかった。
ドキドキさせられて放置されたことに全てを通り越して彼女の口からため息だけが溢れた。
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ステージであるハイビルの立ち並ぶ街中では常に轟音が鳴り響いている。
「もう一回です」
その中で二人の敵に囲まれた永原は雫に習った通りにドラゴンを作り出して大量の刃を空から降らせた。
「きゃあああああああ」
二人の叫び声だけが聞こえダメージカウンターの色が一瞬で消え去った。
「そろそろ時間のはずですし建物の中で少し休みましょうか」
独り言を呟く彼女の近くで人に足音がした。
「誰ですか!」
足音の方には真森雪がいた。
「雪でしたか、これは手強そうです。ですが出会ってしまった以上は、戦わないというのはあまりにも他の参加者の方に失礼ですのでっ」
言葉を発する美織をみるなり魔法を使って急接近した。
とりあえず今は透さんに教わった防御魔法を展開して・・・・。
だが展開直後にガラスの割れる音に似た音がなった。
目の前の出来事に驚いて永原は声が出なかった。
半球状の防御魔法に当たった彼女の手がそれを貫通した光景だった。
バリアの向こう側の手が青白く発光し、その直後に半球状のバリアないが一瞬で目を開けていられないほどの光で満たされた。
永原は目を瞑ったが間に合わず目が眩んだ。
何も見えない数秒の間に彼女が感じたのは手になんらかの拘束具をつけられる感触と音だけだった。
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