学年選抜編Ⅰ
「あの・・・・大丈夫ですか?」
「え?」
「先ほどからどこか遠いところ?を、見ているので」
「ちょっとね・・・・」
卯月琴と話してから変な雫を気遣い、しばらくの間黙ったままで永原は彼女の隣にいた。
放課後の二人だけの教室は静かで涼しい風が窓から入りカーテンを揺らしている。
あのあと透は雫たちを置いてどこかに行ってしまった。
「雫、一緒に選抜に向けて魔法を練習しましょう。まだ魔法を使いはいじめてから日が浅い私が練習というのもおかしいかもしれませんが」
「そうね、今はとりあえず前に進むために力をつけるしかないわね」
「はい」
「よーし、じゃあ早速実技上にいきましょ」
「そうですね」
二人は教室を出た。
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透は建物と建物との壁でできた裏路地を歩いていた。
建物の切り目でできた裏路地の角裏に人の気配を感じて彼は足を早めた。
足音を立てないように歩いているようだが透の耳にはその微かな音でさえ聞こえていた。
追っ手を振り切るために角を曲がるとすぐに魔法を発動させた。
透の後ろに瞬時に周囲の建物の壁と似た壁が出現した。
壁の裏側で息を殺して透は待った。
しばらくして、壁の向こう側で聞こえていた足音が遠ざかり聞こえないことを確認して再び歩き始め少しの間デバイスの画面に表示されたメールに目を向けていた。
黒の車で待っています。
S.M
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裏路地を抜けて人通りの少ない通りに出た。
透はそのまま近くに停められた黒い一般車へと向かう。
その途中で他の裏路地から走って出てきた幼年が彼の目の前で転んだ。
「大丈夫か?」
そう言って地面に顔からおもいっきり突っ込んだ幼年にかけ寄り体を起こした。
「ありがとうお兄ちゃん」
「大丈夫か?怪我は?」
見るとおでこが少し切れて頬の辺りまで血が垂れていた。
「待ってろ、今魔法で・・・・」
「別にいいさ、大丈夫だから」
幼年が傷口の部分に触れると垂れた血が逆流して彼の体内に戻っていき傷口が塞がった。
目の前の得体の知れない子供から後方に飛んで透は離れた。
「そんなに怖い目をしないでよ、別に僕は君と戦いたいわけじゃない」
「お前は何者なんだ?・・・・」
「心優しい情報提供者ってことでどうかな?」
幼年が指を鳴らすと道に止まっていた例の黒い車が霞むように消えた。
「俺に届いた水島さんからの連絡もお前が出したのか?」
「そうだよ。でもそんなことはどうでもいいんだよ僕はただ君のことが欲しいだけだから」
その言葉を聞いた直後に透から多量の敵対心を秘めたUQ粒子の波が放出された。
「別に力ずくでどうにかしようとか思ってる訳じゃないよ、それにさっきも言ったけど今日は情報を私に来ただけだから」
幼年は咲を浮かべて言った。だが透にはそれが不気味には感じられなかった。
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