水は上から下に流れる
そんでもって人は高いところから落ちたら大体死ぬ。
それが重力って奴。
髪の毛はただのタンパク質。人間なんてただのタンパク質の塊。死んだら自然に還る。ただの肥料。
夜遅くに着いたパーキングエリアで少し休もう、って事になって、兄貴がコーヒー奢ってくれて、人気の無い休憩所で2人で資料広げて、ざっくり言えば儀式をやって穴を土で埋めれば良いんだろ、って兄貴は吐き捨てた。誰でも思いつく当たり前すぎる事。家を建てるときにもそういうのやるじゃん、俺はやった、なら井戸を閉める時もそれでいいんだろ、って兄貴はぶつぶつと言ってた。
田んぼのある地域は水が無いと話にならない。
排水の技術なんかも多分田んぼを維持するために先人の知恵で積み重ねられて来た。
暗渠排水。こないだ教えてもらった暗渠というシステム、ここにも出てきた。
地面の下、知らずに流れている水。
地下水、下水道、暗渠。
我々は、水の上に立って生きてる。
あの家の中庭にある井戸は地下水?を汲み上げてる。足掛ける部分があるらしくて下に降りようと思えば降りられるんだよね。
閉じる前に1度降りてみようと思ってる、ってボソッと言ったら、兄貴は「お前なら言うと思ってたよ」と目を伏せた。そのつもりで一応ロープとか用意して来てる、っていわれて、流石兄弟だなって思った。わかってんじゃん。
おじさんが投げ入れた缶ビールは回収しといた方が良いとおもうし、もしかしたら他にも井戸に入れちゃいけないものがあそこに残ってる可能性がある。
アヤネはずっと怒ってるんだと思う。
「あと、私こないだ髪の毛勝手に持ち帰って来ててさ」
そう言ったら兄貴は流石に「バカかよ」ってちょっと怒った。わかるよ。父さんの日記に挟まってた奴はもう住職に渡して供養してもらったのに、娘の私がまた持ち出してるのは流石に意味わからんよね。
でもあの時りゅうが着替えるの待ってる間にさ、忘れ物無いか確認するついでに仏壇を見たら一束残ってたんだよ。和紙に包まれたそれが。
なんでだろうね、突然それが欲しくなっちゃったんだよね。
あの髪にはなんかの魔力がある、のかもしれない。
明日 は、いや、もう日付的には今日か、神社の人が先ず来てくれる事になってる。それで駄目なら寺の住職。ただあの人がどれくらい役に立つかは知らんけどな。
車の中で少し寝てから出発しよう、って、2人でスマホのアラーム合わせて設定して目を閉じた。コーヒー飲んでるのに眠くて寝てしまった。そうだ、今日の薬飲み忘れてた。でも一回位なら多分大丈夫。
和歌山に行った日からクソみたいな悪夢を何度もみてる。
アヤネと思われる着物着た女の子がうちの居間でずーっとウルトラの事を撫でてる。
散歩の時間だからこっちに貸して、って何度言ってもアヤネはウルトラを離してはくれない。ウルトラは怯えてる。
アヤネは怖い顔して私をずーっと見てる。
でも悪夢を見るからと言って特に眠りが浅い自覚もないし、夜中に何度も目覚めるような事も滅多に無いし、結果的に体はそんなに辛くない。
ただちょっと不愉快なだけ。
むしろ眠い、ずっと言ってるけど眠い。
でもこれは薬の副作用の可能性もあるような気がしてきて、やっぱり呪いなんて気の所為だとも思う。
早朝、兄貴と朝飯とコーヒーを流し込んだ後に車を発車させた。
そろそろ和歌山に差し掛かるか、というところで助手席の兄貴のスマホが鳴って、妹の乗るはずだった朝早い飛行機が機体トラブルで飛べなくなって、急遽羽田から品川に移動して新幹線に乗る事にした、和歌山に着くのは予定よりかなり遅くなるかも、って連絡が来た。
これも想定内っちゃ想定内。
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