タカハシさんに会ってきました

 タカハシさんから「ところでお昼ご飯はどうされますか」って朝イチで連絡があったから手土産は崎陽軒の弁当にしました。全額自腹やぞ、確実に美味いもん買うに決まってんだろ。

 あと弁護士さんも着いてきてくれた。土曜は雑務消化のために事務所にいることも多くて、これくらいなら仕事のうちだからって。良い人だね。櫻井翔に似てるから櫻井さんて呼ぶね。


 遺言書はタカハシさんが預かって、家の金庫に仕舞ってた。ちゃんと封筒に封印がしてあって、タカハシさんが勝手に開いたような形跡は無かった。櫻井さんにも確認して貰った。

 なんでこないだ掃除の時に遺言書の事話してくれなかったんですか、って聞いたら、父が「自分に何かあったら長男か長女に連絡して欲しいが、49日までは黙っていて欲しい」って勿体ぶったことを言ってたんだってさ。


 父は部屋に家族写真を飾ってて、タカハシさんにこれが長男、これが上の娘、これが下の娘、って全部説明してて、兄貴の電話番号と私の電話番号、念の為に我が家の家電の番号を書いたメモまで渡していたらしい。

 去年の夏、妹の子供が1歳になった記念に写真館で家族全員揃って撮ったんだよな。父の発案。

 兄貴の奥さんと子供、妹の旦那さんと子供、父と母、私、全員揃って総勢9人の家族写真。

 兄貴の奥さんも妹の旦那さんも良い人だけど多分ド変人で、二つ返事で「行きます!」って言ってめっちゃおめかしして来てくれたよ。私は子どもの代わりに飼い犬を抱っこしたよ。可愛いんやぞ。ちなみに父の遺影はその時の写真を引き伸ばして貰ったんだぜ。写真館にデータ残ってて良かった。皆面倒でもたまには写真撮っておけよ。


 櫻井さんが封筒を片手に「今私の立ち会いの元開封してしまいますか?それとも49日の時まで待ちますか?もし今開けるなら電話で良いので妹さんに許可を取って頂きたいのですが」って兄貴と私の顔を交互に見ながら言った。

 父の遺骨は今兄貴の家にあって、49日の時期に、5月半ばの土曜だったかな?妹も立ち会わせて納骨する予定でいたんだよね。相模原の方にある霊園の集合墓地?合同墓みたいなやつ。永代供養の。

 これは遺言書とか関係なく、母と離婚する前から「墓は維持がめんどくさいからそういうところで良いんだよなあ」って父がよく言ってて、母もそういうところで良いって同意してて、私が神奈川と東京辺りで幾つか目星つけて「どうする?」って話してたんだよ。離婚で頓挫してたけど、その中のひとつがすんなり申し込めた。父が通帳とか保険の書類とかをまとめてたファイルに1枚だけ残してたパンフレットの所。場所は兄貴の家と妹の家と私の家の丁度中間地点で、安くてお手軽なところだよ。犬の散歩のついでに行けそうなとこ。

 ごめんね、タカハシさんの家での話は長くなるから続きはまた後で。ちょっと風呂入って来るわ。ねむい。

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