レンカクside.『お前様』
レンカク視点に替わります。
時間の戻りはなく『ep2.偽物と呼ばれた末裔でも……』のアレクシスが気を失った後の出来事です。
――――――――――
■後神暦 2649年 / ?の月 / ?の日 ?m ??:??
――???
「ん……むぅ…………」
天井……? 宿では……ないな。
体を起こして部屋を見回す、やはり違う。
「確か街道でアレクを狙う
そうじゃ、奴らの毒で倒れんじゃ。
とすると、アレクが此処まで運んでくれたのか。
……!!?
「アレクっ!? アレクシス!! いないのか!!?」
大声をあげると勢いよく部屋の戸が開く。
見るとアレクではなく、褐色の女がプルプルと震えておる……
「レンちゃん……? レンちゃ~~ん!!」
「ふがっ……!!」
飛びついてきたアリアの胸にすっぽりと顔が埋もれる。
「ちょっとアリィ! レンちゃんが死んじゃうよ!!」
「あ、ごめん……」
「むがっ……ごほっ!! はぁ……ふぅ…………」
続いて入ってきたオルヴィムのお陰で命拾いしたわぃ……
「うむ、それよりも何があった? アレクはどこじゃ?」
「隣の部屋で寝てるよ。えっと、順を追って話すね」
ワエは気を失ってから2日寝ていたそうだ。
二人はその間に起きたことを話してくれた。
……と言っても、アレクが此処へ運んでくれた後、オルヴィムはすぐに部屋を出て、戻ったときには既にワエの顔色は良かったらしい。
「代わりにアレクくんが起きないんだぁ~、揺すっても鼻に指突っ込んでもダメ」
「アリィ……そんなことしたの……? アレクが起きたら謝んなよ?」
そうしてアレクが寝ている部屋へ連れて行ってもらう。
眉間にシワを寄せて眠るアレクを見て少しだけホッとした。
「すまんが、外してくれんか?」
「「うん」」
二人が出た後、寝具に腰をかけてアレクの眉間を指で撫でる。
「カカ……険しい顔しおって。必死にワエを助けてくれたのであろう?」
夢を見たんじゃ、天地もわからん暗闇で、突然現れた『碧い眼の女』に連れられて光の元に出ることができた、そんな夢。
そこには跪いて叫ぶお前さんがいた……そう、今の寝顔みたいな険しい顔じゃ。
「話さなければならんかのぅ……」
此処で助けられるまでのワエの姿は狐人族ではなく、恐らく今の姿じゃ。
つまり、アレクはきっとワエに向けられた街の者の目を、感情を、知ったはず。
世界に拒絶された三つの忌避……その一つ、『
人々が本能に従うように無意識に、畏れ、忌む、呪われた存在。
「なぁアレク……ワエには
己の長く尖った耳を触る。
「知って尚、笑ってくれるか? 一緒に酒を呑んでくれるか?」
あぁ、完全に袋小路じゃ。
アレクに嫌われたくない、打ち明けるのが怖い。
しかし、もう離れることは考えられない。
――認めよう、ワエはアレクに焦がれている。だから……
「頼む、少しだけ、ワエに時間をくれ。
先の孤独に耐える覚悟ができるまで。
そして、打ち明ける恐怖を払う勇気を持てるまで……」
崩れた布団をかけなおし、アレクの髪を触る。
「カカカ……今回はさらさらじゃな」
春……アレクと初めて呑み交わしたときは、こんな気持ちになるなんて思いもしなかった。
しかし、あのときに触れた髪の感触は今でも覚えておるぞ。
相変わらず険しい顔で眠るアレクを見ていると、胸が熱くなる。
熱はうなじから首を伝い頬へ、そして額へと上がり、ワエから正気を奪っていく。
狂ったワケじゃない、ただ抑えが利かない。
気がつけば、己の髪がアレクにかからないよう、片手で押さえ、唇を重ねていた。
…
……
………
「ハッ!? や、やってしまった…………
カカ……カカカ……ま、まぁ、眠っておるし、今のは”のーかん”、と言うやつじゃ……!」
って、なにを言っておるんじゃワエは!! 莫迦か!?
これでは無理やりしたのも同義ではないか!! 莫迦なのか!?
……こ、このことは墓場まで持っていく。
「…………」
しかし、いつかワエが打ち明けて、もしお前さんが受け入れてくれたら……その時は仕切り直しをさせてくれ。
「早く起きてくれよ、お前様」
【眠るアレクシス イメージ】
https://kakuyomu.jp/users/kinkuma03/news/16818093081250874772
かごのぼっち様より、素敵なイラストを頂きました!!
https://kakuyomu.jp/users/kinkuma03/news/16818093081496828589
ありがとうございます!
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