花咲く時期はいつごろか?

ささらなみ

第1話

これから始まる物語。

ある女性が文字を愛して文字に恋して綴る言葉から始まるのは恋か幻か?




大石まどか 25歳。

文字を操る仕事に携わり、早3年が経とうとしていた。

まどかは、文字にただならぬ熱い思いがある。それはもはや『恋』のようなものだ。


文字には温度も音も存在しないはずである。しかし、まどかには文字に『温度』も『音』も存在すると考えているのである。

その熱い思いから今の仕事を選んだ。まどかにとって転職であった。


『文字を大切にできない』人は 人をも大切にできない


が座右の銘であるまどかは仕事とは別に密かに楽しんでいるものがあった。


それは匿名で日本のどこかに住んでいる誰かもわからない人とトークができるアプリを使用して文字というツールを楽しんでいた。


「今宵は、誰と話そうかな?」


まどかは仕事で疲れていてもこの些細な誰かとのやりとりを楽しみにしているのである。


そんな今宵のお相手は?

さあどんな人でしょうか?


女性?男性?

楽しく話せたら性別なんて関係ない


『はじめまして。こんばんは』

今宵の相手が決まったようである。


28歳 男性。


『はじめまして。よろしくお願いします』

と送り、楽しい会話は1日だけでは終わらず毎日翌る日も続いていた。


仕事の話、昔の甘酸っぱい恋の話…

会話はテンポよく、言葉はどんどん綴られていく。



まどかの文字も走る。

まどかの心も踊る。


『言葉を綴るって楽しい。会話を紡ぐって幸せ』


とまどかは思っていた。


ある日、

「君のこと、好きになっちゃいそうだな」


と彼からの突然の言葉。

しかし、まどかは一向に驚かない。


というのもまどかはそこそこの美貌を持ち合わせているので、まどかの中では『ありふれた』言葉の一つであった。


なのでまどかは

「人を想う気持ちや好きになるのは自由だから」

と余裕さえ見せていた。



今までのようであったのならば…。






その後も彼との会話はテンポよく続いていた。

ポンポンと言葉を互いが綴り会話を紡ぐ。



まどかにとってとても楽しい日々が続いた

あの日あの時、あの時間までは…


彼から突然、

「君をどんなに想っても、君は僕の手の中に入らない。だからもう連絡はしない。さようなら」


楽しく会話を紡いでいたまどかにとっては青天の霹靂である。


『え?私、振られたの?』


そうなのである。

まどかは勝手に恋焦がれられて、勝手に振られたのである。


今までになかった展開に少々ついていけないまどか。


それもそうであろう


『好きになるのは自由だが、勝手に振ってもいいとは誰も言っていない。』


言葉に温度があると思っているまどかにとっては0度にも満たない温度に感じられた

その言葉に携帯を握りしめたまま唖然とする。


まどかは見事に『勝手に』失恋したのである。


まさにお見事!

あっぱれである。

言葉を大切にしているまどかが文字のやりとりだけで勝手に好きになられて勝手に振られたのだ。


今回初めて経験した失恋の味はいかに?


これから、まどかの文字からの恋の行く末は?

同じ熱量で文字を愛し、文字から想いを重ね合える人は現れるのか?


はてさて?


初めて『勝手に』失恋をしたまどかはこの先に訪れるであろう本当の恋のために


今日も日本のどこかの誰かへと文字を綴るのである。


またその話の続きはいつかまた。




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