RESERVED

染よだか

RESERVED

 あっそうだ聞いてください、ほんと最悪なんですよ。今年の誕生日は日曜で、まあもちろん仕事なんですけど、一番最後の指名客が元彼で「終わったらごはん行こう」って誘ってきたんです。二ヶ月ちょっと付き合ったけどクリスマス前には別れたのに、三月の元カノの誕生日に勝手に予約入れて、一体どういう神経してんでしょうね。そこからの一ヶ月はとにかく憂鬱で、正直こんなに楽しみじゃない誕生日は初めてです。別れるときだってかなりめんどうだったのに、職場まで押しかけてくるのほんと勘弁してほしい。でもプロになって八年目だし、お客さんとして来るからにはちゃんと仕事したくって……。

「いやそれは警察案件でしょ」と佐々木さんは言った。「お店の人に相談した? 言いにくいだろうけど言った方がいいと思うよ。もうお客さんになっちゃうわけだし」

「あんまりオオゴトにはしたくないなぁ」

「そりゃそうだろうけど」

 でもうっすら勘づいてるんじゃないかな。だってお店はそこまで広くないし、今日は予約も少ない。さっきまで隣でカットを受けていたお客さんもお会計を済ませたみたいだし、それにほら、佐々木さんって声大きいから。今の店気に入ってたのになぁ。また辞めるしかないのかもしれない、とわたしは思う。

 美容師の仕事は幸いにも適性があったようで、仕事内容についてはおおむね満足している。真面目にやれば技術はついてくるし、中には合わない人もたまにいるけど、基本的にはよくしてくれる人ばかりだ。佐々木さんだってそう、彼女はこの店で働きだしてから最初に指名してくれたお客さんで、こうしてカットさせてもらうのも四回目になる。

「で、いつなんだっけ誕生日」

「それが来週で」

「……十七日か。よし空いてる」

 そのときちょうど仕上げのブローの最中で、ドライヤーの音がうるさかった。だから聞き間違いかと思ったんだけど、佐々木さんはスケジュールアプリを立ち上げていて、その日に予定を入れているところだった。

「晩ごはんの誘い断っといて。あたし、ぽっぽちゃんのこと予約する」


 佐々木さんがわたしのことをぽっぽちゃんと呼ぶのはわたしの苗字が絵鳩だからで、インスタのアカウント名をぽっぽにしていたらいつの間にかそう呼ばれるようになった。ポケモンが元ネタだって佐々木さんは知ってるんだろうか。あんまりゲームとかはやらなそうなタイプだ。まとまりのいいワンレンボブがよく似合うハンサムな顔立ちで、赤いリップと大ぶりのピアスが様になった。いつもダークトーンの服を着ていて、でもグレージュのセットアップをマニッシュに着こなしている日もあり、なんか大人の女性って感じがする。いつかインナーカラー入れさせてくれないかな〜と狙っている。ハイカラーも絶対似合うし、思い切って真っ赤に染めるのもいい。

 わたしを予約ってどういう意味だろう。そのときはよく分からないままにしていたことがあとになって追いついてくるなんてことはよくあり、その日の夜、わたしはお風呂に入りながら考えた。結局なんて返したんだっけ? 「予約してくれるんですか? うれしい〜」と笑って、でもすぐに「じゃあ仕上がり確認お願いしまーす」と後ろで二面鏡を開いて見せた気がする。

 それでてっきり話を流した気でいたから、佐々木さんからインスタにDMが来ていたのにはかなり驚いた。

「肉か魚どっちがいい?」 

 佐々木さんは行きつけなのか調べてくれたのか、美容室からわりと近い焼肉屋と和食居酒屋のURLをそれぞれ貼ってくれていた。方向性は違うものの、どちらも薄暗い店内をモダンな間接照明がぼんやりと照らしていて……おしゃれな人が選ぶお店ってやっぱりおしゃれなんだなぁ。

「晩ごはん連れてってくれるんですか?」わたしは訊いた。

「そのつもり。嫌だった?」

「とんでもない。でも元彼がなんて言うか」

「友だちに祝ってもらうことになったから行けない、あと連絡はお店通してください〜でブロックだよそんなの」

 そんなもんか? でも元彼とはいえお客さんだしなぁと思う。ここで冷たくあしらってあとから変なレビューでも書かれたら、それこそ職場に迷惑がかかる。

 なんでもネットで調べられる便利な時代だ。佐々木さんだってきっと、おしゃれなお店を探すためにインスタの記事やGoogleマップのレビューを参考にしたんだろう。事実この焼肉屋はレビュー数312件で評価は4.3、味の評判もよく、いい感じの店だった。大きな黒いプレートときめ細かな赤い肉のコントラストがきれいで、なにを食べようか考えながら写真を眺めるのも楽しい。でもそんな店にすら低評価のレビューはあり、店主の態度が悪いとか提供に時間がかかるとか手厳しいことが書かれていて、件数こそ少ないものの全体の足を引っ張っていた。全体の数に対してはほんの数件だし、新しいものでも一年以上前だから、大体の人は気にしないだろう。わたしだってそう。でもそれが自分一人だけに対しての言葉だったら?

 わたしは耐えられなかった。もう絶対に、職場にはよけいな迷惑をかけたくない。

 少し考えてから、「焼肉がいいです」とだけ送った。

「了解、お店終わるの何時くらい?」

「二十時くらいでも大丈夫ですか?」

「もちろん。食べたいやつ選んどいてね」

 リアクションでハートをつけて返事の代わりにした。その指で今度は緑のアイコンをタップし、元彼に送るメッセージを考える。最後に届いたLINEは三日前の「なんか欲しいものあるー?」で、とりあえず未読無視していた。その前は一週間前の「今電話できる?」で、やっぱり未読無視していた。なんでめげないんだろう。

「来週の件だけど、友だちに祝ってもらうことになったからごはんは行けないやーごめんね!」

 一息に送ってすぐに寝てやろうと思ったけど、その後すぐにスマホが振動した。画面上部に見たくない名前と共に通話要請のポップアップが表示される。あーあと思う。

 こういうときの正解がいつも分からない。分からないまま流されて、時間が経ってからようやく思考と感情が追いつき、やっぱ違ったかもなどと思う。気づくのはいつも遅くなってからだ。それを分かっててこの人は通話をしたがるんだろうか、わたしに十分な思考の時間を与えないために。

 べつに理解されるほど長く付き合った覚えはない。わたしたちは本当に最後まで分かり合えなかった。彼は疲れているときでも会いたいと思うことが愛だと主張し、わたしは疲れているときは休みたいと思った。一刻も早く眠りたい。そしてそれを適切な言葉で伝えようと努力することすら億劫だった。疲れてるって言ってんのにどうして機嫌をとってあげなきゃいけないんだろう。彼はしょっちゅう店の近くで待ち構え、わたしを家まで送りたがった。彼の自宅から店まではほとんど一時間かかる。そこまでのことを求めてなかった。大体、仕事終わりに彼の施しに見合うような笑顔を返せるとは思わないでほしい。別段うれしくないので喜べなかった。彼はそれを愛がないからだと不満がり、そうなるとことが収まるまで三時間はかかった。

「もう寝るから。おやすみなさい」

 それだけ送り、あとは通知をサイレントに切り替えた。胸に手を置き、大丈夫、と言い聞かせる。大丈夫。きっと間違いではない。これが一番の正解ではなかったとしても。


 ところでわたしの本名は絵鳩美園といって、珍しい苗字のためか昔からハトちゃんと呼ばれることが多かった。だからアプリの名前は美園からとろうと思い、ユーザー名はsonoで登録した。彼がわたしのことをそのちゃんと呼ぶのはそのなごりだ。

 アプリというのはマッチングアプリのことで、彼とはそれで知り合った。ネット上の出会いはお店探しと似ている。まずは写真を見て、ちょっといいかもとなったらプロフィール欄をチェック――職業、年齢、居住地、趣味、家族構成――それぞれになんかしらの条件があって、選ぶ/選ばれることで関係を築く。なんだかわたしはいつも選ばれるのを待っているみたいだ。仕事でも恋愛でも。

 彼とは「#ゲーム好き」のタグが一致して、好きなゲームやおすすめのアプリについてよく話した。そのうちチャットだけじゃなく通話もするようになり、それがいつしか毎晩になり、実際に何度か会って付き合うことに決めた。決めた? 「受け入れた」の方が正しいような気もする。

 朝起きるとインスタの通知があり、佐々木さんからだった。誰かの投稿のシェアで、送られたリンクから内容を見ることができる。昨日話していたお店がデートにもおすすめの焼肉店として紹介されていた。銀のスプーンに盛られ、てっぺんにちょこっとだけキャビアが乗った桜肉のユッケがとくにおすすめらしい。DMには「これ食べよう」とメッセージが添えてあった。「楽しみです!」とかそんなようなことを返した。

 実際、自分でも意外なほど楽しみだった。仕事中も暇さえあればユッケのことを考えた。キャビアって食べたことないけどおいしいのかなとか、あれって一人スプーン一個ずつなのかなとか。厚切り上塩タンと肉寿司も食べてみたかった。休憩時間には店の食べログを眺め、胃もたれせず最後まで食べられそうな注文順を計画して過ごした。

 マッチングアプリでもこんなに夢中になって写真をスワイプしたことってなかったと思う。突然元彼からの予約が入ってからの一ヶ月弱、毎日が憂鬱で、日ごと息苦しさが募っていた。それがわたしの誕生日を祝うためだと言うのだからなおさら。彼のそういう押し付けがましさが嫌で別れたのに、わたしたちはどこまでも分かり合えない。

 うれしくてZOZOで新しい服を買った。フロント部分がカットアウトされたデザインの黒のトップスと黒のマーメイドスカート、佐々木さんはきっと褒めてくれるはずだ。彼はこういう強い女系のファッションを嫌がったっけ。そんなことはどうでもいい。

「予約って、行く前から楽しいんですね。わたし知らなかったです。いつも予約してもらってるのに」

 夜はわたしからDMを送った。佐々木さんはすぐに返事をくれた。

「そうだよ。楽しみじゃない予約は歯医者だけでいい」

「わたし、日曜は強い女風コーデで行きます。佐々木さんみたいになりたいから」

「強い女風じゃなくて、ぽっぽちゃんは強い女だよ。ファッションって不思議と強さをくれるよね」

 返事を打とうと思ったら「…」の吹き出しが現れたので手を止めた。三つの点は佐々木さんのアイコンの隣でちらちら動き、佐々木さんがリアルタイムで言葉を選ぶ息づかいのようなものが伝わってくる。

 やがて「…」はメッセージに変わり、わたしはちょっと泣いてしまった。そのときようやく「ぽっぽちゃんを予約する」の言葉の意味が分かったような気がした。


 最終の予約は十八時だ。メンズカットだからだいたい四十分、長くても一時間あれば終わる。彼は十分前に来店した。わたしはわざとマニュアルに則り、「お名前いただけますか?」と声をかけた。

「冗談やめてよ」

 苦々しげに笑いながら彼が言った。やめてほしいのはこっちの方だ。仕事終わりに会ったときですら、スーツ姿だったことなんてなかったのに。

 さすがの日曜とあって、この時間でも店内は賑わっている。わたしは奥から二番目のカット台にワゴンを移動し、「こちらにお願いします」と促した。左右には他のお客さんも入るし、もちろんスタッフもいる。たった一時間、それだけ我慢すればいい。スタイリングチェアを鏡に向かい合うよう回転させ、ようやく鏡越しに彼を見た。これが美容師と客の正しい距離だと教えるために。

「今日はどういう感じにしますか?」

「そのちゃんの好みの感じにしてほしい」

「好みですか。うーん、ちょっと難しいな」

「べつに髪型じゃなくてもいいんだよ。外見でも内面でも、もっとこうしてほしいみたいなこと、ない? おれもっとがんばるしさ」

 そういう周りがまったく見えていないところをなんとかしてほしかった。職場まで押しかけて来てしつこくよりを戻そうとするなんてどうかしてる。そういうことをしちゃってる時点で話し合いの余地なんてないことを、お前は本当に分かっていない。

「……はあ。じゃあこういう感じはどうですか? 後ろの刈り上げ部分はこれくらいだと短すぎますか?」スタイルブックのページをめくり、それっぽい写真をいくつか見せた。彼はどうでもよさそうに一通り眺めてから言った。

「そのちゃんはどれが好き? 爽やかな男がタイプ?」

「そうですね、しつこい男よりかは」

 まあ嫌味だ。いつもならこんなことは言わない。でもそのときは言ってしまった。相手が元彼だから? 美容師としては間違った返答だったかもしれない。でも先にわたしの領域を侵してきたのは彼の方だ。こいつは人の職場にプライベートな関係を持ち込んだばかりじゃなく、あまつさえそこにお客様の座布団を敷き、お茶まで出してもらおうとしている。

 いらだちを感じ取ったのか、彼はそこから不機嫌に押し黙ってしまった。元彼としての待遇が期待通りでないと分かればすぐにお客様の立場を主張する。彼がこの店を通してわたしを予約した瞬間から、わたしたちの立場は対等じゃなかった。こうなるなら店を知られないようにもっと気をつければよかった。でも絵鳩美園で検索をかければショップのスタイリストページはすぐに見つかる。インスタのアカウント名をぽっぽにしたところで勘のいい人ならきっと分かる。前の店のお客さんだってそうだ。名前に染みついた失敗はどこまでもついてくる。

 彼はポケットからスマホを取り出し、黙々と触りはじめた。メンズカットのページを開き、襟足や耳周りの長さを確認してみたけど目もくれない。生返事のまま視線は画面に固定され、なにを訊いてもはいとそれでいいよしか言わなくなってしまった。嘘だ、絶対よくない。にわかに手が冷えてくるのが分かる。

 この感じは知っていた。前の店でも同じようなことがあった。いつも指名してくれるよく喋る人で、カット中はいつも上司の愚痴を聞かされていた。それ自体はべつに嫌じゃなかった。ただ、今後ごはん行こうよと誘われて、それをうまくかわせなかったのが悪い。何度か断っているうちにお客さんは不機嫌になり、一度そうなるとダメだった。後日送られてきたレビューには「プロとしての意識が足りない」と書かれていた。夜のお店と勘違いしてんじゃないかと思った。社長は「大人なんだからもう少しうまくやれないと」と言った。うまくってなにを?

 沈黙が気まずかった。物静かなお客さんを相手にしているときのそれとは違う。大丈夫と自分に言い聞かせた。大丈夫、いつも通りやるだけ。

 頭の真後ろに立ち、コームで正中線を引く。同じように耳の後ろから伸ばした線を九十度で交わらせる。下の髪はダッカールで留め、バランスを見る。側頭突起からE.P(イヤーポイント)までのところでセクションを取り、左右の高さを確かめる。大丈夫。落ち着いてる。「ここからバリカン入れますね、いいですか?」……やっぱり無視される。大丈夫……「六ミリで入れますね」……少し浮きやすそうな髪質だ。耳の方までゆっくりとバリカンを滑らせていく。……うまくできた。短い髪がはらはらと落ちる。大丈夫、これでいい……。

「いて!」

 彼が短く声をあげた。

「ご、ごめんなさい」

「…………」

 鏡越しに睨まれ、背中にどっと汗が湧く。どうしよう。ダッカールに髪の毛が挟まっている。取るときに引っかかって抜けたらしい。大したミスじゃないと分かってるのに心臓の鼓動が鳴り止まない。手が震える。ハサミをうまく握れない……。

 そのとき、髪にタオルを巻いた女性がシャンプー台から戻り、隣のスタイリングチェアに腰を下ろした。スタッフが椅子を鏡の方に回転させる間、よく知ったその顔が一瞬だけわたしと向き合い、にこりと笑った。

「あっそうだ聞いてください、ほんと最悪なんですよ。これは美容師の友だちの話なんですけど」女性が言った。「誕生日の営業時間最後に元彼が指名で予約してきたんですって。あり得なくないですか? もうとっくに別れてるのに。それで、終わったらごはん行こうって誘ってきたんですって。それであたし言ったんですよ、そんなの断りなって。でもその子は、お客さんとして来るからにはちゃんと仕事したいんだーって。警察に相談するように言ったんですけどね。だって普通にストーカーじゃないですか。あたしそんなの耐えられないな。見つけたら絶対警察に連絡しちゃう」

 タオルが解かれ、きれいな黒髪が揺れる。インナーには鮮やかな赤。思った通り、すごく似合う。

「店長さんは、もし自分のお店の子がそんなことされてたらどうします?」耳元のドライヤーより大きな声で佐々木さんが言った。

「そうだねー。程度にもよるけど、場合によっては警察に相談するかな。やっぱり守ってあげたいよね。一緒に働く仲間として」ていねいにブローをかけながら店長が言う。その目が鏡の向こうでこっそりとわたしに微笑みかける。

「あたし、このあとその友だちとデートなんで、とびきりおしゃれにしてくださいね」

「もちろん。たくさん楽しんでおいで」


 待ち合わせ場所は近くのコンビニで、軒下の壁に寄りかかってタバコをふかす佐々木さんは遠目に見てもすごくきれいだった。駆け寄ったわたしに気づくと、佐々木さんはスタンド灰皿に吸い差しを押し付け、火を消した。ゆっくり向かえば予約の時間にはちょうどよさそうだ。わたしたちは夜道のはしっこを並んで歩いた。

「今日の服かわいいね」と、佐々木さんはやっぱりわたしの服を褒めてくれた。カットアウトデザインのトップスとマーメイドスカート。「強い女になるためのオールブラックコーデです」と言うと、佐々木さんはちょっと笑った。

「デートですからね〜」わたしは言った。「佐々木さんもインナーカラー似合ってますよ」

「そりゃデートですから〜」佐々木さんはわたしの口調を真似ていた。お互いが真似しあっている。わたしはすっかりうれしくなって、今にも踊り出したい気持ちになった。

「ぽっぽちゃんはいくつになったのかな」

「28歳になりました」

「それはおめでとうございます」

「ありがとうございます。わたし、今すごく楽しいです」

「まだお店ついてもいないのに。パーティーはこれからだよ」

 今日のために食べたいものを調べて、新しい服を買っておしゃれして、いっぱいいっぱい楽しみにして、本当によかったと思った。楽しみじゃない予約は歯医者だけでいい。本当にそうだ。インスタのDMで佐々木さんが言ってくれた言葉を思い出す。――「あたしはいつも、ぽっぽちゃんに強い女にしてもらってるの。ぽっぽちゃんとおしゃべりするのがいつも楽しみなの。お誕生日を一緒に過ごせるなんてすごくうれしい、当日はめいっぱい祝わせてね」。

「ちょうどいい時間についたね。じゃあ行こっか」

 佐々木さんがお店のドアを開いてくれる。黒と赤を基調とした店内は薄暗く、暖色の間接照明が大人っぽい雰囲気を演出している。食べログの店内写真で見た通りだ。ということはスプーンのユッケもきっとある。厚切り上塩タンは最初と最後の二回食べることに決まっている。わたしは想像する。大きすぎる黒のプレートに鮮やかな赤いお肉。佐々木さんの黒髪には赤のインナーカラーがよく似合っている。

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