第22話 悲しみの傘

遠くから救急車のサイレンが鳴り響く。

雨がさらに強くなる。私の体が雨で濡れる。

恐怖と驚愕の喧騒の中、綺麗に聞こえるいくつかの足音。

同時に聞こえる愛した人の私を呼ぶ声。

薄れていく意識の中少しだけ目を開ける。

すると、驚愕で溢れた顔のしょうくんと佐藤さん。そして私の知らない女の人がいた。


私はしょうくんの後ろに見えるような彼。そこに目を向け、

(これで良かったの?)

そう言えたか分からないけど彼、正は頷いたように見えた。

その様子に安堵し彼女は目を閉じ、意識を閉ざした。



『さぁを変えるんだ正徳。正徳達ならそれができる。』



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雫と佐藤との帰り道、雫との楽しい話。佐藤と雫の思わず微笑む会話。

その時だけは世界の時間が短くも長くも感じた。


少し経った時、正が俺に変なことを言う。

『正徳、この世に運命ってものがあると思う?』

どうしたんだ?急に。まぁ・・・無いと思ってるよ。

『どうして?』

だってそんなものおもんないじゃん。運命に人生を決められるって。

『そうかな?運命ってものがなかったらもしかしたら姫乃さんと会えなかったかも知れないよ?』

それは嫌だなぁ・・・なんでこんなことを聞くんだ?

『それはね・・・運命というものがどう思われてるのかを知りたくてね。』

そんなもの知っても意味ないだろ。

『あるよ。だってこの世界には運命っていうものが実現してるからね。』

そんなことわかるのか?

『分かるよ。だって運命が変わる瞬間を見たからね。』

そうなんだ・・・え!?マジで!?


俺が正と話している時雫が言う。

「正徳くんってなんでバイトしてるの?」

俺は正から雫に目を向け、

「もう少しで姫乃さんの誕生日なんだ。」

俺がそう言うと雫が、

「へぇ。それは確かに良いものを買ってあげないとですね。」

雫が少しニヤニヤしながら言う。

「そうだよ?良いもの買ってあげなよぉ〜」

と、佐藤もニヤニヤしながら言ってくる。


そんな話をしているとポツリと雨が降ってきた。

「うお?雨だ。雨宿りしよう。」

俺は慌てて近くの店の屋根に入った。

「天気予報では雨は降らない予報だったはずなのですが・・・」

そう雫は言う。


雨宿りをしていると正が話しかけてきた。

『正徳。運命が変わるよ。』

え?運命が変わる?

『そうだ。それも正徳を不幸にする運命がね。』

それって・・・姫乃さん・・・?

『どうかね・・・まぁもう少しで分かるよ。』

おい!教えてくれよ!!未然に防がないと!!

『ごめん。それは出来ない。』

なんで!!

『運命は今は変わらないからだ。』

じゃあどうすれば!!

『大丈夫。救急車は呼んでおいたから。』


遠くから悲鳴が聞こえる。

俺たちは悲鳴が聞こえた方向を見る。

すると、一人の女性にナイフを持った男が襲いかかっているところだった。

俺たちは慌てて駆け出す。


やばい!!追いつけない!!


その女性にナイフが振られる。女性は恐怖で目を閉じる。

だがその女性にナイフが刺さることはなかった。

女性がそっと目を開ける。そこには、

腹を刺された姫乃がいた。


「姫乃さん!!!」


俺は顔を絶望で染める。

佐藤はあまりの光景に驚愕する。

雫は何が何だかわからず混乱する。


姫乃は雨で濡れたコンクリートの地面に倒れる。

救急車のサイレンの音が近くなる。

雨は姫乃の体を冷たくする。

正徳は姫乃に駆け寄って姫乃さんと叫び続ける。


ふと近くを見ると通り魔は周りの人が抑えていた。

近くの人は正徳に助けられなかったことを謝っている。

本当は助けるつもりなんてない薄っぺらい謝罪に正徳は目を黒くする。

そして正徳が言う。


「なんだよ。あんまりじゃねぇか・・・」

正徳は涙を流しながらそう言った。

目が黒く染まる。正徳は正を呼ぶ。


おい。正。

『なんだい。正徳。』

これがお前のやりたかったことか?

『そうだね・・・これは必要なことだから』

そのためなら姫乃さんを傷つけて良いってのか?

『姫乃さんはやってくれるって言ってくれたよ。』

それがお前の言う運命を変えたってやつかよ。

『そうだよ。これは正徳や雫、そして姫乃さんのためだからね。』

ふざけるんじゃねぇよ。

『そう・・・だね。』

姫乃さんを傷つけやがって・・・

『・・・』

もういいよ・・・俺はお前を許さないから。

『それで良い。それが普通の選択だ。』

お前は俺にどうさせたいんだ・・・

『言っただろう?運命は今は変わらないと。』

つまり?

『正徳達が変えるしかないよ。運命をね。』

出来っこないよ。そんなもの。

『姫乃さんは出来た。条件が揃っているからだ。』

条件・・・?

『それは言えないね。でも正徳達なら出来るって信じてるよ。』

お前の言ってることが分からないよ。

『分からなくて良いさ。』

なんだよそれ。意味がわかんないよ。


姫乃さんと雫で幸せになれた筈だったのに・・・

正のせいでその幸せは・・・

ふざけるんじゃねぇよ・・・ふざけるんじゃねぇ!!!

なんで俺と姫乃さん、それに雫の幸せを奪われなきゃいけないんだよ!!




『そりゃもう無理だって思ってたら無理だろうさ・・・』


姫乃と正徳達は救急車で病院まで運ばれた。

姫乃は笑っているように見えた。

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どうも!みなさん!!マヨきゅうりでございます!!


今回はまさかの姫乃さんが刺されてしまいました!!

この後の正徳はどうなるのでしょうか・・・!

の覚醒にご期待ください!!

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