第15話 糸がつながる

冷たい風が八甲田山の頂を吹き抜ける中、水松つぼみは連続する遺体発見事件の背後に潜む真実を解明するべく、さらなる手がかりを求めていた。今回の事件は以前のものと異なり、複数の遺体が一度に発見されるという、より大胆で計画的な犯行だった。


捜査本部では、つぼみとその父、水松康夫本部長を含むチームが、遺体の身元特定作業に奔走していた。DNA鑑定と過去の行方不明者リストを照合することで、一つの遺体が数ヶ月前に失踪した地元のジャーナリストであることが判明した。このジャーナリストは、八甲田山周辺で不正な土地取引を追及する記事を書いていた人物で、その調査が理由で何者かに命を狙われた可能性が浮上した。


この発見により、事件の背後には単なる殺意以上のものがあることが確実となり、政治的な動機や金銭的な利害が絡んでいることが濃厚になった。つぼみは、このジャーナリストが取材していた内容を詳しく調べるため、彼のオフィスと自宅を訪れた。そこで彼女は、未公開の取材ノートとデジタルデータを発見し、これが事件解明の重要な手がかりとなった。


ノートの中には、ある企業と地元政治家との癒着を示唆する証拠が記されていた。また、その企業が八甲田山の自然保護区内で非合法な建設を進めていたこと、そしてそのために環境保護団体や地元住民との間で多くの対立が生じていたことが明らかになった。


つぼみはこれらの情報をもとに、事件の背後に隠された広範な陰謀を解明するため、更に捜査を進めた。彼女は、ジャーナリストが最後に取材していた地点を訪れ、そこで遺体が発見された現場との間にある接点を探った。地元の目撃者からの証言と現場で見つかった物的証拠から、犯行に使われた車両が特定され、それがある政治家の関連企業に登録されていることが判明した。


この重大な発見により、つぼみと捜査チームは事件の解決に大きく近づいた。彼女は、この一連の事件がただの連続殺人ではなく、深い闇に包まれた八甲田山を巡る闘争の一部であることを確信し、真実を明らかにするための決意を新たにした。次のステップとして、彼女は政治家とその企業への直接的な接触を計画し、真実を世に問う準備を始めた。

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