鳴瀬寛一への返信

🍻


 前略


 角田頼子の代理人 与村貴代です。

 鳴瀬 寛一様、この度は女性関係のトラブルでの怪我による入院とのこと、風の便りで聞きました。相変わらずお元気そうで何よりです。


 さて、あなたは離婚の際、元・妻である角田頼子本人とその家族、職場への一切の接触を禁じられています。

 もうお忘れですか? 共同口座の預金や金品の窃盗、複数人との不倫、無断での借金等をおおやけにしない代わりに、「金輪際近づかない・連絡は弁護士を通す」と取り決めた筈です。

 また、「取り決めを破った際には違反金10万円を支払うこと」というのは、「弁護士を通さなければ10万円払わなくてよい」という意味でも、「10万円払えば会える」という意味でもありません。それは当時も説明しましたね。思い出しましたか?


 この度の接触について、特別に今回だけは不問にします。

 これは頼子の優しさでも、現在入院中であるあなたへの配慮でもありません。

 頼子本人が『あなたと関わりたくない』と言っているからです。


 ただし、今後このようなことがあった場合には、弁護士を通して即座に相応の措置を取り、違反金の取り立て役を差し向けます。

 離婚時の取り決めや誓約書の存在は忘れても、取り立て屋の存在は憶えておいででしょう。

 使い込みと窃盗の賠償金を工面するのにお世話になった『株式会社 デビル&エンジェル商事』の関川さん、まだ現役でご活躍されているそうですよ。

 当時、「笑顔でも目が笑ってない、あれは2、3人ヤってる」等、だいぶ怯えていらっしゃいましたね。


 最後に、これは角田頼子の代理人としてではなく、彼女の実姉として書いておきます。

 まず、あなたの手紙には語句の誤用や非常識な言い回しが多過ぎます。大人として恥ずかしくない文章の書き方を心がけた方がよろしいでしょう。

 また、頼子への呼びかけが「子猫ちゃん」「honey」なのに対し、ご自身のことは「王子様」なのは、あまりにも図々しくはありませんか。「永遠にキミだけの王子様、より」という言い回しも不自然。噴飯物です。

 それから、一度や二度ならともかく、語尾をいちいちカタカナにするのは気持ち悪いです。如何なる意図があろうとも、ひたすら気持ち悪いです。ご自身の年齢と向き合ってみてはいかがでしょう。気持ち悪い。

 では、お怪我の方、せいぜいお大事に。


P.S.

 リンゴの旬は秋冬だ、バーカ。



 草々


  令和6年5月*日  代理人 与村貴代


 鳴瀬寛一 様


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