宮尾 仁安への返信
拝復
こちらは新緑を楽しむ季節となり、過ごしやすくなってきました。
異世界の方はいかがでしょうか。手紙をいただいた時には大層驚きましたが、宮尾くんの新生活が充実していると知り、胸を撫で下ろしております。
さて、ご懸念の件ですが、既に『失踪』扱いにて退職の手続きが完了し、業務の方も引き継ぎを終え恙無く回っておりますので、ご心配の無きよう願います。
また、君が身を挺して助けた仔猫は、当該事故のトラック運転手経由で警察に保護されたのちに私が個人的に譲り受け、大事に育てております。名前はタマと付けました。当初は弱々しく震えるばかりで声も出せない有様でしたが、今は名前の通り丸々と元気に育ち、やんちゃな姿に癒される日々です。
艶やかな黒い毛並みと葡萄色の瞳を持つ彼女と出会わせてくれた君には、大変感謝しております。
私からの着信が君の携帯電話に残っているということでしたので、一応タマの写真を送っておきました。彼女の愛らしい姿が、そちらの世界でも見られると良いのですが。
ところで、猫の代わりに君と共に異世界へ飛ばされたという『
彼女の双子の娘さんからの伝言を添付します。もし離れているのなら、彼女を探し出して必ず伝えてください。何卒、よろしくお願い致します。
慣れない新天地での生活、また魔王討伐などには困難もあるかと存じます。しかしながら、十日連続の深夜勤務をこなした君なら、全て乗り越えられると信じております。
末筆になりますが、宮尾くんの幸せな異世界生活をお祈り申し上げます。
敬具
令和5年4月*日 青木一男 ・ 🐾(←タマの手形です)
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お母さん、元気ですか。月子と星子です。
こうして返信できたことからわかると思いますが、私たちは無事に白野のおじさんと会えました。最初はもちろんびっくりしたけど、お母さんが内緒で遺してくれていた宝物の場所を言い当てたし、お母さんの子供の頃の写真や思い出話も持っていたので、今では信頼して身を寄せています。顔もお母さんとちょっと似てるしね。
お母さんから受け継いだこの
お母さんが私たちの前から居なくなってしまったのは、とても悲しい。でも、異世界で元気に生きているのだと思えば、私たちも嬉しいです。どんな冒険をするのかを考えるとワクワクしてくるので、前ほどは悲しくなくなりました。
だから、私たちのことは心配しないで。月子と星子、それとおじさん。3人で仲良くやっていきます。
いつまでも元気でいてね。出来たらでいいので、またお手紙ください。
月子☽ & 星子☆ より。
【代筆屋
黒瓜 珠子 様
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