猫ノ物語
私は猫である。
路地裏でひっそりと暮らす孤独な猫。
自分の為だけに餌を捕り、餌を奪おうとしてくるやつらから守って一人で彼らと戦っていた。
仲間などいない 私はどこまでいっても一匹の猫であった。
私の寝る住まいは冷たく厳しい風に晒されていた。それに比べ他の猫達はなんとぬくぬくとした住まいだろうか。
私は彼らを羨んだがそんな事をしてもソレは自分には得難きモノであった。
私は今日も一人寂しく冷たい床で眠った。誰も私などという存在は見てくれず、また助けてくれもしなかった
私に親はいたが彼らは私に何も与えはしなかった。私一人を残して彼らはどっかへ行ってしまった。私は幼き頃からたった一人で生きるしかなかった。
小さくも弱い存在、精一杯強がって生きるしかなかった。私にはなにもない。私にあるのは自らの温もりだけだった。
私は一匹の猫だった
他の者達は群れて生活していた。そのゆるい生活と仲間と一緒にいるのが羨ましかった。だが私は彼らと違う生き物だった。同じ場所を借りて仲間に入ろうとしたが、彼らは違うモノである私を受け入れなかった。私は虐げられた。違うというだけで…
今日もまた地面の砂を舐めた。私は自らの傷を自分で舐めて癒やした。冷たい床が体に堪える。冷たくて寒くて痛い。でもこんなことでへこたれていてはいけない。こんなところで負けてはいけない
私には入って欲しくないテリトリーがあった。そこだけは誰にも侵されたくなかった。
けれど入って欲しくないその場所をやつらが無遠慮に荒らしていく。私の心は荒れ果てた。守ろうとも侵され、私は傷つき悔しさに涙を飲んだ。私がなにをしたというのだ絶対に許さない。彼らがしたことを私は忘れない。
私は彼らには何もしなかった。ただ仲間にして欲しかった。だけど彼らは私がそこにいるというだけで邪魔そうにして追い払おうとしたり痛い事をしてきた。
違うからいけないのだろうか。私はできるだけ彼らに寄り添おうとしたのに。私は彼らと同じようには生きられなかった
私は一匹の猫である
居場所を探して、安息の寝床を探す。私にあるのはただここではないどこかへの望み。それはいつしか夢となった。夢を見つける為に私は探す。
混沌とした海を抱えて生きる私
私の魂はこの海の中を漂う
形なきこの彷徨える魂をクラゲのようだと思った
クラゲの姿は本当にいろんなかたちがあるから
潮の流れに流されてしまうくらい弱いから。私は魚たちみたいに群れでは暮らせないから。貝のように固く閉ざして己を守れなかったから。遊々と泳ぐ大きな魚やイルカ等にはまだ成れないから。
それでもこの広い海を探し流離う
私は私である どこまでいっても私なのだ。
だからここに縛られず自由に歩もう。
ここではない何処かへ 目的は曖昧でも
どこにゆくでもなく ただ遠くの何処かへ。
素晴らしい世界がそこにあるだろう
美しい景色があるだろう
素敵な出会いがあるだろう
尊きものたちが何処かにあるだろう
そうして私は旅をする
今もなお彷徨い歩いているその途中
私は物語を紡ぐものである。
”私は私を物語達に注ぎ、私をその中で生かせる。私は私を物語に捧げ、その生き様を描く。
私の描いた物語、そこに私は残る。たとえ独りぼっちの猫でも誰かはその物語を覚えていてくれるだろう…。
そうして物語を夢に抱いて私は眠る”
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